鳥巣清典の時事コラム1457「三浦瑠璃氏『国連軍なんてスターウオーズの世界で危険』」 | 絶対に受けたい授業「国家財政破綻」

鳥巣清典の時事コラム1457「三浦瑠璃氏『国連軍なんてスターウオーズの世界で危険』」

 『朝まで生テレビ』(テレビ朝日系=9月26日)のテーマは「激論 若者と民主主義」。その後半で「戦争論」となった。


日本国民の大半はアメリカと同盟したい。(三浦氏)


三浦 瑠麗(国際政治学者)
 

 (日本)国民の大半は、アメリカと同盟したい。そうだとすると、アメリカの事も、国民感情を考えると多少守らざるを得ないんですよ。


「正しい戦争は無い」、反論をどうぞ(田原氏)


田原総一朗(司会)
 
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 僕は、戦争を知っている世代。限界を言いたい。自分の可能性ではなくて限界を言いたい。つまり「正しい戦争」は無いと思っている。それは1928年のパリ不戦条約ですよ。若い人は知らないから、あえて言いたい。第1次世界大戦というのがあった。ヨーロッパ全土が戦場になった。1000万以上の人間が死んだ。その時にヨーロッパの国々は、アメリカも含めて「戦争は全部悪だ」と。つまり「正しい戦争なんていうのは無いんだ」と。だから「戦争は、全部止めよう」、これが1928年のパリ不戦条約。
 この不戦条約に違反した国が2つある。東洋では、日本。この3年後に満州事変を始める。

1928年のパリ不戦条約では「侵略戦争は悪だ」と


ーー自衛戦争は認めている。侵略戦争が悪だと。
田原
 だから侵略戦争をやったのは、日本とドイツですよ。この2つは、やっぱり良くない。だから僕は、「戦争は悪なんだ」と。で、自衛戦争というのは、ややこしいよ。もしかしたら、この国が将来狙うかもしれないと思ってヤルのは、そんなのは侵略戦争。自衛戦争というのは、明らかに相手は攻めてきたとき。それに対して戦うんですよ。僕は、限界はあると思うけれど、やっぱり「正しい戦争」は無いんだと、「戦争は悪だ」と僕は思いたい。反論をどうぞ。
三浦
 いや、反論は無いんです。けど、「正しい戦争は無い」としちゃうと、負けた戦争に対して「負けた戦争は良くない」という考え方もなくなっちゃうんですね。
田原
 だからアメリカは、正しい戦争は無いと思っているから、「太平洋戦争は真珠湾攻撃をしたから、しょうがなくて防衛戦争をやったんだ」と言っている。

曖昧でインチキ論理を使うべきじゃない(大塚議員)


大塚耕平(民主党議員)
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 「正しい戦争」なんて無いし、戦争になったら悲惨になるというのは、皆分かってますから。できるだけ、そういう事態に陥らないように工夫しなければいけないんだけど。僕は国会の中でも言いましたけどもね。マキャベリが残している言葉で「戦争は始めたいときに始められるけど、止めたいときに止められない」。だから、「存立危機事態」ーー新しい概念を導入した気持ちは分かるけど、”これが日本の危機だ”という明白な危険。具体的な根拠がないまま始めちゃうと、相手は絶対に反撃してきて、今度もう「止めましょうよ」と言っても、なかなか止められない事態になるので。この議論は曖昧でインチキの論理を使うんじゃなくて、憲法に違反するんだったら、憲法改正も念頭に置いたことを主張したうえで手続きを踏んでやるのならいいけども。曖昧のまま、打ち出の小槌を渡したようなこの状態というのは、やっぱ僕はマズイと思う。
田原
 嘘かもしれないけども、公明党はこの3要件について、創価学会の人たちに対して「これは個別的自衛権の延長だ」と説明している。ところが、どうも安倍さんの話を聞くと、個別的自衛権の延長じゃなくてどうも集団的自衛権らしい。だから、創価学会の人たちがデモに参加。ここの違いがある。

