「暮らしやすさ」の都市戦略とは〜ポートランドと世田谷区のまちづくりから学べること | いろいろが、彩るまち。小金井市長 白井亨(元小金井市議会議員)blog    <※2022年11月2日までは市議会議員としての記事です>

いろいろが、彩るまち。小金井市長 白井亨(元小金井市議会議員)blog    <※2022年11月2日までは市議会議員としての記事です>

第一子誕生をキッカケに地域に目を向け色んな「縁」のおかげで地域に生きる“日常の豊かさ”を実感。2013年市議会議員初当選。2017年市議選でトップ当選、再び市政の最前線へ。2022年11月27日市長選挙75%の得票、当選!市長となる。

木曜日は仕事帰りに下北沢へ立ち寄りました。



ホント久し振りだなぁ。大阪時代からの友人と飲みにいって喧嘩別れして以来だと思います(別に付き合ってたわけじゃありませんよ、友人です)。

北沢タウンホールで開催されていた「暮らしやすさ」の都市戦略~ポートランドに学ぶまちづくり、というイベントに参加してきました。



小金井市では2本の都市計画道路が東京都から「今後おおむね10年間で優先して整備する路線」に選定され、3月末にもその方針が確定されようとしています。
この件に関しては、以下のblogをご覧ください(超長文注意)。
小金井市を良くも悪くも変えるこの2本の都市計画道路について、話をしよう(「こがおも」の考え方)。


この課題について、悶々としていたところに、世田谷区の保坂区長がカナダの姉妹都市(友好都市?)へ表敬訪問したついでにかねてから気になっていたオレゴン州ポートランドに立ち寄ったことを踏まえて、まちづくりを考えようというイベントが開催されると聴いて、参加することにしたのです。仕事の都合上少し遅れて行ったのですが、会場は満員で熱気に包まれた感じがしました。



ポートランドは約50年前(1969年)に市民運動としての高速道路反対運動から始まり、結局、高速道路を排除したまちづくりへ転換したことが今に繋がっているということでした。新しいネットワークづくりの一環の高速道路新設の話のみならず、元々あった高速道路を排除するという事例は凄いなと思います。当時、まちの中心街であるダウンタウンは車中心の街で、至る所に広々とした自動車駐車場があり、街の中心地は人は歩いていないし憩いの場もないし暗いし活気もないし「とても夜歩けるところではない」という状態だったそうです。

高速道路撤去を経てまちづくりの方向性を大きく転換し、1992年には50年後のまちのビジョンを描いた地域計画を策定し、中心部は公共交通のみにすることが示されたとのことです。街のエリアえ開発の境界線を引き(都市成長境界線というらしい)、「ドーナツ化の逆をいこうぜ」というスローガンが紹介されてました。

エッジが効いてますね。

車社会から空間を大切にして憩いの場(パーク)を街の至る所に開設し、民間と協働して街の再生を図っていったことが説明されていました。特に、これは欧米の価値観と地域事情があるかもですが、既存のものを最大限活かしていく(=リノベーション)の事例が多く紹介されており、保坂区長もまちあるきをする中で紹介された物件・施設は軒並みリノベーションによりその時代にあった新しい価値を生み再生されたものばかりだったとか。工場をリノベした若者の起業拠点「ファブラボ」とか、学校跡地をホテルにするとか、やるなら徹底的という点がいいですよね。

「暮らしやすさ」を実現できているポートランドは、今どんどん人が集まってきているようです。

ではなぜ、ポートランドは変わることができたのか?

それは、幾つか要因分析をされていました。挙げられていたのは以下の4点だということです。

①高速道路廃止の運動も踏まえ、市民を含めてまちづくりの気運が醸成されたこと
②アドボカシーNPOの増加により、意識の高い人たちの移住がはじまったこと
③近隣組織(自治組織。こちらでいう町会みたいなものかな)のネットワークが活きていること
④意見を柔軟に取り入れる市のガバナンスがあった(なされた)こと


※適切にメモが取れてないかもですが、大体こういうことをおっしゃってました。

私たちが学ぶことは?(スライドより)

「代議制民主主義」(議会、その構成員である議員)に対して、「発言力のある自治組織」と自発的市民活動(NPO)の併存による、自治によるまちづくりのバランスが取れたことである、と報告されていました。要するに、お任せではなく、自らまちを暮らしやすくしていこうという気概と意欲のある人たちの移住がポイントである、ということでした。結局は「人」なんですね。でも、そういう意欲を柔軟に取り入れる受け皿としての行政側の度量があり、「対話」の中でしっかりガバナンスが機能していたということの裏返しなのだと思います。

