参考動画:ヒツジのサム - ウールは燃える? - YouTube より

 

こんにちは、やえやまとーるです!

 

いきなり衝撃的な動画を紹介させていただきましたが。今日は焚火に最適な衣服についてのお話です。

 

もう最初の動画で結論が出てしまっている感がありますが….いちおう少し掘り下げてみたいと思います。

 

焚火の衣服と言うと「コットン」が最適で「化繊」は絶対ダメ!という情報がネットには数多く出回っています。


果たしてそうなのでしょうか。


実は意外な事に「素材の種類」だけで衣服を選ぶならば、コットンだろうが化繊だろうが安全性は誤差程度の違いしか生じないのです。


ただし、くれぐれも誤解のなきようキャンパーの皆様はぜひ最後まで読んでみて下さい。

 

まずコットンが化繊に比べて「難燃素材」であるという情報を何度か見たことがあります。


これはとんでもない誤解でありデマです。

 

コットンが難燃素材であるというのはとんでもない勘違いで、冷静に考えたらそんなはずが無い事は経験上誰だって知っている事です。


そもそもコットンの事を日本語では「綿(めん)」と言います。その原料は「綿(わた)」です。あのフワフワしたやつです。燃えないわけがありませんよね。


コットンは火打石のお供であるチャークロスやランタンの芯などに使われる「非常に燃焼しやすく消火しにくい」素材です。


確かに空気中の水分や肌の水分を吸収しやすいためある程度の火に耐える特徴も持ち合わせていますが、高火力の焚火に長時間あたる場合は乾燥してしまうため、とても安心できる難燃素材などでは全くありません。

 

しかしながら、事実としてコットンは料理人の前掛けや帽子、溶接工の作業着など、火を扱う職業で多用されています。 そのためいかにも火に強そうな「イメージ」を持った素材と言えるでしょう...

次に、「化繊」について考えてみましょう。


コットンを難燃素材だと言っているアウトドア記事ではたいてい、化繊について「火の粉などの熱で溶けて穴が開く」「とけた熱い化繊が肌に付着して固まるため重度の火傷の原因になる」という欠点を紹介しています。性質としては正しいのですが、これも誤解を与えやすい表現です。


以下の資料をご紹介します。


参考資料:

着衣の燃焼性に関する研究 (平成13年-第38号) (tokyo.lg.jp)

 着衣の燃焼性に関する研究(第二報) (平成14年-第39号) (tokyo.lg.jp)

 

 

「素材」に注目した場合本当の意味で焚火に強い素材は「ウール」であり、コットンも化繊もそこまで大きな差はありません。


「コットン」は燃えた時に火のまわりがはやく鎮火しにくく、「化繊」はとけて重度の火傷を引き起こす。どちらも性質は異なりますがはっきり言って危険度としてはどんぐりの背比べみたいな物です。


それどころか、場合によってはコットンの方が危険な場合もあるでしょう。


というのも、コットンが植物由来の素材である反面、化繊はポリエステルなどプラスチック素材でできています。なのでコットンは燃焼した際に焚火の煙と似たような匂いを発するため気づいた時には既に遅く炎が大きくなっているかもしれませんが、化繊が燃焼した場合は明らかに体に悪い臭いを発するので、すぐに異変に気が付きやすい特徴があるからです。


※絶対的にコットンが危険で化繊が安全であると言う意図の解説ではありません。



焚火の衣服を選ぶ際、いったい何が重要な要素になるのか。

 


それは、素材の性質ではなく「形状」です。

 


コットンの衣服が焚火の衣服に向いているのではなく、焚火専用の衣服が焚火に適した形状に加工されているから向いているという事であり、


「けば立ちが無くしっかり密になった厚いコットン」でできているからこそ、焚火に強い衣服であるという事を、知っておかなくてはなりません。

 

