夫と近所の靴屋に行った。

大寒波が来るというので
すべり止め機能の高いブーツを
買おうとしたのだ。
退院したばかりでまだまだ弱い足腰だ。
手持ちの靴では転倒してしまうかもしれない。

ブーツを試着するのも一苦労だ。
履くのはなんとか履けるのだが
脱ぐときの力が足りない。
夫にひっこぬいてもらいながらの
試着だった。

ブーツもろくに脱げないとは情けない…と
思いつつ椅子に座っていると
店員さんが近づいてきた。

ぐいぐい説明&アドバイスをしてくれて
どんどんサイズを出してきてくれて
気がつけば購入が済んでいた。

帰宅後しばらくしてから
夫がぽつりと言った。


「普通に見えたんやなぁ」


初めは何を言っているのか
よくわからなかったのだが、
改めてきいてみると
靴屋の店員さんが私の病気に
一切気づかず接客していたことを
思い返して出た言葉だった。


「良かったなぁ、普通に見えたんやなぁ。
 俺、退院しても車椅子で移動して
 点滴もつないだままかもしれんと
 思っとったから…。
 良かったなぁ、元気になったんやなぁ。」


夫を見ると涙ぐんでいた。

まだまだ唾が飲み込みきれなかったり
自宅と靴屋の往復だけでも疲れたりと
「筋炎を患うがん患者」なんて
“元気”には程遠い気もしたが、
「良かったなぁ」と涙ぐんで言う夫には
「そうやで、元気になったったで」と
ドヤ顔をしておいた。

入院中、私は自分のことで精一杯だったが
夫はもっと大変だったのだなぁと
改めて思った。
仕事も家事も心配も、1ヶ月半のあいだ
ずっとひとりでしていたのだ。

筋力や嚥下機能がどれほど
回復するかもわからず
ぶり返すこともあると言われているが
とにかくもっと元気にならなくてはと思った。

元気なだけでいいのだ。
元気なだけで泣いて喜ぶ人がいる。
本当にありがたいことだ。

これからもなんとか元気に過ごしたい。


(オマケ)
筋炎じゃなくても無理やろ…という大寒波雪の結晶



(でも楽しかったですウインク