鳥巣清典の時事コラム1600「財務省 批判覚悟で長期試算を初公表。将来的に消費税34%も」 | 絶対に受けたい授業「国家財政破綻」

鳥巣清典の時事コラム1600「財務省 批判覚悟で長期試算を初公表。将来的に消費税34%も」


 以下の記事は、❶が2014年に財務省が発表した「財政の長期試算」。❷以降は、現実政治の状況です。


財務省 なぜ批判覚悟で財政の長期試算を初公表? 将来的に消費税率34%との試算も

(文=小黒一正/法政大学経済学部准教授)
 2014年5月13日
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 欧米等では、2060年程度までの財政の長期試算を公表していたが、日本では23年度程度までしか公表していなかった。このような状況の中、今年4月28日開催の財務省・財政制度等審議会にて、財務省(正確には審議会メンバーの起草検討委員)が「財政の長期試算」(概要:http://goo.gl/NnDdUW、資料:http://goo.gl/SSt2Rq)を初めて公表し、一部の専門家の間やメディアで話題となっている。

 上記の資料では成長率や金利のシナリオが異なる場合の試算結果を公表しているが、例えば、「実質成長率1.0%」「名目成長率2.0%」「金利3.7%」のケースで、現在224.3%(13年)である公債等残高(対GDP)を60年度に100%まで低下させるケースでは、21年度以降に必要とされる恒久的な収支改善幅(対GDP比)は11.67%になるとしている。

「11.67%」という数値を聞いてもピンとこないが、GDPを現在の値に近い500兆円で換算すると、歳出削減や増税で約60兆円の収支改善が必要となる。消費税率1%の引き上げで増える税収は約2.5兆円であるから、60兆円は消費税率24%分の税収に相当する。この収支改善幅は、消費税率がすでに10%まで引き上がっていることを前提にしているため、もし歳出削減(社会保障の抑制が中心)が不十分な場合、消費税率は34%にまで引き上げる必要があることを示唆する。つまり、財政を安定化させるには、今回の増税をはるかに上回る、大きな痛みを伴う改革が必要となる。

●公債等残高(対GDP)は約500%との試算も

 このような数値を聞くと、多くの国民にとって、もはや現実的な世界の話として受け止めることは難しいだろう。しかし、このような事実は、内閣府が今年1月20日に公表した「中長期の経済財政に関する試算」(以下、「中長期試算」という)の延伸から簡単に確認できる。

内閣府(2014)「中長期の経済財政に関する試算」等を参考に筆者作成
 上記図表には、赤線と黒線を1つのグループとして、上から順番のグループ毎に、(1)国・地方の基礎的財政収支(対GDP、左目盛)、(2)国・地方の財政収支(対GDP、左目盛)、(3)国・地方の公債等残高(対GDP、右目盛)の実績・予測を描いている。このうち、黒線は内閣府の「中長期試算」(参考ケース)、赤線は参考ケースを延伸した筆者の簡易推計である。また、財政審の長期試算と同様、黒線(内閣府の予測)も赤線(筆者の予測)も、推計の前提として、14年4月や15年10月の消費税率引き上げを織り込んでいる。このため、15年度頃まで、国・地方の基礎的財政収支や財政収支はある程度は改善する。

だが問題は、15年度以降の財政の姿である。25年度以降は「団塊の世代」のすべてが75歳以上の後期高齢者となる。その結果、2000年時には900万人に過ぎなかった後期高齢者(75歳以上)は25年には2000万人に倍増し、社会保障費の急増が予測されている。現行制度のままでは、特に医療費や介護費がこの頃から急増していく。

 このような影響を受けて、筆者の長期推計(簡易試算)では、14年度・15年度の消費増税を実施しても、50年度の国・地方の基礎的財政収支(対GDP)は7.9%の赤字、公債等残高(対GDP)は約500%となり、財政は非常に厳しい状態になる。

 その際、50年度の基礎的財政収支を均衡させるには(消費税率換算で)16%の追加増税が必要であり、それは現行8%の消費税率が26%になることを意味する。

●求められる、財政・社会保障改革への議論の深まり

 

もっとも、このような長期試算は成長率や金利の前提に依存するとともに、20年超もの期間に渡る推計の精度に対する問題もあり、試算結果の解釈は慎重かつ冷静に評価する必要があるが、現状を放置すれば財政が持続不可能であることは明らかだろう。