ここで、少し日本の市民運動を引き合いに出されていたような気もしますが、市民運動のポイントとしては、「反対に終始するのではなく、新しいビジョンを提案していった」ということが成功の鍵だったのではないか、という考察です。住民が都市計画に参画し、みんなで決めていくという仕組みがあってこそ成り立つ訳ですが・・・(ここは日本と事情が少し異なる点はあるのかと。お上が決めて、お任せというのが日本のスキーム。都市計画だってそこに住む住民が膝を付き合わせて対話を通じてつくっていく場や機会が充分用意はされていない)。しかし、ここから学べることはあると思っています。

専門家の報告と保坂区長の基調講演のあと、宮台真司さんなども交えてのパネルディスカッションがありましたが、その中で特に紹介したい言葉があります。

任せてブーたれるのではなく、引き受けて考える

(私は引き受けたかったのですが、それをさせてもらえなかった訳ですが・・・まぁ、それは置いておいて)よく耳にすることといえば、考えて提案しても全く聴いてくれなかったり、聴くのは聴くけどメモだけ熱心に取るだけで実質はスルー、というようなことが行政側のスタンスとして多いのではないかと感じています(誰とは言いません)。だからこそ、政策形成過程から当たり前のように市民意見を聴いて政策決定していくということや、若者も含め常に誰でも市政に関して意見を言い、場合によっては意見の違う人も一堂に会して意見を交わし合う「みんなでつくる小金井」を体現したかったのですが・・・(これ思い出すとまた悔しくなるのでやめておきます)。

あと、今回初めて知ったのですが、建築家で東洋大学教授をしておられる藤村龍至さんのワークショップの話が面白かったです。岡崎市や鶴ヶ島市での事例、そして世田谷区では新庁舎の建設計画プランを学生たちが考え、しっかり設計されたプロセスのもとで住民意見をどう反映させ設計の方向性を決めていくか、という試みを紹介されていました。ここで考えさせられたのは、行政が動く前に先取りして住民の意見を聴きプランを作っちゃう、というところです。確かに、行政が動き出すともう後追いで計画を変えることの難しさは十二分に感じているところです。いかに先取りして、住民参画を既成事実化してしまうか、という発想がとてもおもしろいなぁと思いますし、今後の活動の参考にしたいと思っています。


※藤村先生が教える学生たちの取り組み紹介ブースでは、世田谷区の庁舎建設の4つのプラン(案)が展示されており、休憩時に参加者が投票する仕掛けも。

また、宮台真司さんの「安全・安心・便利・快適」に対する問題提起もよかった。

これらは「人の尊厳を奪う」と。また、「人間の尊厳を保つ場所」とは、「生きものとしての場の全体性を感じられるかどうか」にかかっている、というような話もありました。日本は地方も含めて「便利」になりました。それは疑いない事実です。しかし、ある調査でわかったことは、「これまでの人生で何が最高に幸せだったか」と聴くと、そのほとんどは「人間関係に起因すること」を回答するようです(自分自身思い返してもそうかも知れません。皆さんはどうですか?)。すなわち、究極的には物質は人を幸せにしない、ということです。経済成長そのものを否定するのではなく(宮台さんは否定しているかも知れませんが)、この「安全・安心・便利・快適」は文明発達の成果として生活水準が進歩していくのはいいことだし、それで課題解決もなされ、生まれる新しい価値や時間もあります。また、その余裕があることは先人を含めた日本人の努力の賜物であると認識しています。ただ、「どこまでそれを優先して追い求めるの?」ということを今こそ問い直さないと、人としての豊かさがより貧困になってしまうのではないかと感じています。特に日本という国は各種調査でも物質的な豊かさとは裏腹に、幸福度が低いという結果が出ています。


成長モデルは終わりました。それは、日本が人口オーナス期を迎える際には良かったしそういうものだったと思いますが、これからは人口減少が避けられない時代に既に突入している訳です。経済成長をこれまでと違うモデルで実現できるように、あらゆるものを犠牲にした仕事中心の生き方を少しずつ見なおしていかねばならない。それは、まちづくりにも言えることなのではないでしょうか。

経済成長や、安全・安心・便利・快適を追い求め続けることは必要なこととしてもほどほどに、それに加え「人生としての豊かさ」を追求することのほうを少し優先して取り組みはじめてはいかがでしょうか。それは、個々人もそうですが、まちづくりの視点も、そのようにあってほしい。いや、そうなるように、そういう議論を市民同士でできる場や機会をつくりたいですね。

余談ですが、欧米でいう「street」とは、単に道路を表すのではなく、景観やどういうお店があるかということや、そのお店のファサードを含めた”街並み”のことをいうそうです。確かに指摘にあったように、日本では単に「道路」を表すということは、発想の貧困さを通り越して「日本の(まちづくりの)劣化」であると述べられていたことが印象的でした。

(取り留めのない報告で失礼いたしました)

なお、この続編が3月18日(金)に開催される見込みです。是非、ご興味ある方は参加してみてください。




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