「腹、減ってるんか」
「はぁ、少し…。」
「作ってほしいんか
作ってほしいんやな〜」
やや前屈みの姿勢で
両腕を体の前にだらりと下ろし
両手を小刻みに振っている。
料理をしそうには思えない。
「今日はお休みじゃないんですか」
「休みちゃう。見ろ、この腕を」
見たから尋ねたのだ
「作るで〜おいしくないもの。」
はい
おいしくないものを作るとは
一体どういうことだ。
「おいしくないものを作る
わざわざおいしくないものを
作るんですか」
「いつもおいしいものができるとは
限らへんのに、
いつもおいしいものが出てくると
思ってるやろ。思い込んでるやろ。」
「それで今日はおいしくないものを
わざと作るんですか」
「わざとは作らへん
でも全っ然おいしくない」
じゃあなんでおいしくないと
決まっているのだろう…
とにかくそう言い放つと、
しましょうねさんは調理を開始した。
途中、バターの香りがしたので
「ああ、いいにおいがしますねぇ。」と
言ったら、
「でも全っ然おいしくないで。」と
返事があった。
作りながら「全然おいしくないわ〜」
「全然おいしくないわ〜」と
繰り返していた
「全っ然おいしくない」と
言いながら手渡されたものがこちらだ。
全然おいしくないということなどなく、
いつものようにおいしかった
表面をバターで焼いたパンに
頂き物のローストビーフを
ふんだんに挟むという
サンドイッチなのだから、
おいしくないはずがないのだ。
でも、作った料理がおいしいとは
限らないということはよくわかった。
これからはしましょうねさんの作る
料理がおいしかったら、
おいしいことに感謝して食べようと思う
※しましょうねさんとは、夫が演じる
アクの強めなキャラクターです。