 このような財政の悲惨な現状を財務省は深く認識しているから、一定の批判を覚悟で、今回の長期試算を公表したのに違いない。まず、財政の深刻な状況を、財政の中期試算(例:5-10年)のみでなく、長期試算(例:50年)を含め、いろいろな角度で国民に伝達しない限り、改革の議論は深まらないからだ。

 長期試算に対する批判は、国立社会保障・人口問題研究所の「将来人口推計」などでも見られるものであり、このような試算は政策立案を行う際の「ツール」に過ぎず、むしろ重要なのは政治が「財政の長期試算」を財政運営や行財政改革でどう活用するかである。今回の公表を契機に、財政・社会保障改革の方向性について徐々に議論が深まることが望まれる。

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消費税10%再延期へ 安倍首相が方針固める 5月に正式表明
産経ニュース3月28日

安倍晋三首相が平成29年4月に予定していた消費税率10%への引き上げを見送る方針を固めたことが27日、分かった。世界経済が減速・不安定化する中で再増税すれば国内の景気が冷え込み、政権が最重要課題に掲げるデフレ脱却が困難になるとの判断からだ。5月18日に発表予定の28年1~3月期の国内総生産(GDP)速報値などを見極めて最終判断し、同26、27日の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の前後に正式に表明するとみられる。

 首相は26年11月、消費税10%への増税を27年10月から29年4月に延期することを決めた上で衆院を解散した。今夏の参院選でも野党は再増税の是非の争点化を狙っており、首相はこの問題を早期に決着させる意図があったとみられる。

 首相も出席する「国際金融経済分析会合」で、ノーベル経済学賞受賞者から再増税の凍結を求める意見が相次いだことも判断の背景にある。首相は最近、周囲に「彼らが『延期した方がいい』と言っていることには重みがある」と語った。

 年明け以降、中国経済の失速や原油安の影響で円高、株安が進んだ。国内景気はGDPの6割を占める個人消費が低迷し、政府は今月23日発表の月例経済報告で5カ月ぶりに景気判断を下方修正した。こうしたこともあり、首相は税率10%への引き上げについて「経済が失速しては元も子もなくなる」と慎重な姿勢もにじませてきた。

 一方、10%引き上げと同時に導入される軽減税率制度では税率が8%と10%の2つになり、仕入れた商品を税率ごとに区分けし税額を計算する必要がある。多くの中小・零細企業では、来年4月までに準備作業が間に合わない見通しだ。一定期間の増税延期で、飲食料品を扱う小売業者や外食産業などの事業者の混乱を最小限にする狙いもある。

PS②

”消費税率引き上げを”財政審の提言
 NHK2016年5月19日

財政制度等審議会は、来年4月の消費税率の10%への引き上げについて、今の社会保障制度を将来的に維持していく財源を確保するためにも必要だとして、予定どおりの実施を求める提言をまとめました。

財務大臣の諮問機関財政制度等審議会は、18日、今後の財政運営についての提言をまとめ、麻生副総理兼財務大臣に提出しました。
提言では、「日本の財政は公的債務がGDP=国内総生産の2倍を超えるなど、歴史的にも国際的にも類を見ない水準まで累増している」として、厳しい財政事情に警鐘を鳴らしています。
そのうえで、日銀が導入したマイナス金利政策によって国債の金利がさらに低下し、新たな借金につながる国債の発行がしやすくなっていることを踏まえ、「財政規律の緩みにつながる議論に拍車をかけている面もある」と懸念を示しています。
そして、経済成長などで想定を超えた税収が得られた場合は、巨額の債務=借金の返済に充てるべきとしたうえで、財政に対する信認を保つため、2020年度までに基礎的財政収支を黒字化する財政健全化目標は必ず達成すべきだとしています。
さらに財政審は、来年4月の消費税率の10%への引き上げについて、今の社会保障制度を将来世代にわたって持続可能なものとするためにも予定どおり実施すべきだとして、与野党などから出ている先送りの議論をけん制しています。

財政審の会長を務める立正大学の吉川洋教授は記者会見で、「消費税率の引き上げは、きちっとやるべきだ。世界経済はリーマンショック級の経済危機という状況にはなく、消費税率の引き上げを先送りするという理由が見当たらない」と述べました。

【おはよう日本】
党首討論・民進党・岡田代表・消費増税“3年後に先送りを”
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05/19(木)
 
(BS1[BSニュース])
来年4月の消費増税反対・内閣不信任案提出を検討
野党4党(民進党、共産党、社民党、生活の党)の党首が会談し、現在の経済状況をふまえ来年4月の消費税率の引き上げに反対することや、安倍内閣に対する不信任決議案を今国会に共同で提出することを検討していく方針で一致した。