夏が終わってしまう前に、夏の思い出話をひとつでも多く書いていきたいと思います!
今回は、以前挙げたタイトルの中から、この話。
これまでに書いた思い出話はこちら。
「音楽堂の夏合宿一日目」
「血まみれのマラソンランナー」
今回のお話は、岩崎が中学生の頃までさかのぼります。
候補に挙げた4タイトルの中で、最も古いお話なんです。
岩崎の記憶も薄れてきてはいますが、最も大事なトコロは強いインパクトのため、しっかりと覚えています。
忘れてしまう前に、ここに書き残したいと思います。
岩崎、中学二年生。
ギターとゲームと福山雅治が大好きな、平均身長よりだいぶ背が低い、ぼんやりとした中学生でした。
間もなく夏休みといった時期。
いくら部活動が好きとはいえ、義務化している放課後練習から解放されるのは、待ち遠しいことです。
この頃の岩崎は、ちょっと浮かれた、軽い気持ちで日々を過ごしていました。
当時、同世代の間で流行っていたのは、深夜ラジオでした。
オールナイトニッポン。
岩崎も例に漏れず、その番組が本当に大好きでした。
毎晩のように、体力の限り夜更かしをして耳を傾けていたものです。
ラジオをオフタイマーにして、布団の中で眠りに落ちるまで聴く……なんていうこともよくやっていました。
その晩、パーソナリティは女性歌手の方。
いつものように自室でラジオをつけて机に向かい、宿題をするフリをしながら聴いていました。
その日の宿題は白文帳(以前、テレビ番組「秘密のケンミンSHOW」で紹介されたことがある、長野県のみでしか使われていない漢字書き取りノート)に、ひたすら漢字を書くという単純作業。
やっぱりというかなんというか、じきに飽きてしまいました。
「あとは明日の朝やろう」という、自分でもまったく信じていないことを自分に言い聞かせ、書き取りを終わりにしました。
電気を消し、布団に入って、眠るまでラジオの続きを楽しむことにします。
番組は中盤、毎週必ずやっている定番のコーナーが始まりました。
岩崎はこのコーナーが大好きで、毎回しっかりと内容を覚えては、翌日同じ番組を聴いていたであろうクラスメイトと、この話題で盛り上がることが常でした。
「今週の投稿は切り口が違うなぁ」なんて小生意気なことを思いながら、暗い部屋で、天井を見上げて、耳を傾けていました。
――くる。
不思議なもので、「それ」が起こる直前って、何故か本能で予兆を感じるのですよね。
直後、岩崎は金縛りにあってしまいました。
「金縛りは夢だ」とか「身体が疲れていて動かない」とか、原因は諸説ありますが、この時ばかりは少なくとも夢でなかったという自信があります。
なぜなら、ラジオはしっかりと聞こえ続けていたから。
金縛りが初めてではなかった岩崎は、とっとと動けるようになりたいと思い、身体を動かす努力をします。
でもこの日はしぶとく、なかなか動くようになりません。
番組は楽しげに進行しているというのに……。
そして、いつもの金縛りとは違った現象が起こり始めました。
遠くのほうから、ラジオの音声とは違った「何か」が聞こえてきたのです。
だんだん、だんだんそれは近くなっていきます。
音楽のフェードインのように、少しずつ大きくなってくるそれは……人の笑い声でした。
ヒヒヒ……ヒヒヒヒ……
男性の声か、女性の声か、わからないほど甲高い声で、心底楽しそうに高笑いしています。
声は、だんだん耳の側に寄ってきたのです。
やがてラジオの音声をかき消すほど、大きくなりました。
耳元で何かが笑い続けています。
とんでもなく愉快なものを見たような風に、途切れることなくいつまでも。
ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ
これはまずいやつだ。
そう思った岩崎は、なんとかこの金縛りをふりほどこうと、身体を動かそうと必死に力を入れ、目を開きました。
