先日は主治医が早すぎた。

そもそもは私がジーラスタを
注射しなければならないことに
端を発していた。

ジーラスタは好中球を増やす薬で、
抗がん剤投与翌日以降に注射するものだ。
投与24時間以内での注射の安全性は
保証されていないので
投与3日目以降に注射するのが
一般的であろう。

しかし、私にとって投与3日目は
アプレピタント(吐き気止め)を飲まないと
いけないような日であり、
実際に注射するのはもう少し後になる。
それで投与5日目が診察日となった。

ただ、その日は主治医の手術日でもあった。
外来の予約は入れない日なのだ。
この日も帝王切開の予定があると言っていた。
そのため、時間的に間に合えば
主治医が自ら診察し
間に合わなければ他の先生に
診察を頼むということで
話がついていた。

その日、採血が済んだのは
8時半過ぎくらいだった。
病院へは朝イチに来たが上には上がいる。

採血結果が出るのにどんなに早くても
40分くらいはかかるだろう。
主治医には会えないかもしれないなと
思いながらフリースペースへ行った。

お茶を飲んで一息ついていたところ
私を呼ぶ声が小さく聞こえる。
驚いて振り返ると
産婦人科の看護師さんだった。
ここにいるかと探しに来てくれたらしい。

採血をして10分くらいしか経っておらず、
診察開始時間にもなっていない。
そんな状況で診察が行えるのだろうか。

そう思って看護師さんに尋ねたところ
「主治医は診察をするために
 一旦病棟から下りて来たが
 私を見つけられなかったので
 また病棟に戻ったが
 10分後に再び下りてくる」という
言葉を残しつつ
目まぐるしく動いていると知った。

ともかく主治医が再び下りてくる前にと
産婦人科の待合室へ急いだ。

数分後、主治医が早足で下りてきた。
すでに手術着のような格好をしていた。
手術予定よりお産が早まったのかもしれない。

「おはようございまーす」と私に
言いながら処置室に入っていったが
入っていくのが早すぎて
あとに続いてよいものか迷う。
数秒後、名前を呼ばれたので入っていった。
早速診察が始まった。話すテンポも速い。

主:「お変わりありませんでしたか。」
私:「特には…だるい感じはありますけど…」
主:「いつもと同じ感じですか?」
私:「そうですね。」
主:「検査結果は…出たんだっけ?
 確か白血球が3400くらいだったと
 思うけど…」
私:「おぉ。」
主:「他は…まだ出てないね。はははは。」

検査結果が出揃うより早いから早かったのだ。
そりゃあ早いに決まっている。

主:「でも、今日はジーラスタを
 打ってもらうとして…。次回は
 7月15日でいいですか?金曜日。」

すでに5クール目の化学療法の予約が
押さえられていた。
予約票も印刷済みだ。
5クール目もするんだなぁと思う暇もない。
主治医が早い、早すぎる!

私:「あ、大丈夫です〜。」
特に予定もなかったので
そのまま5クール目の予定が決まった。
主:「じゃあ、次は7月15日に!
 といっても、血液検査の結果次第ですが。
 それまでに何かあればすぐご連絡ください。」
私:「お忙しいのにありがとうございました。
 失礼します〜。」

処置室を出て引き戸を閉めようとすると
早すぎる主治医が扉の向こうですでに
引き戸をつかむ気配がしたので開けると
「すみませ〜ん」と笑いながら
今までに見たことのないスピードで
再び病棟へと去っていった。

ありがとう主治医。とても急いでくれて。
あとは帝王切開に全力を尽くしてくださいキラキラ

…と、見送ってからふと冷静になり
私のことは他の先生に
任せてもよかったのでは…キョロキョロという
考えがよぎった。
しかし、あの疾走感は早く帰してやろうという
厚意によるものだということにして、
それは忘れておこうと思うてへぺろ

(オマケ)早すぎる検査結果表

(結果が間に合ってない(笑))