大塚さんは理想論としては良いけれど(三浦氏)


三浦
 基本的に野党の議論が、なんか取り違えているなと思うのは・・。演習とか作戦とかのレベルの話をしている時に、”戦争を今やる”という話になっている。大塚さんのおっしゃっている事は、理想論としては良いけれども、国際政治の世界というのは無政府秩序。誰も、世界政府が管理してくれないから、こっちは軍備を持って抑止しなきゃいけない。その抑止だけで全てが済むかというとそうじゃなくて。皆で軍拡競争をしたら大変な事になるから、「安全保障のジレンマ」という危険な状態にならないようにしましょう。というのもあるんだけれども、抑止を全く無視するのは・・。

いや、抑止論を全く無視はしていない(大塚議員)

大塚
 いや、”全く無視”はしていない。だから、三浦さんがいう事も分かるし。
田原
 この新3要件というのは、あくまで総合安全保障、つまり国連が参加するまでの間だと。
三浦
 国連軍というものに日本人はすごい期待し過ぎていて、世界政府が出来て国連軍が出来るなんてスターウオーズの世界ですよ。結構、危険な事ですよ。その国連軍に誰が兵士として雇われて。それで例えば地球の裏側までそれこそ行って治めて来いって、誰がね・・。
田原
 具体的には、国連の安保理がОKしたのは、アフガン戦争なんてそうだよね。だから、NAТОは参加した。
三浦
 危険なんですよ。何でもかんでも・・。

【鳥巣注】
 この「戦争と平和論」は、終始「現実論と理想論」が交錯する議論なのですが・・。

 三浦氏の「危険、危険」の意味が気になりました。
 国連軍の発想は、例えばかつての十字軍のように正義の御旗が打ち立てられやすい。”大義名分さえ作り上げられれば”、あとは「敵」と見なしたターゲットを追いかけて地球のどこへでも殲滅に行ける。現代においてそのような寄ってたかっての戦いは、スピード感たっぷりかもしれないけれど、ゲームのように無機的であるいはイジメのように猟奇的な感覚になりかねない。
 いやそれよりは、今回の日本のように、議論百出したり葛藤したり、デモの最中に「ご飯の用意をしなくちゃ」と帰宅したり、アナログ感たっぷりの方がむしろ良識が働いている状況ーーという意味なのかなと私は思ったりもしました。

 日本人は国連に過大な期待を抱きがちですが、何事も一長一短、ちょっと立ち止まって考えてみる機会なのかもしれません。

【十字軍】
11世紀から 15世紀中頃にかけて,エルサレムの聖墳墓をイスラム教徒の手から奪還,防衛することを名目とする西ヨーロッパのキリスト教徒の東方遠征。狭義には 11~13世紀に行われた遠征をさす。(ブリタニカ国際大百科事典)
   *        *

 第1回十字軍が組織されたのは1096年だが、「聖地エルサレム奪回」を掲げた彼らの“蛮行”ぶりはすさまじかった。エルサレムを陥れるや否や、イスラム兵士はもちろんのこと、老若男女を無差別に殺害したのである。しかも、それは「神の名において」なされたのである。
 フランク王国(のちのフランス)の年代記者であるラウールは、第1回十字軍遠征の様子を、次のように記している。
 「マアッラ(地中海に近い今日のシリア領)で、我らが同志たちは、大人の異教徒を鍋に入れて煮たうえで、子どもたちを串焼きにしてむさぼりくった。」(『十字軍の暗黒史』)

