五十嵐元財務副大臣インタビュー⑭「四海波静かなら『財政破綻』がすぐに来ることはない」 | 絶対に受けたい授業「国家財政破綻」

五十嵐元財務副大臣インタビュー⑭「四海波静かなら『財政破綻』がすぐに来ることはない」

 五十嵐文彦・元財務副大臣インタビュー。
ーー今、何が起きているのか? これから何が起きようとしているのか?--⑭

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「日銀引き受け」なんてしたら歯止めが効かない


鳥巣
 2020年というのが気になります・・。片山虎之助さんが質問に立っている国会中継を見たんですね。
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 その時に「プライマリー・バランスを黒字化するのは到底無理だ」とおっしゃった。で(あ、こういうベテランの人が”無理だ”と言っているくらいだから、相当に無理なんだろうと)と。半減は大丈夫。何とかなるけど。
 さらには元大蔵省出身で維新の党ーー現在落選中の松田まなぶ氏もネットで「相当に難しい」と。

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五十嵐
 難しいと思いますよ。
鳥巣
 松田さんのメニューには、形は今と同じような、「日銀引き受け」というのも出てきている。だから相当難しいんだろうなあと。
五十嵐
 ”直接引き受け”なんてしたら歯止めが効かないですよ。
鳥巣
 ギャップは、6兆円余り。消費税に換算すると、ざっくりといって3%余り。仮に来年消費税率を10%にして、2020年までにもう1回やるかやらないか・・。どうですか、政治的判断としては。
五十嵐
 それは政治的には極めて難しい。一方で法人税の再引き下げを言っちゃってるじゃないですか。
鳥巣
 あれがねえ。
五十嵐
 企業の内部留保がこんなに溜まっているのに。そりゃあ・・。
鳥巣
 あれは誰が言ってるんですかねえ。
鳥巣
 安倍さんじゃ・・。
五十嵐
 いや浜田宏一さんとかでしょう。だと思いますよ。新自由主義だから。

「パンクさせちゃえ」なんて無責任な意見を口にする人も


鳥巣
 困ったなあ。ただ、じゃ何にも考えていないかとなると、例えば竹中(平蔵)さんなんかが何か月か前に。今後を考えた時に年金なんかも、例えば中曽根さんなんかが年金を辞退するような動きがないとどうにもならない・・みたいな事をちらっとアドバルーン的に。
 
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 お、いよいよ、そういう議題も出て来るのかなと思って。今はまた引っ込んでるんですけどね。
 どういう方法がいいのか。一時の韓国みたいにIMFが入ってきたり、ネバダレポートもありましたけど。

【IMF】
 国際通貨基金ーー国際金融、並びに、為替相場の安定化を目的として設立された国際連合の専門機関。

【ネバダレポート】
 2002年の国会で、民主党の五十嵐文彦氏がIMFが作成したともいわれるネバダ・レポートをもとに小泉内閣閣僚の財政再建姿勢を追及。このレポートでは、日本がIMF管理下に入れば、公務員とその給与・年金大幅カット、退職金ゼロ、国債利払い停止、消費税大幅アップなどが強いられるといった内容だった。

鳥巣
 そこまで行けば、何とかかんとかやるんでしょうけど。その前がですね。平静の時にやるというのが難しいですよね。


次の下げが早く来た時にはフローが足りない!


五十嵐
 そうですね。無責任なのは、それこそパンクさせちゃえという。ショック療法の方がいいぞというのが出てくる。それは無責任ですよ。
鳥巣
 足し算引き算の面で懸念材料を申し上げたんですけど。その中で仮に、ストック面で借金が上回ってしまった。キャッシュフローの方も・・。あれば、そっちの方から持って来ればいいんですけど、そっちの方も無くなっていると。年金は(政府に)毎年入ってくるんですけどね。
五十嵐
 それが・・たまたま今、それほど悪くない。経済が拡大期。いつまた下がるか分からないので、次の下げが早く来た時はもうフローが足りないですよね。そこだと思うんです。それが何が引き金になるか分からない。中国リスク、欧州のリスク、日本の災害リスク・・色々あって。株は上がりそうでなかなか上がらないですね。一時は年末2万円とか言っていたのが、もう1万7000円を割って。で株価ばかりを気にし過ぎですよねーー安倍政権は。
「民主党の時より株価が上がった」という事ばかり言ってる。
鳥巣
 いや、ただこの前財務省の中でもそういう話が出たんですけども。株価の話というのは結局、この1700兆円余りとリンクしていくとですね。これはさておいて関係ないんだーーという事であれば別なんですけど。
五十嵐
 ある程度上がらないと、いま株への比重を高めていますから。年金基金とかですねえ。上がらないと、逆に損失が出たりすると大変になっちゃうんですよね。
鳥巣
 だから今は両睨みでやってってるというのが正直なところじゃないでしょうか。
五十嵐
 でも無理やり株を買い支えるような事をすると危険ですよね。年金のマネーの出動というのは見て取れる。
鳥巣
 老婆心なんですかね。タイトロープ・・。

