鳥巣清典の時事コラム1604「サミット討議で首相『リーマンショック前と似た状況』」 | 絶対に受けたい授業「国家財政破綻」

鳥巣清典の時事コラム1604「サミット討議で首相『リーマンショック前と似た状況』」

サミット討議で首相「リーマンショック前と似た状況」

5月26日NHK

 安倍総理大臣はG7伊勢志摩サミットで、世界経済の現状について、リーマンショックの前と似た状況にあるという考えを示しました。安倍総理大臣は、これまでリーマンショック級の出来事があれば、消費税率の引き上げを延期する可能性があるという認識を示しており、今後、引き上げ延期の見方がさらに強まることも予想されます。

 G7サミット=主要7か国の首脳会議「伊勢志摩サミット」は、三重県志摩市の賢島で開幕し、各国の首脳は午後2時前から昼食をとりながら、世界経済の持続的な成長に向けた貢献策などを巡る、最初の討議に臨みました。
 この中で
安倍総理大臣は、IMF=国際通貨基金のデータなどを基にまとめた資料を示し、食料や素材など世界の商品価格が2014年以降、およそ55%下落し、2008年のリーマンショックの前後の下落幅と同じになったことや、去年、新興国への資金流入がリーマンショック後に初めてマイナスになったことなどを指摘しました。
 そして、安倍総理大臣は「リーマンショック直前に北海道洞爺湖サミットが行われたが、危機の発生を防ぐことができなかった。その轍(てつ)は踏みたくない。世界経済はまさに分岐点にあり、政策的対応を誤ると危機に陥るリスクがあることは認識する必要がある」と述べ、世界経済を回復軌道に戻すため、G7の政策協調を呼びかけました。
 そして、討議では世界経済の持続的な成長に向けて、機動的に財政戦略を実施し、構造改革を果断に進める重要性で一致しました。
 また、世界経済の現状認識についてもおおむね意見は一致したものの、一部の首脳から、「危機という表現は強すぎるのではないか」という指摘が出され、首脳宣言の文言調整を行うことになりました。
 一方、政府関係者によりますと、26日の討議の中では、来年4月の消費税率の引き上げに関する議論はなかったということです。
 消費税率の引き上げを巡って安倍総理大臣は、リーマンショックや大震災級の影響のある出来事が起こらないかぎり、予定どおり引き上げる方針を示しつつ、今回のサミットの討議の結果を踏まえて適切に判断する考えを示しています。こうしたなか、安倍総理大臣が世界経済の現状について、リーマンショックの前と似た状況にあるという考えを示したことから、今後、引き上げ延期の見方がさらに強まることも予想されます。

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PS①

 夜の『報道ステーション』は「安倍首相の提案に各国は驚き呆れていた」と報告。財政規律を重んじるドイツ、イギリスのマスコミも「英独は財政出動をしないだろう」と答えていました。解説の朝日新聞編集委員の原真人氏は「財政破綻をしようかという国の首相が財政出動なんて・・」との非難口調は変わりませんでした。

PS②
 
 私も「金融緩和に続いて今度は、財政出動か・・」という複雑な感慨がよぎりました。NHKの報道にもありましたが「財政出動に関しては財政規律の重んじる英独の反対で突出できない。しかし最終的には各国の政策にまかせる事で落ち着いたーーこれでG7のお墨付きを得た」というのが政府関係者の本音のようです。
 このままでは「アベノミクスは失敗」と野党の追及を受けるのは必至。もともとギャンブルを始めているんだ、貫かせろとばかりにーーいよいよ、積極財政政策総動員に向かうのでしょうか。


PS③
 NHKは専門家に取材。
「リーマンショックというのは、物の例えの1つだと思うんですよね。経済危機という形でイメージしやすいという事で”リーマン・ショック”という言葉を使っておられるのでは。ここで対応を間違えると大変な事になるという事で、今回のG7の経済の認識もあった。それに対して各国で協調して財政政策・成長政策・金融政策をやっていこうと。こういう立場を堅持された」(三菱UFJリサーチコンサルティング 片岡剛士氏)

「事態は全く違うと思います。もしリーマンショックのような事態が内在しているという事であれば、アメリカが現在利上げを検討しているという事はあり得ません。追加財政、あるいは消費増税の先送りという事でなくて、あくまで成長戦略で潜在成長率そのものを高めていくという事だと思います」(BNPパリバ証券 河野龍太郎チーフエコノミスト)



伊勢志摩サミット 世界経済の持続的成長を討議

 26日開幕したG7伊勢志摩サミットは、焦点となる世界経済の持続的な成長について各国の首脳がまず、意見を交わし討議は終了しました。

 今回のサミットで焦点となる世界経済を巡る討議は、午後3時半すぎに終わりました。
 この中で安倍総理大臣は「世界経済は今、まさに分岐点にあり、政策的対応を誤ると危機に陥るリスクがあることは認識しておかなければならない」という考えを示し、G7の結束を呼びかけたとみられます。
 会議では中国経済の減速や、その影響を受けた新興国や資源国の成長の鈍化といったリスクにG7がどう対応すべきか討議し、27日の首脳宣言で財政出動をはじめとした政策協調で力強いメッセージを打ち出せるのか注目されます。
 G7伊勢志摩サミット、世界経済に続く議題は「貿易」で、この中では貿易自由化の推進のほか、中国で過剰に生産された鉄鋼製品などが各国の産業に悪影響を及ぼしている問題などを巡り、意見が交わされるとみられます。