鳥巣清典の時事コラム1411「『アメリカを見くだすな⑧「2050年アメリカの国民年金は破産』」 | 絶対に受けたい授業「国家財政破綻」

鳥巣清典の時事コラム1411「『アメリカを見くだすな⑧「2050年アメリカの国民年金は破産』」

ジョン・ラトリッジとデボラ・アレンの共著『アメリカを見くだすな~日米経済の盛衰は逆転する』(日本経済新聞)は1990年5月に出版。著者は90年代以降の日米経済の逆転劇を見事に言い当てた。さらに著者は、主に「貯蓄率」「資本」という観点から見た日米経済の”将来”も占っていた。
 著者はアメリカ人だけに、アメリカについてはより断定的に述べている。

【アメリカ】
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米も2025年に2人で1人を支える超高齢化社会に


1、ベビーブーマーが、老齢になったら国民年金によって生活をしようと考えているとしたら、大いにあてがはずれることだろう。21世紀の最初の10年間に多数のベビーブーマーが退職し始め、私的なものであれ公的なものであれ、年金制度にきわめて大きな重圧がかかるだろう。2025年には(ベビーブーマーは皆退職しているが、まだ元気でジョギングをしたりパリエを飲んだりしているだろうが、そのとき社会で働いている人間は、たった2人で1人の退職者を支えなければならない。1940年には10人で1人、1980年には5人で1人を支えていたのに、である。

2、個人的な年金プランとは積み立てであり、積み立てをした人が退職後連続的に手当てを受け取れるような十分な資金を働いている間に貯めておき、それを払い戻すものである。
 しかし実際には、全労働者の約3分の1しかこの年金制度に入っておらず、加入していても退職後に受け取る手当はほとんどの場合、彼らが退職以前に得ていた所得の20パーセント以下である。

3、もっと悪いことには、国民年金は個人的な年金と同じ方法で積み立てられてはいない。むしろ、これは「その日暮らし」の方法で、現在働いている人たちから集められたおカネは、現在の退職者へ年金を支払うためにすぐ使われてしまう。
 この制度では退職後の収入は、自分がどれだけ払い込んだかで決められるのではなくて、自分が退職したあとでまだ働いている人間からどれだけおカネを集められるかによって決まるのである。働いてくれる人がおカネをは会ってくれなければ、退職者は食べてゆけない。


2050年迄にアメリカの国民年金は破産してしまう


4、今後数年間は大丈夫だろう。現在から2020年までは、多数のベビーブーマーが現役で、彼らが国民年金に払い込む額は、退職者に支払う額よりずっと多い。したがって大幅な黒字となりーー国債の形で備蓄されるーーベビーブーマーが退職したときにそこから年金を支払うことができる。
 しかし、次の世紀に入って彼らが年金を受け取りはじめたら、この黒字はたちまち底をついてしまい、2050年までには破産してしまうだろう。ベビーブーマーたちはあまりに多人数であり、彼らの後世代に当たる年齢の人々はあまりに少ないので、頭のよいベビーブーマーなら、退職したあと自分たちの食費はどこからもらえるだろうかと心配になるはずである。


2030年までは巨大な資金が金融市場に投下される


5、2030年には1人の退職者をたった2人の勤労者で支えなければならず、それからは毎年大きな赤字を計上するようになり、2050年にはこの制度は枯渇してしまうだろう。とはいうものの、この巨大な資金の蓄積はこれからの40年間、アメリカの金融市場に投下される資本の大きな源泉となるだろう。

【鳥巣注】

 1990年頃から大きな流れとなった金融市場への巨額の投下資金。反面、IТバブル、リーマン・ショックなどが引き起こります。

ITバブルの原因と崩壊の理由(世界の金融歴史辞典)

 ITバブルとは、1990年代後半から2000年頃に、アメリカや日本でIT関連企業の人気が高まり、株価が急騰した事の総称です。ここでは、ITバブルが起きた原因と、崩壊の理由について分析します。