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【国連の現状】
 現実の国連は”機能不全”に近い。創設から70年、紛争解決のための役割を果たせない中、人道的な危機は一層深刻さを増している。具体的には例えば、欧州で難民流入を引き起こしている根本問題のシリア紛争。
 <以下参考資料=NHK『クローズアップ現代』>
1、ロシアにとってシリアは関係が深いーー武器の輸出先であり地中海に面した港をロシア海軍が使用している。アメリカは独裁的なアサド政権に代わる親米政権を樹立したいとして反政府勢力を支援してきた。大国が対立を続ける中、内戦は泥沼化。戦闘の中で国際法で禁止されている化学兵器が使用され、多くの市民が犠牲となった。国連が予期しなかった事態も起きる。
国家という概念があてはまらない過激派組織IS(イスラミック・ステイト)の出現は対立の構図を複雑化していった。
「去年1月アサド政権と反政府勢力側との協議を実現させた。しかし、互いの利益を追求するロシアとアメリカ双方の協力が得られず交渉は決裂。安保理の理事国が席について考えるのは、それぞれの国益の事です。どの国もそうです。これでは不完全だと言わざるを得ません。国際社会はシリアのためにほとんど何もせず、問題解決の手助けをしませんでした。誇張したくはありませんが、国際社会のいくつかのメンバーの行動は問題を解決するのではなく、むしろ悪化させました」(元国連のシリア特使)
 
【パリ不戦条約】
 YAHОО JPAN知恵袋に以下のような回答が選ばれていました。

1928年(昭和3年)、フランスのブリアン外相と、アメリカ合衆国のケロッグ国務長官の提唱で、15カ国(のち63カ国)によって、調印され、国際紛争解決の手段として戦争に訴えないことがちかわれた条約。

簡単に言うとこうですが、アメリカ合衆国は、自衛戦争は禁止されていないとの解釈を打ち出しましたし、またイギリスとアメリカ合衆国は、国境の外で、国益にかかわることで軍事力を行使しても、それは侵略ではないとの留保を行いましたし、アメリカ合衆国は自国の勢力圏とみなす中南米に関しては、この条約が適用されないと宣言しました。

留保:条約の特定条項が自国に適用されないという意思表示
留保の効果は相互的です。すなわち、留保した国とほかの当事国との間では、留保の限度において、条約規定は変更され、または不適用となります。したがって、留保した国は、ほかの当事国に対して、自国が留保によって免れた条約上の義務の履行を求めることはできません。
↑このへんの留保の解説は、司法試験の国際公法の参考書として使われていた『法選征服シリーズ 国際公法 早稲田司法試験セミナー編』(早稲田経営出版。1994年)p 296, 298に載っていた文章をですます調に私が変えたものです。
ちなみに、司法試験の国際公法の昭和62年第2問は『多数国間条約に対する留保の制度について論ぜよ』でした。


また、世界中に植民地を有するイギリスは、国益にかかわる地域がどこなのかすらも明言しませんでした。

まとめると、アメリカ合衆国は、中南米で、戦争を起こしても、パリ不戦条約に違反しませんし、イギリスは、世界中で、戦争を起こしても、パリ不戦条約に違反しないということです。

国益が何であるかは、アメリカ合衆国やイギリスが一方的に決めることができるので、こうなるのです。

そのため、当時の世界中の学者から、事実上の空文と評されていた条約であり、条約の締結に向けて精励した外交官・政治家の努力は、徒労に終わってしまいました。

どこかの国が、その周辺で、国益に関わることであると宣言して、戦争を起こしても、留保の効果が相互的であるので、アメリカ合衆国は、その国にパリ不戦条約違反を主張することができません。
(当時、戦争の大多数は、自国、または、その植民地の周辺で起こっていました
したがって、戦争の大多数で、アメリカ合衆国はパリ不戦条約違反を主張できないことになってしまいました)
どこかの国が、世界中で、国益に関わることであると宣言して、戦争を起こしても、留保の効果が相互的であるので、イギリスは、その国にパリ不戦条約違反を主張することができません。
当時、イギリスやアメリカ合衆国は大国であったので、パリ不戦条約は、事実上の空文になってしまいました。>