五十嵐元財務副大臣インタビュー⑮「財政再建、経済活性化、売るー政策総動員の時代に」 | 絶対に受けたい授業「国家財政破綻」

五十嵐元財務副大臣インタビュー⑮「財政再建、経済活性化、売るー政策総動員の時代に」

 五十嵐文彦元財務副大臣インタビュー最終回。
ーー今、何が起きているのか? これから何が起きようとしているのか?--⑮

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財政再建、経済活性化、売るー政策総動員の時代に

五十嵐
 増税できる人は増税する。もう相続税とかはやりましたけど。まだ、いくらかは残っている部分はある。それから新しい内部留保の召し上げ方とか、いろいろ手はあると思います。売りとばせるものは、もっと売り飛ばす。1つの手段では難しいと思います。だから経済の全体を活性化させるという事も、もっともっと考えなきゃいけない。
 今まで通りの株式会社ばっかりではなくて、例えばNPОといったものをどう1つの経済の勢力として大きくさせるかとか。そういう発想も持たなきゃいけないと思います。
鳥巣
 5年前にお話を聞いた時に、いろんなアイデアを持っていらした。何か実現できたものがありましたですか。
五十嵐
 例えば認定NPОなんかも全然増えないし、もう少しいい調子で増えるかといえば、まだ1000にも達していない。NPО全体の数もそんなに増えてないですよね。むしろ絶対数は減ってますよ。安倍さんが言うように順調に進んでいるようには見えない。
 例えば経済特区にしたって、目に見えて機能しているようには見えない。
鳥巣
 ま、観光ぐらいですかね。目立っているのは。
五十嵐
 観光は良いんですが、なかなか政府の手柄とは言い難い。
鳥巣
 何かを成長させるとか、あまり夢を見ない方が良い。とにかく財政再建ということで厳しくやっていかないと駄目だという方たちもいる。
五十嵐
 だから政策的に取れる政策的手段はみんな採らなくてはいけなくなってきていると思うんです。経済の活性化も、発想も改めて。既存の大企業を儲けさせるためだけという事ではなくて。安倍さんも少し努力はしましたけど。大企業の儲けを下の企業に少し分けさせないと経済全体も底上げにならない。
 日本は中小企業が多い。中小企業の労働者がたくさんいる訳で、その人たちの給与を上げていかないと経済膨らまない訳ですよ。数が多いんですから。だから一部の上層部の企業の使わないおカネの利益だけ増やしてもしょうがない。
 日銀のマネーがただ出ているだけでなくて。その循環スピードが速まらないといけないので。うまくやれば最低賃金もーー地方の最低賃金は相当に低いですからーー600何拾円のところがありますからね。そういう所の最低賃金を引き上げたりですね。それでいて非正規雇用ばかり増えちゃいけない。正規雇用を増やすようなやり方もーー竹中さんは急にやって非正規をわざと増やした訳ですからーーその逆だって出来る訳です。

国際競争力を高めようと人件費を必要以上に下げ過ぎた


鳥巣
 今また「同一労働同一賃金」が出て来てますけど。これは先生はどういうふうに。
五十嵐
 これは他所の国では常識な訳です。同一賃金同一労働がこんなに守られていない中で非正規雇用を推進するような政策ばっかりを取ったのは全くの間違いですから。これはもっと力を入れるべきです。
 それから派遣事業者に対する規制をきちんとしないと結構有名企業がーー物件費になりますけど。結構出しているんですけども、それを派遣業者がピンハネ率が高くってですね。これまた社会主義的だと言われるかもしれないけど、それを押さえないと、あれが人件費課税ですからーー消費税がね。だから人件費を抑えようとして非正規雇用に逆に流される。雇用政策を見直した方が良いと思います。
 人件費を必要以上に下げ過ぎた。それで日本の国際競争力を高めようという政策が行き過ぎたんだと私は思います。中国と日本で人件費率がどれだけ違うか。中国に進出したって、たしか7%ぐらいなんですよね。7%くらいなら他のところでカバーが出来る。

