五十嵐元財務副大臣インタビュー②「いちばん危ないのは利払費が20兆円を超える平成35年」 | 絶対に受けたい授業「国家財政破綻」

五十嵐元財務副大臣インタビュー②「いちばん危ないのは利払費が20兆円を超える平成35年」

 五十嵐文彦・元財務副大臣インタビュー。
ーー今、何が起きているのか? これから何が起ころうとしているのか?--②

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いちばん危ないのは利払費が20兆円を超える平成35年

五十嵐
 これが、いちばん新しい財政の資料なんですけども。いちばん危ないなと思っているのは、平成35年からーー今年もう平成28年ですから、あと7年しかないんですがーー利払費が20兆円を超えるんですよね。公債残高が1000兆円を超える。ここは、かなり衝撃的なアレになるんじゃないですかね。

【鳥巣注】
 財務省発表の資料によると「平成28年度末公債残高は約838兆円」となっています。もっとも前回の五十嵐氏の発言にあるように、いろんな借金を合計すると「現在で1300兆円余」という事ですから、7年後の平成35年にはさらに加算されることになります。


五十嵐
 年間の予算って、もうそんなに伸ばせないはずなんです。100兆円の財政規模で利払費だけで20兆円というのは、相当きつい事になるだろうと思います。
 ですから今問題なのは、2020年のプライマリーバランス均衡ができるかどうか。

【プライマリー・バランス=P・B】
 国債費関連を除いた基礎的財政収支のこと。国債の利払いと償還費を除いた歳出(一般歳出)と、国債発行収入(税収など)についての財政収支。

【プライマリー収支】
 財政収支から純利払費を除いたもの。貿易収支にサービス収支と経常移転収支を加えた値。


 
 それがなし崩し的に国際公約を破る形で行ってしまう可能性が今の自民党政権にありますから。そうなると一気に国債が跳ね上がる、暴落すると、利率が上がると、この計算では間に合わなくなってくる。

麻生財務相の財政演説は財政再建への不安を暗示


鳥巣
 今、先生はさらっとおっしゃいましたけど。私は今年2月の財務省主計局の取材では念を押して「2020年のプライマリー・バランスの黒字化というのは国際公約ですか?」と聞きました。「コミットしました」という事は明言しました。
五十嵐
 プライマリー・バランスの黒字化、赤字からの脱却というのは、いろんな所で公約化しているはずです。なのに今年の財政演説がすごく簡単なんです。去年の、1年前の麻生財務大臣の財政演説は、数年ぶりに国債費が40兆円台を割って38兆円台になったと胸を張ってる。二兎を追えているんだという実績を誇示する演説をした。今年の通常国会の財政演説は触れていないーーすごく簡単なんです。財政問題にほとんど触れていない。それは政府の財政再建に対する不安というのを暗示していると思いますけどね。

水野和夫氏が明らかにした「財政破綻をしない理由」

鳥巣
 ”財政破綻”というのを簡単に言っちゃいますと。1つは国の借金が、国民の金融資産を上回る時というのが、いつなのか? 
 もう1つはーー実は去年水野和夫さんが、お出しになった本で明らかにされてしまったんですけど。要するに国家のキャッシュフロー。「なぜ今、財政破綻しないのか、からくりはこうなんだ」と、簡単に1ページでまとめられて発表されたんですね。

 
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 それによりますと、まずフローの資金繰りに関して言えば、現在の金融機関はマネー・ストックとしてある800兆円の預金ーー多くは年金ーーが年3%、約24兆円ずつ増えている。さらに企業は、1年間の資金余剰が23・3兆円。この家計部門と企業部門を合せた資金余剰の48兆円により、毎年40兆円発行される国債が消化できているのだと。
 このように明らかにされた。ただし、日銀の試算では、2017年には預金の増加が終わると予測されていて、そうなると外国人に国債を買ってもらわなければならなくなる。
五十嵐
 金融資産と負債の差がなくなったからといって、直ちにパニック、破綻が来るという訳ではないですよね。ただ1つの指標として世界から注目を浴びる可能性がある。だけど、それよりも僕はむしろ懸念をするのは、金融経済が大きくなり過ぎている中にあってイギリスが脱EUに動き始めている。イギリスは今でも金融のセンターで、アメリカがシティに追随しています。そのイギリスが中国への傾斜を深めている。明らかに中国に接近している。
 その中国経済がバブルが終わって、人口ボーナスが終わって、そして経済の数字を力によって整えてきたのが整えきれなくなった。つまり、リーマンショックのような中国ショックが起きる可能性がある。その時に中国のマーケットに頼っている姿が高まっているものですから、中国ショックが今まで以上に大きくなる可能性がある。
 日本そのものは、中国に進出していた企業が戻ってきたりしているのですが、金融的には非常に危ない状況が近づいている。中国ショックが起きた時に金融収縮が世界的な規模で起きる可能性がある。その時は、日本が非常に苦しい。まさに金融に余裕がない。国債比率が高いという事で危ない場面に遭遇するリスクが非常に高くなっている。
 その事の方が数字を積み上げた金融の差云々よりもリスク的には大きいんじゃないかと私は考えます。

いちばん怖いのは「通貨安・債券安・株安」のトリプル安

鳥巣
 そういう事が仮に起こったとします。起こった時は、日本にどういう事が起こりますか?
五十嵐
 金融収縮が起きた時はーー今までは不美人競争で比較的日本円、日本国債が安全資産だという事で実は買われていた。だけど本格的な金融収縮が起きた時には、例えばアラブのおカネも「日本国債も危ないのでは」と引き上げられる。ヨーロッパも、ギリシアを未だに抱えて負担になっているので、比較的安全な日本国債を買っていた。でも、それどころじゃないやと言って、日本国債も手放すという状態になりやすい。
 その時には、日本国債も暴落が起きて、利率が高くなって、とてもじゃないけど計算した10数兆円や20兆円の公債費では間に合わなくなってくる。そうすると日本の場合は、たちまちのうちにーー福祉や年金、医療費等をすぐに減らす訳にはいきませんからーーそうすると借金がまた増える、あるいは借金が出来なくなる可能性がある。
 これは、ある意味で「株安・債券安」の同時発生。今までは株が下がると日本国債が買われるという形でバランスが取れていたのが、両方とも安くなるという事が起きると今度は手がつけられなくなる。その時は何が起きるかというと、物価の高騰が起きると思います。貧しい人たちは暮らしていけなくなる。
鳥巣
 僕が何故このテーマをやっているかといえば、そこがいちばん怖いから。
五十嵐
 いちばん怖いのは、「3安」ですよ。要するに「通貨安・債券安・株安」。この3安が同時に来た時には、経済理論的には手の打ちようがない。


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