くどいようですが、燃えにくい「物理的な形状」に加工しているから安全なのであって、コットン自体がそのような「化学的性質」を持つわけでは無い事に注意が必要なわけです。

 

薄い、けば立っている、袖がゆったりしている。そんな形状をしたコットン(当然ながら化繊の場合も同様)の衣服で焚火をしたら、薪をくべる時など一瞬のミスで簡単に燃え移って大事故になる危険性があります。

 

逆に、袖がしっかり絞られており厚みがあって表面がツルツルした衣服ならば、化繊やコットン問わず炎が燃え移る心配は減り、火の粉がついても「化繊」ならば良く見ないとわからないスポット状の光沢、「コットン」ならば僅かな焦げ跡で済みます。


穴が開くのはそもそも薄い衣服です。それは化繊だろうとコットンだろうと同じです。



 

【形状について重要な条件のまとめ】

 

・厚み(コットンなら酸素を遮断し燃焼を防ぐ・化繊なら火の粉でとけた生地が肌に到達するのを防ぐ)

・密度(厚みがあってもスカスカで空気が多いと燃えやすい)

・表面(けば立ちがあると火がつきやすい)

・見た目(袖がゆったりしていたり、紐がぶら下がっていると燃え移る危険性あり)

・着こなし(シャツなどしっかりズボンに入れないと燃え移る危険性あり)

 

 

ということで「コットンだから危険」「化繊だから危険」は必ずしも正しいわけではないという事がおわかりいただけたかと思います。


 

最初の動画にある通り、素材として焚火に向いているのは「ウール」など本当の意味での難燃素材です。


それ以外は「形状」が重要です。

 

焚火専用に販売されている衣服ならば形状は確実に問題ありませんので素材で選べば良いですが、それ以外の物から選ぶ際は、まず最初に「形状」を参考にしてみて下さい。

 

ただし、くれぐれも「コットンなんて危険、化繊は安全」などの曲解はしないでいただきたいと思います。どちらも扱い方、選び方を間違えると同じくらい危険だと言うことです。

 


焚火はそれ自体が危険な行為です。食事がひと段落してボーっと焚火を眺めている間に衣服が燃えたり、眠気に勝てずうっかり、なんて事が無いよう「火の近くで油断しない事」が安全のために何より重要です。


難燃素材の服を着ていても心掛けるべき基本です。自分の命は自分で守るのが基本です。ウールを着ているから安全だと考えるのは間違いだということです。


難燃性のあるウールが焚き火をしているのではなく、焚き火をしているのは火に弱い人間だからです。

 

 

【最後に】

形状に由来する性質と、材料の性質の違いについては、クッカーにも似たような事があります。


一般的にチタンクッカーは軽く、アルミクッカー並みかそれ以上に軽い事で有名です。


しかし、実はチタンという金属そのものは重たい物質で、アルミより約2倍も重たい金属です。

 

ではなぜチタンクッカーがアルミクッカーのような軽さを実現しているのか。それは、チタンは強度が高く熱に強い性質を持つため、薄く作ってもクッカーとしての用途をまっとうする事ができるからです。

 

チタンがアルミより軽いのではなく、チタンクッカーがアルミクッカーより軽いという正しい認識が必要です。


※鉄や銅に比べると密度は半分程度なので、チタンそのものが軽いと言っても明確に間違いというわけでは無いです。



化繊とコットンどちらが焚火に向いているか一概には言えないように「加工の状態によって道具の性質は著しく変わる」という認識の重要性をお伝えいたしました。


 

ちなみに私は冬キャンプの焚火では、防寒性能と耐水性を重視してポリエステルの登山用ウェアを愛用しています。


生地は適度に厚く、表面はツルツルしていて、袖は絞られているので焚火での使用に耐えられるため非常に優秀です。

近くでよく見ると火の粉でできた細かい光沢が多少見られますが、別にほとんど目立たないので全く気にしていません。

 


ということで今回はこれでさようなら。