そして、見てしまいました。
岩崎の足元のほうから伸びてくる、青白い手。
閉じていた目を急にかっと開いたから、視界がぼやけたのかもしれない。
今では岩崎は、なるべくそう思うようにしているんです。
ただ、その時は本当に、青白い手が伸びてきたように見えたのです。
その奥にある、ぎょろりとした目と視線がぶつかったことについては、記憶違いと思うようにしています。
しばらくの間、どうすることもできずに固まっていると、やがて声は先ほどまでとは逆に、だんだんと遠ざかっていきました。
そして、声が消えると同時に、身体は解放され、動くようになりました。
いつも通りの部屋と、何事もなく進行するラジオ番組。
その夜、岩崎はたまらず電気をつけて眠りました。
翌日、学校にて。
岩崎はラジオを聴いていたというクラスメイトをつかまえて、昨晩の番組内容が、岩崎の記憶と――とりわけ、金縛りにあっていた最中に流れていたコーナーの――合致しているかどうか、確認をしました。
岩崎の記憶と内容が異なっていれば、昨晩の出来事は夢であるということで処理できるはずです。
3名ほどのクラスメイトに確認をしました。
その全員が言う内容と、岩崎が記憶している内容は、合致していました。
それ以降、一度だけ、金縛りの際に声が聞こえたことがあります。
あれは一体、なんだったのでしょうか……。
●
今回のお話は以上っ!
中学2年生の頃……だったと思います。
番組がずっと流れ続けていて、内容が記憶違いなら、夢っていう風に処理できるんですけどね……。
寝ていても番組内容を記憶することって可能なのかなぁ。
睡眠学習的な?
まあ、いま考えても、もう解明のしようがありません(笑)。
夏の夜に起こった、夢かもしれないちょっと不思議な出来事でした、っていうことで、こうしてひとネタできたわけですし、それでよしっていうことにしましょう。
笑い話にでもしなきゃ、夜眠れなくなっちゃいます。
ヒヒヒヒヒっ♪
今回は、以前挙げたタイトルの中から、この話。
これまでに書いた思い出話はこちら。
「音楽堂の夏合宿一日目」
「血まみれのマラソンランナー」
今回のお話は、岩崎が中学生の頃までさかのぼります。
候補に挙げた4タイトルの中で、最も古いお話なんです。
岩崎の記憶も薄れてきてはいますが、最も大事なトコロは強いインパクトのため、しっかりと覚えています。
忘れてしまう前に、ここに書き残したいと思います。
岩崎、中学二年生。
ギターとゲームと福山雅治が大好きな、平均身長よりだいぶ背が低い、ぼんやりとした中学生でした。
間もなく夏休みといった時期。
いくら部活動が好きとはいえ、義務化している放課後練習から解放されるのは、待ち遠しいことです。
この頃の岩崎は、ちょっと浮かれた、軽い気持ちで日々を過ごしていました。
当時、同世代の間で流行っていたのは、深夜ラジオでした。
オールナイトニッポン。
岩崎も例に漏れず、その番組が本当に大好きでした。
毎晩のように、体力の限り夜更かしをして耳を傾けていたものです。
ラジオをオフタイマーにして、布団の中で眠りに落ちるまで聴く……なんていうこともよくやっていました。
その晩、パーソナリティは女性歌手の方。
いつものように自室でラジオをつけて机に向かい、宿題をするフリをしながら聴いていました。
その日の宿題は白文帳(以前、テレビ番組「秘密のケンミンSHOW」で紹介されたことがある、長野県のみでしか使われていない漢字書き取りノート)に、ひたすら漢字を書くという単純作業。
やっぱりというかなんというか、じきに飽きてしまいました。
「あとは明日の朝やろう」という、自分でもまったく信じていないことを自分に言い聞かせ、書き取りを終わりにしました。
電気を消し、布団に入って、眠るまでラジオの続きを楽しむことにします。
番組は中盤、毎週必ずやっている定番のコーナーが始まりました。
