父に勧められて読んだ、「野犬狩り」を読み直しましたので紹介します。ちょっとネタバレです。短編ですので、これからがっつり読みたい方は、控えてもらったほうがいいかもですニコニコ

 

「海の奇蹟」 著者 吉村 昭 氏 出版社 文藝春秋 収録

「野犬狩り」

 

主人公 : 広瀬 氏 (男性、年齢?)

職 業 : 野犬捕獲人(保健所職員)

家族  : 既婚 妻が妊娠4か月 それまでに2回堕胎させている。

       女子供に忌み嫌われている職業である事、子どもを持つことに畏れに似た感情を

     持っていたため。でも、妻の強い希望により今回は出産する。男も子どもを望む気持

     ちを持ち始めている。

時代 : 主人公が、少年工であった時に戦争末期であった事、この仕事ついた時に、アメリ

    カ兵が帰国するのに犬を日本に捨ててしまう記述があるので、昭和20年代から30年

    代か?(昭和30年代後半から40年代に野犬 狩りとネットで検索すると野犬による被

    害ー養鶏所の鶏の100羽が被害、幼児が襲われるなどの新聞記事やTV報道で確認

    しました。軍用犬の関与は不明)

 

内 容 : 戦争末期に空襲で亡くなった遺体を野犬が貪り食う場面に遭遇、終戦後、当時民         

     営だった野犬捕獲の「組」に誘われた時、ためらいながらも進んで飛び込みたい誘惑

     にかられる。

       都市部で野犬捕獲の仕事をしているが、記述からかなり熟練した捕獲人である事

     がわかる。ある日、H市の丘陵地帯に出没する野犬の捕獲の協力に出向を命ぜられ

     管轄の捕獲人と共に探すが、なかなか見つけられない、しかし、養鶏や畑の被害は

     甚大で連日保健所には苦情が寄せられる。

印象に残ったシーン

1 野犬捕獲人を見ただけで野犬は怯え、逃げてしまう。人間にはわからない雰囲気を醸し

 出す人間がいる事。一方、飼い犬は、捕獲人がそばにいても平気である。

2 アメリカ兵がおいていった犬の中には軍用犬として訓練を受けたものもおり、敵を鋭く察 

 知し、かつ自分たちの居場所を気取らせない狡猾さを持ち合わせ、さらに統率力をもって犬

 の集団をひきいている。まさに、犬の軍隊。

3 クライマックスシーンで広瀬氏が捕獲した野犬に足を噛まれ血を流しながらさらに野犬の集団に向かった時、統率力を失った野犬が散り散りに走って行く、シーン

 

 

 父が、この本を私に勧めた時の言葉「野犬といってもアメリカの軍用犬が他の犬を統率しているから、なかなかつかまらないんだ。主人公が野犬に足を噛まれて血を流しながらも、ボス犬を捕まえたら、統率力をなくして、みんな逃げ出したんだ。短編だから、すぐに読める。」だったように思う。

 久し振りに、読み返して熱い興奮を感じた。また、主人公の背景や家族の事等が書いてあったことに初めて気が付いた。中学2年生だった私は、人間と野犬の残飯が腐ったような臭いのする闘いと犬の賢さに強い印象を受けていたようだ。 

 高校生くらいの時に、保健所に連れて行かれる犬を見た事がある。大きな犬だったが、吠えもせず、首をつかまれて硬直して噛みつこうともせず、ほとんど抵抗することなく車に乗せられた。

 連れて行ったオジサン達は、保健所の職員だったと思うが、普通の人たちに見えた。でも、犬にはわかるんだろう。この人間に抵抗しても無駄だと。

 

 

  この小説がスタートで私は吉村昭氏の小説、エッセイを読むようになった。

  「関東大震災」「漂流」「高熱隧道」「蚤と爆弾」etc これからも、ちょっとずつ紹介していきます。

 

 

  でも、父は何でこんな小説を私に勧めたのか?自分が面白いと感じたからだろうな(^_^;)