鳥巣清典の時事コラム1612「世界経済を理由に増税先送りの説明には無理がある(熊谷氏)」 | 絶対に受けたい授業「国家財政破綻」

鳥巣清典の時事コラム1612「世界経済を理由に増税先送りの説明には無理がある(熊谷氏)」

『ウェークアップ! ぷらす』(日テレ系)。タイトルは「新しい判断 消費増税再延期を決定 与野党論客と徹底討論」。




「アベノミクスの果実を社会保障の財源に充てます」

辛抱
 消費税増税は先送りーーこの判断はどうなんだ? 
司会
 安倍総理は「参議院選挙で真意を問うと語っていました。不足する社会保障財源には、アベノミクスの果実を当てるとしました。果たしてそこに果実はあるのでしょうか? 疑問を考えます。
「アベノミクスの果実の活用も含め、財源を確保して優先して実施していく、その果実も使って可能な限り社会保障を充実させてまいります」(安倍総理)
 消費増税先送りと引き換えに社会保障の財源として安倍総理が口にした「アベノミクスの果実」。果たしてそんなものが実際にあるのだろうか。
「現在、有効求人倍率は24年ぶりの高い水準となってます。中小企業の倒産も政権交代前から3割減少しています」(安倍総理)

「内需を腰折れさせかねない消費税率の引き上げは延期」


ーー通常国会閉幕後に開かれた会見で安倍総理がまず強調したのがアベノミクスの成果。その後、中国など新興国の経済に陰りが見えるなどと世界経済の現状に言及。そのリスクに備える必要があるとして消費増税の再延期を表明した。
「リスクには備えなければならない。今そこにあるリスクを正しく認識し危機に陥ることを回避するため、しっかりと手を打つべきだと考えます。内需を腰折れさせかねない消費税率の引き上げは延期すべきである」(安倍総理)

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ーーここで疑問が、安倍総理の言うように日本の経済が好調なら今増税すべきなのでは? このタイミングを逃すと一体いつ上げるのか? 今回の消費税増税の再延期は根拠に乏しいという指摘も。

<世界経済を理由に増税先送りの説明には無理がある>


「主に新興国のデーターを主として集めてきた。世界経済はそこまで弱い状況ではないので、この世界経済を理由に増税を先送りするというのは、なかなか説明としては難しいという印象です。本音ベースでは国内経済、とくに消費のところが弱いという事があって、ここをかなり懸念をして増税をした」
熊谷 亮丸・大和総研チーフエコノミスト



ーーそもそも消費増税は4年前、当時政権の座にあった民主党と野党の自民党・公明党の3党合意で決まった。
これにより消費税率は2014年4月に8%に。2015年10月には10%に段階的に引き上げられる予定だったがーー「再び延期する事はない。ここで皆さんに、はっきりとそう断言致します。必ずやその経済状況をつくり出す事が出来る」(安倍総理)
ーー一昨年安倍総理は10%への税率引き上げを先送りし、その判断の是非を国民に問うとして衆議院を解散。総選挙で与党が大勝を収めた。その後もリーマン・ショック級や大震災級の事態が起きない限り消費税を引き上げると明言していたはずの安倍総理。


「新しい判断について参議院選挙で国民の真意を問う」


 これまでとの説明との食い違いについてーー「現時点でリーマン・ショック級の事態は発生していない。それが事実であります。熊本地震を大震災級だとして再延期の理由にするつもりももちろんありません。今回、再延期するという私の判断は、これまでのお約束とは異なる新しい判断であります。新しい判断について国政選挙であるこの参議院選挙を通して国民の真意を問いたいと思います」(安倍総理)
ーー衆議院を解散せず、参議院選挙で国民の真意を問うとした安倍総理。しかし与党内からは、こんな声も。「増税を延期されるのであれば、前し回の選挙との整合性で国民の信を問うべきである」(稲田政調会長)。

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「伸ばすというのであれば、もう1回選挙をして信を問わないと筋が通らない」(麻生財務相)
ーー増税派の麻生財務相は最後まで衆参W選挙を求めていたが、月曜日安倍総理と会談し最終的に総理の考えを容認した。「結果が大事、私の気持なんか関係ありませんよ。出来レース? そうあなたが思っても、ちっとも構いませんよ」(麻生財務相ー記者会見で)

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「おいしい話だけでは駄目だと思います」(小泉進次郎議員)


ーー安倍総理の決断に対し、こんなに異論が広がるのは税収の穴埋めの見通しが示されないまま増税先送りが先行して実施される事への懸念が背景にある。「消費税を延期をする。だけど決まっている社会保障の充実は予定通りやりますというのは、そんなおいしい話だけでは駄目ですよね。どこに財源があるのか?」(小泉進次郎・自民議員)

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ーー消費税率を8%から10%に引き上げる事で5・8兆円程度増えると見込まれていた税収。それを子育て支援や低所得者支援などの社会保障の充実や財政赤字の削減に使うはずだった。安倍総理は増税先送りのツケをどう払っていくつもりなのか。
「引き上げた場合と同じ事を全て行う事は出来ないということはご理解を頂きたい」(安倍総理)
ーー全ての社会保障は行えないとしつつ、子育て世代の支援などは約束通り進めるという安倍総理。その財源についてはーー「アベノミクスを一段と加速する事によって税収を一段と増やしていきたい。そしてその果実も使って可能な限り社会保障を充実させてまいります。いずれにせよ優先順位をつけながら今後の予算編成の中で努力をしていく考えであります」(安倍総理)
ーー社会保障の財源は、アベノミクスの果実でと語り、結局具体的な財源を語る事はなかった。アベノミクスの果実とは、一体何なのか?

<アベノミクス景気は一過性の可能性がある(熊谷氏)>


 以下、前出・熊谷氏が解説。
「アベノミクスで景気が良くなってくると、それによって例えば所得税とか法人税とか言われるような直接税の税収がかなり増えてくる。ただ問題は、景気が良くなるのがいつまでも続くかと言われると一過性である可能性がある訳ですから。今税収が上がったからといって、それに頼ってしまうと将来的には社会保障費が拡大していくなかで、日本の財政は非常に厳しいものになる可能性がある」
(中略)


<P・B黒字化が不可能だと金利が跳ね上がる可能性も>


ーープライマリー・バランスの黒字化。財政再建への影響。これがどう私たちに直撃するのでしょうか。現在、国の収入と支出のバランスですが、支出の方が多い状況です。今年度だけで赤字は16・6兆円。そこで政府は、国際公約として2020年度には収入と支出のバランスをプラス・マイナス0、あるいは黒字化にするという事を言って来たのですが、もし黒字化できなければ国際公約が守られない訳です。日本の国債の信用度も落ちてしまう。そうなってくると、私たちの生活に直撃する事があります。
「国民にとっては、おカネを借りる金利が非常に大きく上がってしまう。もしくは銀行が貸し渋りをやる可能性がある。国民はおカネが借りられなくなって非常に厳しい生活になってくる。同時に株などが暴落すれば、その時は日本の企業の経営が非常に厳しくなって、企業収益も減って国民の給料は減る。このまま財政赤字を放置しているといずれは市場から非常に大きなしっぺ返しを食う可能性があります」