この「しりとり物語16」というテーマのBlogでは、2018年10月からスタートしたFMおたる「木曜Cheers!」内のコーナー、「しりとり物語~ひとかけの未来」のストーリーをご紹介して参ります。
 
リスナーの皆様には、「しりとり」の次の言葉を考えてお送り頂き、どなたの言葉を採用するかは、抽選で決定致します。一方、私は「必ず、その選ばれた言葉が入る」という条件を満たしながら、13話完結の物語を執筆し、コーナー内でご披露する、という「参加型連載ラジオドラマ」が、この「しりとり物語」の仕組みです。
 
それでは、第16シリーズの第1話に参りましょう。

 

 

ひとかけの未来~第1話「未来予想図(みらいよそうず)」

バーのカウンターに外れ馬券が並んでいる。もはや価値を持たない紙切れを、1レースから順に並べる心境とはいかようなものか。

「惜しいなぁ…これなんて、4着の馬が3着になっていれば、なかなかの中穴だったんだけどなぁ…はぁ~…未来が見えたらなぁ…。」
「木村君よ。未来ってのは見えないから良いんだって。」
「そうか?じゃあ、里中は未来が分かっても、知る気はないと?」
「う~ん…まあ、ちょっとくらいなら。」
「何だよ。都合が良いな。」
「いや、分からないから良いって気持ちは変わらないよ。ただ、未来予想図みたいなものじゃなくってさ…そうだな、ヒントみたいなものなら、多少興味はあるよ。」

俺は里中みつる。隣の席で熱心に馬券を並べる木村圭吾は、大学時代からの友人だ。1枚1枚の感覚を整えながら、木村が言葉を続ける。

「アプリ、ねぇかなぁ。」
「アプリ?競馬のアプリなら使ってるんじゃねーの?」
「そっちじゃねぇよ。未来が分かるアプリ。」
「あるかよ、そんなもの…。」
「いや、分かんねーよ?時々見るじゃん、未来人からのメッセージとか。未来ってことは、今より文明が進化しているわけだ。なら、そういうアプリを作って、タイムマシーンでこの時代に来てさ、アプリを流通させられるだろ?しかも、タイムマシーンで未来に行けば、データのアップデートも出来るし。ちょっと探してみるか?」

マスターと目が合った。話を遮らないように、身振りで飲み物のおかわりが要るかどうか訊いている。俺は、ちらっと木村を見ると、首をかしげながら指でバツ印を送った。

この「他愛もない酔っ払いの会話」に続く未来があるとは、当然、誰一人想像していなかった。

(次週に続く…)

 

この週の採用ワード

ZOO(ずう)※次週は「う」で始まる言葉募集です。