いきなりこんな電話を寄越した相手は、RVCレコードの榎本譲という男。
藤圭子(左写真。右写真=娘の宇多田ヒカル)の担当ディレクターで、既に当時、藤圭子のデビュー曲『新宿の女』、『女のブルース』や『圭子の夢は夜ひらく』で連続ヒットを飛ばし、RVCに榎本あり、と売り出し中だった。
「ギャハハハ。いきなりなんだよ。バカ言ってんじゃないよ。君は何年間、純子と付き合ってんだよ。知らんのか?」
「いえ。今日の昼、純子に用があって家に電話したら、お袋が電話に出て、『純子はいま○○って喫茶店に行っているから、電話番号見るからちょっと待ってね』って言われたんですよ」
「ギャハハハ。それで……」
「で、電話番号を教えられたんですよ……。どうなってんですかね」
榎本ディレクターはどうしても合点がいかないようだった。
「そんなこと私に聞かなくたって純子本人か、石坂まさお(『新宿の女』『女のブルース』『圭子の夢は夜ひらく』の作詞家で、藤圭子を自分でスカウトしたと称している男)に聞けばいいじゃないか」
「いえ。本人に聞くのは拙いし、石坂も絶対本当のことは言わないと思いますから。正次郎先生なら知っていると思いまして……」
「そう、見えるの。普通の人より視力は落ちるけどちゃんと見えるの! 生きる知恵、目が見えないってことにして、流しで同情を買ってチップを余計に稼いでいたんだよ。笑っちゃうよな。あなたも騙しているんだな。まぁ、敵を騙すには味方からって言うじゃないか。ギャハハハ」
「やっぱりそうですか。どうもおかしいと思っていたんですよ。石坂のヤツも頭に来るな」
榎本ディレクターとはこれで終わったのだが、筆者は腹を抱えて笑い続けた。
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