色付いた木葉はいつの間にか北風にさらわれて
季節はすっかり冬に移り変わっていた。

手足の芯まで凍えそうな朝冷えの中
私は水汲みのため裏庭に向かった。

井戸から引き上げた水はキンと冷えていて
濡れてしまった手がじんと痺れる。

早く戻って釜戸の火で暖まろう。
水の入った桶を持ち上げて、足早に歩く。


サクサクサク


足元から、小気味良い音が聞こえてきて
あれ?と、視線を向ける。

「あっ!!霜柱!!」

見ると、地面はところどころ土が盛り上がり
その下では朝の光の中

霜柱が透明な輝きを覗かせていた。

私は水桶を足元に下ろすと
足踏みするように周囲の地面を踏んでみる。


サクサク……サク……


霜の厚い所は私が乗っても崩れずに
軽く跳ねてみてもびくともしなかった。
少し移動して地面を踏み締めると
サクサク。と、また小気味良い音が聞こえてくる。

(懐かしいなぁ。子供の頃、よく霜柱を探して踏んだりしたよね)

この時代に比べ、土の地面が少なかった現代では
公園の片隅にできた霜柱を、みんなでこぞって踏んでいた。
もちろん公園に行かなくなってからは霜柱を見る機会は

パッタリと無くなってしまったけれど……

それでも、見つけると踏んでみたくなるのはあの頃と変わらない。



「何しとるんや?」

冬の冷えた空気を震わせて凛とした声が届く。
顔を上げると、いつの間にか縁側に秋斉さんが立っていた。

「あ!秋斉さん。おはようございます」

「おはようさん」

思いがけず朝一番におはようが言えて
私は嬉しさに頬を緩める。

「霜柱がいっぱい出来ていて、子供の頃に踏んでまわったのが懐かしいなって。

ちょっと遊んじゃいました」

冬の透明な光に照らされた彼は、眩しそうな
何かを懐かしむような様子で目を細め、穏やかに微笑んだ。

「凍えんうちに早う中に入り」

確かにこれ以上遊んでいたらすっかり冷えてしまいそうだ。
私は、はい。と返事をして、水桶を手に取った。


サクサクサク

サクサクサク………



二つの音が重なり、思わず振り向く。

地面にはさっきの私の足跡と、もう一つ……

「なんや、あんさんを見とったらわてもやりとうなってしもた」

そう笑った彼は少年のような
どこかなあどけない笑顔で


私の胸はきゅんと甘く音をたてた。