岩崎はこのコーナーが大好きで、毎回しっかりと内容を覚えては、翌日同じ番組を聴いていたであろうクラスメイトと、この話題で盛り上がることが常でした。
「今週の投稿は切り口が違うなぁ」なんて小生意気なことを思いながら、暗い部屋で、天井を見上げて、耳を傾けていました。
――くる。
不思議なもので、「それ」が起こる直前って、何故か本能で予兆を感じるのですよね。
直後、岩崎は金縛りにあってしまいました。
「金縛りは夢だ」とか「身体が疲れていて動かない」とか、原因は諸説ありますが、この時ばかりは少なくとも夢でなかったという自信があります。
なぜなら、ラジオはしっかりと聞こえ続けていたから。
金縛りが初めてではなかった岩崎は、とっとと動けるようになりたいと思い、身体を動かす努力をします。
でもこの日はしぶとく、なかなか動くようになりません。
番組は楽しげに進行しているというのに……。
そして、いつもの金縛りとは違った現象が起こり始めました。
遠くのほうから、ラジオの音声とは違った「何か」が聞こえてきたのです。
だんだん、だんだんそれは近くなっていきます。
音楽のフェードインのように、少しずつ大きくなってくるそれは……人の笑い声でした。
ヒヒヒ……ヒヒヒヒ……
男性の声か、女性の声か、わからないほど甲高い声で、心底楽しそうに高笑いしています。
声は、だんだん耳の側に寄ってきたのです。
やがてラジオの音声をかき消すほど、大きくなりました。
耳元で何かが笑い続けています。
とんでもなく愉快なものを見たような風に、途切れることなくいつまでも。
ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ
これはまずいやつだ。
そう思った岩崎は、なんとかこの金縛りをふりほどこうと、身体を動かそうと必死に力を入れ、目を開きました。
そして、見てしまいました。
岩崎の足元のほうから伸びてくる、青白い手。
閉じていた目を急にかっと開いたから、視界がぼやけたのかもしれない。
今では岩崎は、なるべくそう思うようにしているんです。
ただ、その時は本当に、青白い手が伸びてきたように見えたのです。
その奥にある、ぎょろりとした目と視線がぶつかったことについては、記憶違いと思うようにしています。
しばらくの間、どうすることもできずに固まっていると、やがて声は先ほどまでとは逆に、だんだんと遠ざかっていきました。
そして、声が消えると同時に、身体は解放され、動くようになりました。
いつも通りの部屋と、何事もなく進行するラジオ番組。
その夜、岩崎はたまらず電気をつけて眠りました。
翌日、学校にて。
岩崎はラジオを聴いていたというクラスメイトをつかまえて、昨晩の番組内容が、岩崎の記憶と――とりわけ、金縛りにあっていた最中に流れていたコーナーの――合致しているかどうか、確認をしました。
岩崎の記憶と内容が異なっていれば、昨晩の出来事は夢であるということで処理できるはずです。
3名ほどのクラスメイトに確認をしました。
その全員が言う内容と、岩崎が記憶している内容は、合致していました。
それ以降、一度だけ、金縛りの際に声が聞こえたことがあります。
あれは一体、なんだったのでしょうか……。
●
今回のお話は以上っ!
中学2年生の頃……だったと思います。
番組がずっと流れ続けていて、内容が記憶違いなら、夢っていう風に処理できるんですけどね……。
寝ていても番組内容を記憶することって可能なのかなぁ。
睡眠学習的な?
まあ、いま考えても、もう解明のしようがありません(笑)。
夏の夜に起こった、夢かもしれないちょっと不思議な出来事でした、っていうことで、こうしてひとネタできたわけですし、それでよしっていうことにしましょう。
笑い話にでもしなきゃ、夜眠れなくなっちゃいます。
ヒヒヒヒヒっ♪