 ITバブルが起きた原因の一つは、1990年代後半が世界的に過剰流動性が高まっていたことです。1990年代は、日本のバブル崩壊や欧米の経済低迷などで、日・米・欧州共に金融緩和(政策金利が下げられる)の時代でした。そこへ、1997年頃からのアジア通貨危機や、1998年に世界最大のヘッジファンド=LTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)が破綻したことで、新興国やヘッジファンドへの投資マネーが一気に引き上げられます。金融緩和でだぶついていた資金が、大きな投資先を二つ失った訳です。

一方、1990年代はIT関連企業の注目度が高まってきた時代でした。アメリカでは、自動車(GM)や家電(GE)などの企業が死に絶え、産業構造の転換が急務だった時代で、IT~コンピュータやインターネットの関連企業がその有力候補となっていました。

それを決定付けたのが、マイクロソフトがWindows95を大ヒットさせ、世界的にパーソナルコンピュータが普及し始めた事です。そして、マイクロソフトの創始者=ビル・ゲイツは、自社株の高騰によって、世界一の大富豪となったことが、ITバブル加速のもう一つの原因でした。多くの企業が第二のマイクロソフトを目指してIT事業に参入し、多くの投資家がビルゲイツの成功に肖ろうと、IT企業に株式投資を始めます。


・金融緩和で世界の投資マネーが過剰流動性相場にあった
 ITバブルの潮流は日本にも影響し、NTTドコモが時価総額日本一(42兆円)になりました。携帯電話事業はおろかヤフーBBを始める前のソフトバンクですら、時価総額21兆円でトヨタ自動車(16兆円)を越え、たった60億円の黒字見通しに過ぎなかった光通信の時価総額が6兆円以上になるなど、IT関連株の驚異的な高騰が起きました。そして孫正義氏は、ソフトバンクの株価高騰で日本の長者番付トップになります。

・アジア通貨危機とLTCMの破綻で、マネーの投資先が限定された
・ビルゲイツや孫正義が大富豪にのし上がった事が、IT企業に肖りたい投資家心理を加速させた

ITバブルが起きた原因をまとめると、以上のようになります。

バブルとは理論価格以上の高騰。ゆえに崩壊に理由など無い

 しかし、IT関連企業の株価の高騰は、余りに行きすぎたものであり、バブルだったのです。ITバブル崩壊の理由は、単に人々が熱狂から冷めたからです。

 PERが100倍以上だとか、赤字なのに株価が高騰しているというのは、明らかに異常な状態です。冷静に考えれば、そのような企業に投資することは極めてハイリスクであり、株価が高いうちに売り抜けようと思うのが、人間心理というものです。バブルというのは、トランプのババ抜きをしているのと同じで、先に抜けた人が得をして、最後まで掴んでいた人が損をします。一種のチキンレースです。

 ゆえに、一端「売り」が優勢の相場になると、全ての投資家が我先にと、売り抜けの行動に走ります。米ナスダック総合指数は、2000年3月に高値5132ポイントを付けましたが、2001年9月には1300ポイント台にまで下落、1年半で70%以上暴落しました。バブルの形成がゆっくりなのに対して、崩壊が短時間に一気に起きる理由は、投資家の心理を考えれば当然の成り行きだからです。

 言い換えれば、バブルというのは「根拠無き熱狂」です。理由を説明できないほど高騰した相場がバブルなのですから、崩壊する事に理由などありません。














■リーマン・ショック

2007年サブプライムローンサブプライム住宅ローン危機)問題に端を発した米国バブル崩壊を動機に(サブプライムローンという債権をあたかも資本と思い込ませた借金の転売による多重債務)、多分野の資産価格の暴落が起こっていた。リーマン・ブラザーズも例外ではなく多大な損失を抱えており、2008年9月15日(月)に、リーマン・ブラザーズは連邦倒産法第11章の適用を連邦裁判所に申請するに至る。この申請により、同社が発行している社債投信を保有している企業への影響、取引先への波及と連鎖などの恐れ、及びそれに対する議会政府の対策の遅れからアメリカ経済に対する不安が広がり、世界的な金融危機へと連鎖した。日経平均株価も大暴落を起こし、9月12日(金)の終値は12214円だったが、10月28日には一時は6000円台(6994.90円)まで下落し、1982年10月以来26年ぶりの安値を記録。

