鳥巣清典の時事コラム1610「政府 “一億総活躍社会”工程表や骨太の方針など決定」 | 絶対に受けたい授業「国家財政破綻」

鳥巣清典の時事コラム1610「政府 “一億総活躍社会”工程表や骨太の方針など決定」

政府 “一億総活躍社会”工程表や骨太の方針など決定

NHK



政府は2日の閣議で、保育士や介護職員の処遇改善などを盛り込んだ、一億総活躍社会の実現に向けた工程表のほか、経済財政運営と改革の基本方針、いわゆる「骨太の方針」など、今後の政策の方向性などを示す5つの文書を決定しました。

政府は、安倍総理大臣が掲げる「GDP=国内総生産600兆円」、「希望出生率1.8」、「介護離職ゼロ」の達成に向け、2日の閣議で、一億総活躍社会の実現に向けた工程表「ニッポン一億総活躍プラン」、経済財政運営と改革の基本方針、いわゆる「骨太の方針」、新たな成長戦略、規制改革実施計画、それに「まち・ひと・しごと創生基本方針」の5つの文書を決定しました。
このうち、「ニッポン一億総活躍プラン」には、保育士の処遇を来年度から新たに2%相当、月額6000円程度改善することや、介護職員の処遇を来年度から月額平均1万円相当改することが盛り込まれています。
さらに、現在4割の正社員と非正規労働者の平均賃金の格差を2割程度に縮小することを目指すとしています。
そのうえで、これらの政策を通じて、「成長と分配の好循環」を構築し、一億総活躍社会を実現するとしており、その財源には、税収の増加分や歳出改革の成果、失業給付の減額分などを「アベノミクスの成果」として活用するとしています。

「ニッポン一億総活躍プラン」とは

政府は2日の閣議で、同一労働同一賃金の実現に向けて、正社員と非正規労働者の平均賃金の格差を2割程度に縮小することを目指す方針や、保育士や介護職員の処遇を改善することなど盛り込んだ、一億総活躍社会の実現に向けた工程表を決定しました。
決定された工程表・「ニッポン一億総活躍プラン」によりますと、同一労働同一賃金の実現に向けて、労働契約法など3法の一括改正などを検討し、現在4割の正社員と非正規労働者の平均賃金の格差を2割程度に縮小することや、
労使合意があれば上限なく時間外労働が認められる36協定の在り方を再検討し、週に49時間以上働く人の割合を1割程度に減らすことを目指すとしています。
また、「希望出生率1.8」の実現に向けた子育て支援策として、保育士は来年度から新たに2%相当(月額6000円程度)、処遇を改善することに加え、経験を積んだ保育士については、すべての産業の女性労働者の平均賃金との月額4万円程度の賃金差を解消するなどとしています。
さらに、「介護離職ゼロ」に向けて、介護職員の処遇を来年度から月額平均1万円相当、改善することなどを盛り込んでいます。
一方、返済の必要のない給付型奨学金については、政府与党内に慎重論があることも踏まえて、創設に向けて検討を進めるとするにとどめています。

「骨太の方針」とは

政府は2日の閣議で、経済財政運営と改革の基本方針、いわゆる「骨太の方針」を決定し、来年4月の消費税率の引き上げを2年半再延期する一方、2020年度に基礎的財政収支を黒字化するとした財政健全化目標を堅持するなどとしています。
閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針、いわゆる「骨太の方針」では、安倍総理大臣の1日の記者会見を踏まえて、来年4月に予定していた消費税率の10%への引き上げを、2019年・平成31年10月まで2年半再延期することが明記されました。
また、
国と地方を合わせた基礎的財政収支=プライマリーバランスを2020年度・平成32年度までに黒字化するとした財政健全化目標を堅持するとしています。
一方、去年の「骨太の方針」にあった、2018年度に基礎的財政収支の赤字をGDP=国内総生産と比べて1%程度に縮小するとした中間目標は盛り込まれませんでした。
このほか、同一労働同一賃金の実現、保育士や介護職員の処遇改善、それに個人消費を喚起するための賃上げの実現など、一億総活躍社会の実現に向けた政策を通じて「成長と分配の好循環」を構築するとしています。
また、これらの政策を実行するための財源について、税収の増加分や歳出改革の成果、失業給付の減額分などを「アベノミクスの成果」と位置づけ、活用するとしています。
政府はこの「骨太の方針」に基づいて、来年度・平成29年度予算案の編成に当たることにしています。

「新たな成長戦略」とは

政府は2日の閣議で、GDP=国内総生産600兆円の実現に向けて、3年以内に小型の無人機=ドローンによる荷物配送の実現を目指すことや、2020年度から小学校でプログラミング教育を必修化することなどを盛り込んだ、新たな成長戦略を決定しました。
それによりますと、AI=人工知能を駆使した新たな成長市場を創出する「第4次産業革命」を実現するため、2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでに自動車の高速道路での自動運転を、3年以内に小型の無人機=ドローンを使った荷物配送の実現を目指すとしています。
さらに、ロボットやドローンを災害現場での捜索や救助などに活用するため、技術開発を積極的に進めていくことが盛り込まれています。
また、技術革新を支える人材を生み出すため、2020年度から小学校で、2021年度から中学校で、プログラミング教育を必修化することや、高度な技術を持った外国人への永住権の付与を迅速化することなども打ち出しています。
さらに、「第4次産業革命官民会議」を設置し、予算や人材を配分する重点分野の決定などを行うとしています。

「規制改革実施計画」とは

政府は2日の閣議で、いわゆる民泊を普及させるため、現在は営業が認められていない住居専用地域でも民泊を行えるようにする新法を今年度中に国会に提出することなどを盛り込んだ規制改革実施計画を決めました。
計画には、規制改革会議が先月提出した答申を受けて、政府が今後取り組む80の規制緩和策や制度の見直しの方針が盛り込まれています。
具体的には、いわゆる民泊の普及を図るため、家主が同居するか施設に管理者を置けば届け出によって営業を認めることや、現在は営業が認められていない住居専用地域でも営業できるようにすることなどを盛り込んだ新法を今年度中に国会に提出するとしています。
また、牛乳などの原料となる生乳の流通を農協の連合会などがほぼ独占している今の制度について、酪農家の所得向上を図るため、ことし秋までに制度の是非を含めた抜本的改革を検討するとしています。
このほか、外国人旅行者が過去最高となっていることを受けて、国家資格である通訳案内士に限られている有料での外国語による旅行案内業務を、通訳案内士以外もできるようにすることなども盛り込んでいます。

「まち・ひと・しごと創生基本方針」とは

政府は2日の閣議で、地方創生に向けて、全体の4割を超える市町村で全国平均の2倍以上の速度で人口が減少していくという試算を示したうえで、地域の特性に応じた政策を整備して支援するなどとした、新たな基本方針を決定しました。
それによりますと、国立社会保障・人口問題研究所の地域別の将来推計人口を基に分析した結果、全体の4割を超える705の市町村では、平成52年までの30年間に、全国平均の2倍以上の速度で人口が減少していくという試算を示しています。
そのうえで、地方創生に向けて、地域のしごと作りや地方経済の生産性の向上、それに国の機関の地方への移転などに、引き続き取り組むとともに、地域の特性に応じた戦略を強化し、これに対応する政策メニューを整備するとしています。
また、「地方創生は国による全国一律の取り組みではなく、地域ごとに異なる資源を、地方みずからが生かす取り組みだ」として、国は情報、人材、財政の「地方創生版3本の矢」で伴走的な支援を続けるとしています。