鳥巣清典の時事コラム1548「NHKスペシャル=軍の原爆計画の責任者のインタビューを始めます❶」
歴史的スクープNHKスペシャル『決断なき原爆投下』(8月6日)❶。
原爆投下直後「人々を皆殺しにしてしまった事を後悔している」(トルーマン)
1、今年5月アメリカの現職オバマ大統領が広島を訪れ、演説した。
「71年前の明るく晴れ渡った朝、空から死神が舞い降り、世界は一変しました。閃光と炎の壁がこの街を破壊し、人類が自らを破滅に導く手段を手にしたことがはっきりと示されたのです」
謝罪の言葉はなかった。
2、1945年8月6日アメリカは広島に原子爆弾を投下。当時の大統領ハリー・トルーマンはアメリカの全国民に向けラジオ演説で語った。「戦争を早く終わらせ多くの米兵の命を救うため原爆投下を決意した。みなさんも同意してくれると思う」と正当性を主張。この大統領の決断は、今に至るまでアメリカ社会で原爆投下の大義とされてきた。
3、ところがトルーマンは原爆投下直後に実は深い後悔の念を抱いていた事が分かってきた。<人々を皆殺しにしてしまった事を後悔している。日本の女性や子供たちへの慈悲の想いは私にもある>。
4、さらにトルーマンが原爆投下に対して明確な決断をしていなかったという新たな事実も明らかになった。
5、軍の原爆計画の責任者レズリー・リチャード・グローヴス准将。
今回見つかった未公開テープで投下の経緯を語っていた。「大統領は市民の上に原爆を落とすという軍の作戦を止められなかった。一旦始めた計画を止められる訳はない」(グローヴス准将)。原爆投下をめぐってトルーマン政権と軍との間で激しい攻防が繰り広げられていた事が分かってきた。
6、市民の犠牲を最小限に留めたいと考えていたトルーマン。<原爆を落とす場所は、あくまで軍事施設に限る>(トルーマン)。一方軍は最大の破壊効果を得るため、市民の暮らす中心部を狙っていた。「原爆の威力が隅々まで行き渡る都市に落としたい」(グローヴス准将)結果、その年だけで21万人の命が失われた。なぜ市民の命が失われなければならなかったのかーー71年目の真実。
7、「多くの日本人が亡くなりましたが、何千人ものアメリカ兵が救われました。トルーマン大統領は、正しい決断をしたのです」「いま生きているのは、原爆のおかげです。原爆が戦争を終わらせたおかげで、日本の子どもたちも死なずに済んだはずです」(以上、退役軍人)トルーマンは、多くの命を救うため原爆投下を決断したーーアメリカではこの大義が今でも市民に根強く受け入れられている。
「グローヴス元准将へのインタビューを始めます」
8、ところが戦後71年にわたり信じられてきたこの定説を根本から揺るがす事実が明らかになってきた。軍の施設に、ある重要な資料が眠っていた。空軍の幹部を養成する士官学校。4か月の交渉の末、取材許可が下りた。図書館の書庫に原爆計画の全てを知る人物のインタビューテープが未公開のまま保管されていた。
9、「これからグローヴス元准将へのインタビューを始めます。場所はワシントン。1970年4月3日です」。原爆計画の責任者へ軍が2時間をかけて聞き取りを行っていた。グローヴスはこの3か月後に心臓病で世を去る。原爆投下の経緯を赤裸々に語っていた。
【鳥巣注】
ジャーナリズムの最大の使命は「記録」といわれます。そして「欧米の思想は記録」とも表現されます。記録が残っているからこそ、10年、100年後に「ああ、そういう事だったのか」と検証できる。その「記録」の正しさの確率を上げるためには、今回のNHKスペシャル班のような存在が必要になってきます。
原爆投下直後「人々を皆殺しにしてしまった事を後悔している」(トルーマン)
1、今年5月アメリカの現職オバマ大統領が広島を訪れ、演説した。
「71年前の明るく晴れ渡った朝、空から死神が舞い降り、世界は一変しました。閃光と炎の壁がこの街を破壊し、人類が自らを破滅に導く手段を手にしたことがはっきりと示されたのです」
謝罪の言葉はなかった。
2、1945年8月6日アメリカは広島に原子爆弾を投下。当時の大統領ハリー・トルーマンはアメリカの全国民に向けラジオ演説で語った。「戦争を早く終わらせ多くの米兵の命を救うため原爆投下を決意した。みなさんも同意してくれると思う」と正当性を主張。この大統領の決断は、今に至るまでアメリカ社会で原爆投下の大義とされてきた。
3、ところがトルーマンは原爆投下直後に実は深い後悔の念を抱いていた事が分かってきた。<人々を皆殺しにしてしまった事を後悔している。日本の女性や子供たちへの慈悲の想いは私にもある>。
4、さらにトルーマンが原爆投下に対して明確な決断をしていなかったという新たな事実も明らかになった。
5、軍の原爆計画の責任者レズリー・リチャード・グローヴス准将。
今回見つかった未公開テープで投下の経緯を語っていた。「大統領は市民の上に原爆を落とすという軍の作戦を止められなかった。一旦始めた計画を止められる訳はない」(グローヴス准将)。原爆投下をめぐってトルーマン政権と軍との間で激しい攻防が繰り広げられていた事が分かってきた。
6、市民の犠牲を最小限に留めたいと考えていたトルーマン。<原爆を落とす場所は、あくまで軍事施設に限る>(トルーマン)。一方軍は最大の破壊効果を得るため、市民の暮らす中心部を狙っていた。「原爆の威力が隅々まで行き渡る都市に落としたい」(グローヴス准将)結果、その年だけで21万人の命が失われた。なぜ市民の命が失われなければならなかったのかーー71年目の真実。
7、「多くの日本人が亡くなりましたが、何千人ものアメリカ兵が救われました。トルーマン大統領は、正しい決断をしたのです」「いま生きているのは、原爆のおかげです。原爆が戦争を終わらせたおかげで、日本の子どもたちも死なずに済んだはずです」(以上、退役軍人)トルーマンは、多くの命を救うため原爆投下を決断したーーアメリカではこの大義が今でも市民に根強く受け入れられている。
「グローヴス元准将へのインタビューを始めます」
8、ところが戦後71年にわたり信じられてきたこの定説を根本から揺るがす事実が明らかになってきた。軍の施設に、ある重要な資料が眠っていた。空軍の幹部を養成する士官学校。4か月の交渉の末、取材許可が下りた。図書館の書庫に原爆計画の全てを知る人物のインタビューテープが未公開のまま保管されていた。
9、「これからグローヴス元准将へのインタビューを始めます。場所はワシントン。1970年4月3日です」。原爆計画の責任者へ軍が2時間をかけて聞き取りを行っていた。グローヴスはこの3か月後に心臓病で世を去る。原爆投下の経緯を赤裸々に語っていた。
【鳥巣注】
ジャーナリズムの最大の使命は「記録」といわれます。そして「欧米の思想は記録」とも表現されます。記録が残っているからこそ、10年、100年後に「ああ、そういう事だったのか」と検証できる。その「記録」の正しさの確率を上げるためには、今回のNHKスペシャル班のような存在が必要になってきます。