 負債総額、約6000億ドル(約64兆円)という史上最大の倒産により世界連鎖的な金融危機を招いた。

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PS①
 水野和夫著『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書)を買いました。<25万部を突破>と帯にある。著者は「はじめに」で<資本主義の死期が近づいているのではないか。端的に言うならば、もはや地球上のどこにもフロンティアが残されていないからです。>と書いています。
 <資本主義は「中心」と「周辺」から構成され、「周辺」つまり、いわゆるフロンティアを広げることによって「中心」が利潤率を高め、資本の自己増殖を推進していくシステムです。「アフリカのグローバリゼーション」が叫ばれている現在、地理的な市場拡大は最終局面に入っていると言ってよいでしょう。もう地理的なフロンティアは残っていません。>
 そして、
<日本の筆頭にアメリカやユーロ圏でも政策金利はおおむねゼロ、10年国債利回りも超低金利となり、いよいよその資本の自己増殖が不可能になってきている。つまり、「地理的・物的空間(実物投資空間)」からも「電子・金融空間」からも利潤をあげることができなくなってきているのです。>


■水野和夫=経済学者。日本大学国際関係学部教授、経済学博士 証券エコノミストとしての経済分析の一方、マクロ経済、国際金融を文明史論的な視野から見た著作で知られる。仙谷由人の経済ブレーンであり、民主党政権では政権入りし内閣官房内閣審議官などを務めた。

 ちなみに、水野氏は<アメリカが日本以上に深刻なのは、リーマン・ショック後、国際資本の移動が縮小し、他国の貯蓄をそれ以前ほど自由に使えなくなっている点にあります。>と書いています。

PS②

 先日、知人の経営者と話す機会がありました。
「円安に関しては、もう限界を越した。これ以上の円安はストップして欲しい。第1日本は成熟社会になったんだから、何もアベノミクスだといって無理して成長しなくてもいいんじゃないか? うちの業界でも、これから人口減少をしていく社会で設備投資を積極的にやっていこうと考える経営者はいない。もっとも、戦前生まれと戦後生まれでは違う。戦前生まれは、どこか滅私奉公的なところがある。我々戦後生まれは、”おカネはおカネを生む”と考えるところがある。どこも苦しい。日本から逃げ出したくもなる。だからといって、資産を逃がして居住も外国に・・までは。外国人になりたくはない。逃げるに逃げられない。とうとう相続税で網をかけられた。相続で半分くらいは持って行かれる。2代でほぼ全部なくなる。」
 こちらも資本主義と、そして重税感を増しつつある日本と格闘している。
 もっとも、
「じゃ今、日本銀行の金融緩和を止めることができるのか? 考えると怖い」
 経営者の心配の種は尽きないようです。

PS③
 先の水野和夫氏が日刊ゲンダイのインタビュー(1月3日)を受けている。
 見出しは、
水野和夫氏が警鐘 「今年は日銀が自ら資本主義に幕を引く」

水野氏の見立てでは1ドル=125~130円のレベルになっていくという。円安インフレで実質賃金の伸び率はマイナスのまま。庶民はたまらないが、怖いのはその先だ。

「今ですら、出口なしといわれているのに、追加緩和をすれば、日本経済が破綻するまで日銀は異次元緩和をやめられないという苦境に陥ります。というのも、緩和を続ければ株や土地などの資産価格がバブル化しますが、緩和をやめたとたんに、暴落する。当然、政権は『緩和を続けろ』と圧力をかけてくるので、黒田日銀総裁は逆らえず、バズーカを次々と撃ち続けることになる。やがて国債の買い手がつかず、国債のほとんどを日銀が買い受けることになる。最終的には市場がなくなり、価格もつかなくなるでしょう。資本主義は終わるわけです

 安倍政権のせいで何もかもが壊されてしまう。>