財務省主計局インタビュー41「P.Bが黒字化しても国債費(利払等+債務償還費)は残っていく 」 | 絶対に受けたい授業「国家財政破綻」

財務省主計局インタビュー41「P.Bが黒字化しても国債費(利払等+債務償還費)は残っていく 」

 財務省主計局インタビュー⑦

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P.Bが黒字化しても国債費(利払等+債務償還費)は残っていく

 

鳥巣

 プライマリー・バランスーつまり基礎的財政収支の対象経費を挙げて下さい。

 

財務省

 平成28年度の一般会計総額で言いますと96兆7218億円。うちプライマリー・バランスの対象となるのは、社会保障(31兆9738億円)+地方交付税交付金等(15兆2811億円)+公共事業(5兆9737億円)+文教及び科学振興(5兆3580億円)+防衛(5兆541億円)+その他(9兆4690億円)=計73兆1097億円。

 プライマリー・バランスの対象とならないのは、国債費23兆6121億円(利払費等9兆8961億円+債務償還費13兆7161億円)。

 プライマリー・バランスとは、歳出のうち国債費を除いたものになります。ですから、プライマリー・バランスが黒字化したからといって「万歳」にはならない。国の一般会計では利払費等や債務償還費が残っていきます。

鳥巣

そうなると平成28年度の一般会計歳入総額が96兆7218億円ですから、プライマリー・バランス対象経費の73兆1097億円を差し引くと23兆6121億円。実際は内閣府が試算した、2020年のプライマリー・バランスのギャップは6・5兆円。

 財務省
一般会計歳入総額は確かに96兆7218億円ですが、このうち公債金が34兆4320億円あります。

よって、プライマリー・バランス対象経費である73兆1097億円から62兆2898億円(96兆7218億円-34兆4320億円)を引いた10兆8199億円がギャップになります。


 

<2010年P・B黒字化は国際公約なのですか?>

 

 

 

鳥巣

 「2020年のプライマリー・バランスの黒字化」は、国際公約なのですか?

財務省

 サンクトベルクのサミットで「2020年のプライマリー・バランスを達成した後も縮減を目指します」というアクションプラン。コミットしました。

 

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【G20トロント・サミット(2013年9月5日、6日)】

○首脳宣言(仮訳)

 先進国において財政の持続可能性を確保しつつ、より強固で持続可能な回復を実現することは、引き続き極めて困難である。合意に沿って、全ての先進国は、信頼に足る意欲的な各国個別の中期的な財政戦略を策定した。これらの戦略は、債務対GDP比を持続可能な道筋に乗せつつ、経済成長と雇用創出を支えるため、短期的な経済状況を勘案し、機動的に実施される。・・

 

○アクションプラン(仮訳)

 合意に沿って、全ての先進国は、中期にわたり債務対GDP比を安定化または縮減させることに向けられた戦略を提示した。・・日本は、2020年度までにプライマリー・バランスの黒字を達成した後、政府債務対GDP比を安定的に縮減することを目指す。・・・

 

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<2010年「2015年に国内で国債を消化する限界」と>

 

鳥巣

 2010年ーー5年前ーーに取材していたときに「2015年には国内で国債を消化する限界がくる」と言われた。理由として、当時国民の金融資産は1400兆円余り。うち300~400兆円は住宅ローンなどの借金で、金融機関が国債を買うのに振り向けられる純金融資産は1000兆円余り。国の借金額がそれを上回り、国内で国債を消化できなくなるという事だった。

財務省

 国債残高が累増し続けているにもかかわらず、国債金利は低下傾向にあり、多額の国債を低金利で発行できました。しかし国債消化を支えてきた家計金融資産は、貯蓄率低下により伸び悩み、家計金融資産を上回る勢いで一般政府総債務が伸びています。政府債務残高が引き続き増加していけば、国債の安定的な消化が困難になるおそれがあります。

鳥巣

 2010年当時、与謝野馨・元財務相は「国債、地方債を含めると、あと100兆円しかないんだよ」と述べた。でも5年経った2016年の今は、国民の総金融資産は1700兆円余りまで増えている。2010年当時より300兆円余り増えた。そのぶん計算上は、国内で国債を消化ーー金融機関が預金者の預金を活用して国債を買うことができるーー年数が伸びたことになる。