「いやぁ、こんな雨の中、すみません」
恐縮する白神支配人の先導で、店に一歩足を入れると、薄暗い店内から耳を劈くようなジュークボックスの音楽と嬌声とだみ声と、店内が霞むほどに充満したタバコの煙が出迎えた。川端康成が書くような紫煙なんて表現はまったく相応しくない。
タバコの霞の向こうに作業服のままの工員さんたちと、化粧の下手な田舎くささ丸出しホステスたちがドンちゃん騒ぎしている。暗い足下を注意して進むと、目 に入るボックス席はタバコの火で穴だらけ。「まいったとこに来たな」ーーそう思いながら、用意されていた一番奥のボックスに座った。急ごしらえの特別席と いうことだろう。そこの座席もタバコの火で穴だらけだった。
気がつくと同じテーブルを挟んで薄暗いキャンドルの向こうに、石川啄木の“働けど働けど わが暮らし楽にならざり じっと手を見る”、今でいう「負け組」を背負ったような顔をした4~50歳の男と、14、5歳に見える青白いおかっぱ髪の少女が居る。
支配人からいい子(娘)と聞いていたから正面から見た。美少女の部類に入る。その少女の傍らに白いギターが一本あった。
「正次郎先生、この子(娘)です」
白神支配人の紹介で、目の前の少女が立ち上がり、「初めまして、阿部純子(藤圭子=写真)と申します」と少女が声を発した。ハスキーな声だった。
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