日本の購買力を下げてしまったーーそれがデフレの原因


 その企業にとっては良いかもしれないけど。日本全体の結果としては購買力を下げてしまった。日本の経済の成長率を、需要を引き下げてしまった。それがデフレと言われるものの原因だと思います。そういう意味じゃ、安倍さんがある程度認識が正しいのは、強制力のない経団連との関係だけで経営者に給与を引き上げて欲しいとお願いをしたと。それに対し、民主党政権に戻っちゃ大変だと思った経済界が応えたーーという形で少し給与は上がりましたけど。その上がり方は、まだ十分ではないというのが私の認識です。
 もう少し、初任給から上げてやらないといけない。過度に下がった分が戻ってない。若い人の生活が苦しくなった。という事が、かなり影響している。
 で年金世代ーーシルバー世代との格差が拡大をしている。働いていないのに、若い人よりはるかに高い年金ーー総額でみると貰っている人たちがかなりいる。私は低いですけど(苦笑)。
鳥巣
 ここらへんは触れないタブーなところがあるんでしょ?
五十嵐
 既得権をなかなかはずせない。でも、いくらかははずしてきた。例えば、老齢者控除。年金控除。これを少し低くしましたけど。まだしても良いと思いますね。高齢者の課税最低限が高くなり過ぎていると思います。
鳥巣
 例えば入院して手術をしましたと。高度治療を受けました。100万円の治療を受けても10万円くらいの支払いで済む。あれは、公明党さんのアレなんですか?
五十嵐
 そうですね。あの・・医療の面は合理化の余地が結構たくさんあるんです。明らかにおかしいレセプトについては、例えば薬剤師の方から「このお医者さんの薬、出し過ぎ」だとかいうのは、もっとチェック出来るはずなんです。
鳥巣
 薬剤師さんの方から。
五十嵐
 薬の専門家は薬剤師ですから。実は医者は薬剤の専門家じゃないんです。チェックが効くはずなんです。だって複数を見ていれば、同じような症状でこっちが高すぎるとか分かるはず。だから、もっとチェックが出来るはずだと思います。
 それから、過剰診療。まだ、ありますし。医療費については、まだあると思います。今のデーターは分からないですけど、関西のお医者さんの方が大体高くなっている。関東と関西で食い違いがそんなにある訳ないですから。関西のお医者さんが儲けすぎている部分はあると思います。


大学で鋭い感性と柔軟な思考力を持つ若者を育てたい


鳥巣
 だいぶ時間が経ちました。ところで先生は今何を大学で教えていらっしゃるんですか?
五十嵐
 私は今武蔵野学院大学客員教授として
、1つはNPОと、1つは日本の政治の仕組みを教えてます。
鳥巣
 いま若い方を教えてらして。僕も20歳代の息子がいて。先生にも娘さんがいらっしゃるというなかで。やっぱり・・ちらっとそういうところも考えるんですよ。後の世代にとってどうか・・という。
五十嵐
 そうですね。私はそれしかない。今は、若い人たちを健全に育てようと。どうにでも考えられる柔軟な思考力と、それから”こうとしか感じられない”という鋭い感性と両方持てるようにしてあげたいな・・という事ですよ。

鳥巣 
 りっぱな学生さんを育てて下さい。本日は、ありがとうございました。
 


PS
 直近で、安倍首相の「消費税再増税先送り」決定が発表されました。五十嵐氏に追加のコメントを以下に頂きました。


安倍政権は
「財務省の嫌がる事をやりたい」
「目の前の参院選を勝ちたい」だけ
 無責任・モラルハザードそのものです


五十嵐
 
案の定、安倍さんはサミットで、「今はリーマン・ショック並みに経済が悪い」という強引な統計づくりをし、他の首脳たちや外国メディアから呆れられました。高橋洋一さん流のやり方でしたね。そればかりでなく、サミットを内政の手段として利用し過ぎたこと、国際公約である財政再建を軽視して後代へのつけ回しをしようとしていることが批判されたんだと思います。そして、自分の任期中は消費税10%への引き上げを行わないと公式表明しました。アベノミクスが上手く行っていると言いながらの再々延期ですから、「引き上げられる時期は永遠にない」「過去の引き上げ決定は間違っていた」と言っているのと同じ。それでいて異次元の金融緩和の出口シナリオも具体的財政再建シナリオもないのですから、まさに無責任、モラル・ハザードそのものです。将来の国民のことを考えず、ただ「財務省が嫌がることをやりたい」「目の前の参議院選を勝ちたい」という感情に駆られただけですね。



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PS
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