四海波静かなら「財政破綻」がすぐに来ることはない


五十嵐
 「すぐに来る」という事はないと思いますけど。要するに、四海波静かならね。その数字がクロスしたからといって、すぐに何かが起きるということはない。いうふうに思いますけども。いつ何があってもおかしくないーーという状況にはなると思います。リスクが高まっていることは確か。
 ということと、何か起きた時には、ちょっとそれはヤバいよねという話。とにかく中国経済に急な変化が来たりすると。それから、北朝鮮の政権がヘンな形で崩壊すると日本に逆に悪影響を与えますよね。うまく徐々にベトナムみたいに民主化、資本主義化してくれるとほんとは有難いですけど。逆の方向でしょう。どっちかが壊れるまでむしろ瀬戸際政策を強化している訳ですから。もし政権が崩壊して、内部で戦いが起きて武装難民が日本に押し寄せて来たりという事になった時は逆にその事が日本経済全体への世界の見る目を変えて日本が危なくなるということがあり得る。
 なぜならば日本は北朝鮮と平和条約を結ぶ前ですから、戦後補償の締結を結んでいない。それを世界が知っていますから、日本が近くの大国で戦後補償が済んでいないから「面倒をみろ」と言われた時に少なく見積もって3兆円くらいは出せと言われる。いっぺんに。もし北朝鮮内部で混乱が起きた時には倍の6兆円出せという圧力が世界からかかるかもしれない。その6兆円が日本は出せるかという話が出てくる可能性がある訳ですよ。
 だから、それもあり得ない訳ではないリスクの1つ。

 東日本大震災が20数兆円。それを臨時所得増税でまかなった。それも痛みになって残ってて、まだ臨時増税も残っている。
鳥巣
 前回の消費税増税で景気が中折れしたという事で。ま。政府側は言っている訳ですね。


消費税10%でも2020年P・B黒字化達成は難しい


鳥巣
 それで消費税・・。先生は、次の消費税についてはどういうご意見ですか?
五十嵐
 私は特に主張はしてないですよ。当面10%に計画通りすべき。
鳥巣
 予定通り実行して、消費税は10%にすべきだと。
五十嵐
 だと思ってますね。
鳥巣
 それは、そうした方が・・。
五十嵐
 いずれ来る事が分かっているのだから、半年、1年延ばしたからといってどんなよい事があるの?という話。
鳥巣
 ただ、しつこいようですけど2020年--例えばそこまでは先生がおっしゃったように消費税を10%に上げるとしますね。だけど2020年までに15%というのは・・。
五十嵐
 政治的に難しい。
鳥巣
 ほほ・・。
五十嵐
 それでしばらく10%にして経済状況を見なきゃいけないですね。そこは乱暴な計画は立てられないですよ。様子を見て、次の計画をどう立てるかでしょう。
鳥巣
 しかし果たしてそれでプライマリー・バランスの黒字化って達成可能なんですか?
五十嵐
 難しいと思います。
鳥巣
 難しい!? あ、そうですか(苦笑)


対策=増税・新内部留保への課税・経済全体の活性化・・


五十嵐
 う・・ん。
鳥巣
 え、というと、回答は何なんですか?
五十嵐
 いや、いろんな手を使わなきゃいけないと思いますよ。増税できる人は増税する。もう相続税とかはやりましたけど。まだ、いくらかは残っている部分はある。それから新しい内部留保の召し上げ方とか、いろいろ手はあると思います。売りとばせるものは、もっと売り飛ばす。1つの手段では難しいと思います。だから経済の全体を活性化させるという事も、もっともっと考えなきゃいけない。
 今まで通りの株式会社ばっかりではなくて、例えばNPОといったものをどう1つの経済の勢力として大きくさせるかとか。そういう発想も持たなきゃいけないと思います。
鳥巣
 5年前にお話を聞いた時に、いろんなアイデアを持っていらした。何か実現できたものは。
五十嵐
 例えば認定NPОなんかも全然増えないし、もう少しいい調子で増えるかといえば、まだ1000にも達していない。NPО全体の数もそんなに増えてないですよね。むしろ絶対数は減ってますよ。安倍さんが言うように順調に進んでいるようには見えない。
 例えば経済特区にしたって、目に見えて機能しているようには見えない。


