ここに立つために鍛え抜いた日々よ
原口のすべて魅せろ震わせろ
阪神タイガースの原口文仁選手の
ヒッティングマーチである。
コロナ前は球場で
応援バットを叩きながら歌った。
原口選手は「持っている」ので
彼が打席に立つと期待が高まり、
ファンの声援も大きくなる。
一軍登録までの試練の日々が窺える
ヒッティングマーチの歌詞から
タイトルを取った著作が
『ここに立つために』だ。
26歳で大腸がんに罹患した原口選手が
手術・リハビリを経て、
一軍復帰するまでの軌跡が書かれている。
「絶対泣くやん」と読む前から
夫にからかわれていたが、
「はじめに」の時点で泣いた。
フライングも甚だしい。
「生きていることのありがたさ」を
本当に実感できるようになったのは
原口選手と同じく、がんになってからだ。
2019年1月24日、がんを公表なさったときは
私自身のがんには気づいていなかったので
「原口選手、大変やなぁ。
絶対に戻ってきてほしいなぁ。」と
思いはしたものの、
自分ががんになる可能性なんて
想像してもみなかった。
「自分は大丈夫」の典型だ。
その3ヶ月後、卵巣がんと診断され
手術・化学療法を受けることになった。
原口選手は6月に一軍復帰なさったので
その姿に励まされ、後に続こうと思った。
一方、早期発見で済んだのだろう、
うらやましいなと思って試合を観ていた。
だから、シーズン終了後の公表で
ステージが3bと知ったときはとても驚いた。
化学療法を受けながらの復帰だったことを
にわかには信じがたかったことも
著書を読んで思いだした。
もともとポジティブな印象がある
原口選手だが、
この本ではその当時の思いを
知ることができた。
報道だけでも強い人だなぁと思っていたが
周りの人への気遣いを忘れずに
前向きに進もうとする原口選手の人柄が
よくわかり、原口選手に関わる人たち
みんながいい人なのも納得がいく。
「ここに立つために」
がんばっている姿を見せるために
そのことで誰かを励ますために
原口選手は立ち続ける。
私も私の場所で立ち続けられるように
「できること」をがんばろうと思う。