初めてのCART療法はそれなりに緊張した。
点滴用の長めの針をお腹に刺すとか
内臓を傷つける恐れがあるとか
聞いていたので当然といえよう。

主治医が穿刺の処置をしてくれたのだが
ベッドの周りには看護師さん2名、
若い女性医師、研修医2名と
補佐役以外のギャラリーも多く
余計に緊張したキョロキョロ

超音波の機械をお腹に当て
穿刺する位置が決まると
局所麻酔の注射をうたれた。
思わず「イテッ!びっくりと声を上げると
「ごめんね〜。でも(麻酔を)しないと
 もっと痛いからねぇ。」
至極真っ当なお言葉を頂いた。

麻酔のおかげで穿刺そのものは
ほとんど痛くなかった。
問題なく穿刺できたようで、
あとは固定して貯留バッグに
つなぐというときだった。


「固定しよう」


そう言って取り出されたのは
検尿用の紙コップだったポーン

底の中央に穴が空けられており、
側面には穴とつながるように
切り込みが入れられている。

切り込みを開き、実に慎重に
針を紙コップの中に入れ、
中央の穴からチューブを出した。


「固定します」


補佐役の看護師さんたちが
はずれないようにと粘着テープを
紙コップの側面4箇所に貼り、
そのテープの端を腹部に付け始めた。
チューブが出ている穴の部分も
テープで固定していく。

腹水でデカくなったお腹に
検尿カップを貼って立てるとは
なかなかシュールな光景である。
工作のような工程に腹が震えた笑い泣き

もう笑いが止まらなかったので
「工作みたい…とつぶやくと、
補佐役の先生も半笑いで
「そうですね。でも、すべての先生が
 こうする訳ではありませんよ。」
フォローになっていない
フォローをするのでさらに腹が震えた笑い泣き

腹が震えることで内臓に
針が刺さってはいけないと思い
冷静になろうとしたのだが…。

「物理得意な人〜?
周りに挙手を求める主治医。
貯留バッグと穿刺部との高低差がある方が
より早く腹水が抜けるだろうと
みんなが見ている前でベッドが
せり上がっていくのでまた笑った笑い泣き

おかげで腹水はよく抜けて楽になり
小一時間後には5.5キロという
驚くほどの量となったのである。

腹水を抜いている間ずっと
主治医が横にいたので
「紙コップは先生が開発した技ですか?
尋ねてみた。
すると、そうではなく20年も30年も前から
行われている手法だということだった。
紙コップの高さと角度が
腹水を抜くのにちょうど良いらしい。


腹水穿刺には紙コップ


新たなライフハックとして加えておこうてへぺろ