中高一貫校は高二までで英数を仕上げてきているので、高三までかけて高校のカリキュラムを履修する公立高校の生徒はどうしても不利なことは否めない。もちろん、中高一貫校の中でも落ちこぼれている人は、結局のところ公立高校と比べアドバンテージがあるとは言えないのかもしれないが、中高一貫校では、そういう人でも一念発起して東大やら医学部やらを目指してもいい雰囲気があるようである。
公立高校出身者も「私の東大合格作戦」に投稿しており、2010年代には仙台第二と山形東が各3人、岡崎が2人の投稿実績がある。仙台第二や山形東は東北の公立トップ校であるが、仙台第二は2020年代も5人投稿しているのに対して、山形東は投稿がない。仙台第二は東大合格者を年間10人くらい輩出し、仙台第一も東大合格者を年間5人くらい輩出しているが、仙台第一の名前を「私の東大合格作戦」で見たことはない。両校ともナンバースクールとして伝統を誇るが、投稿数の差の理由は不明である。
仙台第二の投稿をいくつか読み返したが、どれも特に印象に残る内容ではなかった。そこで、京都の堀川高校出身のKFさんの投稿(「私の東大合格作戦2016年版」、22-36頁)を紹介したい。(「私の東大合格作戦2016年版」、22-36頁)。高二夏に全く勉強しなかった結果、現役では文3に6点差で落ちたそうであるが、一浪して文1に合格する。弁護士になったようあり、現役で文3に通った場合より高いステータスを得ていると思われ、浪人した甲斐があったのではなかろうか。KFさんは「高二夏休みの無勉が痛かった。ここで勉強していたら現役で受かっていた気がする。公立高校に通っている人は一時期でも手を抜くと合格が遠のくので、頑張れ」(25頁)と述べている。「一時期でも」というところに重みが感じられる。
浪人中は代ゼミに籍を置いたものの、授業にはあまり出席せず、「受験勉強というものは結局暗記に帰着するものであり、自習で十分」(24頁)と考え、自習中心で勉強を進めた。その結果、参考書を8頁にわたり紹介しており、特に「青チャート」については「厚い、厚すぎる。頑張ってください」(27頁)とコメントしている。歴史学者の呉座勇一氏も「青チャート」を最後まで終えられなかったと述べているが、実際に最後までやり切る受験生はどのくらいいるのであろうか。
KFさんの「受験戦略的アドバイス」も的確である。「はっきり言って、東京大学の場合、受験戦略って大まかにはすでに確立されてますよね。英数が大事、英数の得点が勝負を決める、と言ったところでしょうか」(34頁)と強調し、英語と数学の得点が合否を左右すると指摘している。ただし、両科目は暗記量が膨大で、高1・高2からコツコツ取り組まないと高得点は難しいと論じており。受験戦略が確立し、広く知られるようになったものの、暗記量の多さは依然として大きなハードルである。