対策=最低賃金の引き上げ・正規雇用を増やしていく・・


鳥巣
 ま、観光ぐらいですかね。目立っているのは。
五十嵐
 観光は良いんですが、なかなか政府の手柄とは言い難い。
鳥巣
 何かを成長させるとか、あまり夢を見ない方が良い。とにかく財政再建ということで厳しくやっていかないと駄目だという方たちもいる。
五十嵐
 だから政策的に取れる政策的手段はみんな採らなくてはいけなくなってきていると思うんです。経済の活性化も、発想も改めて。既存の大企業を儲けさせるためだけという事ではなくて。安倍さんも少し努力はしましたけど。大企業の儲けを下の企業に少し分けさせないと経済全体も底上げにならない。日本は中小企業が多い。中小企業の労働者がたくさんいる訳で、その人たちの給与を上げていかないと経済は膨らまない。数が多いんですから。だから一部の上層部の企業の使わないおカネの利益だけ増やしてもしょうがない。
 日銀のマネーがただ出ているだけでなくて。その循環スピードが速まらないといけないので。うまくやれば最低賃金もーー地方の最低賃金は相当に低いですからーー600何拾円のところがありますからね。そういう所の最低賃金を引き上げたりですね。それでいて非正規雇用ばかり増えちゃいけない訳ですから。正規雇用を増やすようなやり方もーー竹中さんは急にやって非正規をわざと増やした訳ですからーーその逆だって出来る訳です。


対策=「同一労働同一賃金」にはもっと力を入れるべき


鳥巣
 今また「同一労働同一賃金」が出て来てますけど。これは先生はどういうふうに。
五十嵐
 これは他所の国では常識な訳です。同一賃金同一労働がこんなに守られていない中で非正規雇用を推進するような政策ばっかりを取ったのは全くの間違いですから。これはもっと力を入れるべきです。
 それから派遣事業者に対する規制をきちんとしないと結構有名企業がーー物件費になりますけど。派遣先の企業自体は結構支出しているのですが、それを派遣業者がピンハネ率が高くってですね。これまた社会主義的だと言われるかもしれないけど、それを押さえないと、あれが人件費課税ですからーー消費税がね。だから人件費を抑えようとして非正規雇用に逆に流される。雇用政策を見直した方が良いと思います。
 人件費を必要以上に下げ過ぎた。それで日本の国際競争力を高めようという政策が行き過ぎたんだと私は思います。中国と日本で人件費率がどれだけ違うか。中国に進出したって、たしか7%ぐらい。7%くらいなら他のところでカバーが出来るんです。
 その企業にとっては良いかもしれないけど。日本全体の結果としては購買力を下げてしまった。日本の経済の成長率を、需要を引き下げてしまった。それがデフレと言われるものの原因だと思います。そういう意味じゃ、安倍さんがある程度認識が正しいのは、強制力のない経団連との関係だけで経営者に給与を引き上げて欲しいとお願いをしたと。それに対し、民主党政権に戻っちゃ大変だと思った経済界が応えた。という形で少し給与は上がりましたけど。その上がり方は、まだ十分ではないというのが私の認識です。
 もう少し、初任給から上げてやらないといけない。過度に下がった分が戻ってない。若い人の生活が苦しくなった。という事が、かなり影響している。


対策=シルバー世代との格差是正は課税最低限を低く


五十嵐
 で年金世代ーーシルバー世代との格差が拡大をしている。働いていないのに、若い人よりはるかに高い年金ーー総額でみると貰っている人たちがかなりいる。私は低いですけど(苦笑)。
鳥巣
 ここらへんは触れないタブーなところがあるんでしょ?
五十嵐
 既得権をなかなかはずせない。でも、いくらかははずしてきた。例えば、老齢者控除。年金控除。これを少し低くしましたけど。まだしても良いと思います。高齢者の課税最低限が高くなり過ぎていると思いますね。


対策=薬剤師の協力でお薬の出し過ぎ&過剰診療チェック


鳥巣
 例えば入院して手術をしましたと。高度治療を受けました。100万円の治療を受けても10万円くらいの支払いで済む。あれは、公明党さんのアレなんですか?
五十嵐
 そうですね。あの・・医療の面は合理化の余地が結構たくさんあるんです。明らかにおかしいレセプトについては、例えば薬剤師の方から「このお医者さんの薬、出し過ぎ」だとかいうのは、もっとチェック出来るはずなんです。
鳥巣
 薬剤師さんの方から。
五十嵐
 薬の専門家は薬剤師ですから。実は医者は薬剤の専門家じゃないんです。チェックが効くはずなんです。だって複数を見ていれば、同じような症状でこっちが高すぎるとか分かる。だから、もっとチェックが出来るはずだと思います。
 それから、過剰診療。まだ、ありますし。医療費については、まだあると思います。今のデーターは分からないですけど、関西のお医者さんの方が大体高くなっている。関東と関西で食い違いがそんなにある訳ないですから。関西のお医者さんが儲けすぎている部分はあると思います。

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PS
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