鳥巣清典の時事コラム217「髙橋洋一流”財務省の増税シナリオの読み方”」 | 絶対に受けたい授業「国家財政破綻」

鳥巣清典の時事コラム217「髙橋洋一流”財務省の増税シナリオの読み方”」


「政治は、調整」
財政危機になると、よけいに調整に難航する。
復興増税、消費税増税・・。
国民の厳しい目もある。
財務省は、いかなるシナリオの元に動いているのか?


髙橋洋一・嘉悦大学教授は、元財務相省の出身。
その読み方を新著で書いている。
「日本政府は増税に突っ走るーーなぜ、そう断言できるか。野田内閣の布陣を見れば、いっそう財務省のシナリオが見える。キーとなる人物は、安住淳の財務大臣就任である。

整理してみます。

①NHKの政治部記者から政界へ転身した安住氏は、野田氏と同様、経済や財政に関しては素人である。ではなぜ、誰もが違和感を覚える「安住財務大臣」という人事が行われたか。安住氏の前職、民主党国会対策委員長に、その疑問を解く鍵がある。
②法律の政府案は、民主党政調会の承認を得ないと国会に提出できない。政調会長に就いたのは増税反対を表明している前原誠司氏である。野田氏の盟友とはいえ、増税問題は譲らない。党内で本格的に議論が始まれば、増税派に勝ち目はない。それゆえ復興増税は実現しないというわけだが、野田総理も財務省も、そうなるのは計算済みである。
③民主党が非増税に傾くのを承知しているからこそ、安住氏を財務大臣に起用しているのだ。どういうことかーー。
④菅政権下で成立した復興基本法と原発賠償法の成立過程を振り返れば、答えはわかる。ともに、民主党が承認した政府案を自民党が修正する形で成立した。原発賠償法にいたっては、東電を解体しないという政府案に、さらに自民党が予算を上乗せすることによって成立している。実は、増税と電気料金値上げは、いってみれば、実質的に民主党政府と自民党の大連立によって決定されていたのだ。
⑤現在の衆参ねじれ状態は、官僚にとってはある意味、非常に都合がよい。たとえば、復興増税のように民主党内で反発が強い法案があるとしよう。しかし、それに一切かまわず、政府案は増税色の強いものを提出する。当然、民主党内では反発が起こり、増税色を薄める方向で修正される。
⑥だが、これは自民党との協議でいくらでもひっくり返せる。ましてや復興増税に関していえば、自民党の谷垣禎一総裁も石破茂政調会長も、ばりばりの増税論者である。国会の審議を経る前に、実質的に裏協議で、抵抗の強い増税案を通してしまえるのだから、これほど楽なことはない。民主党内での修正は、党内の不満のガス抜きとして使われるだけで、本番は、自民党との修正協議なのだ。
もう、おわかりだろう。前国対委員長の安住氏が財務大臣に抜擢された理由がーー。
⑧具体的には、臨時国会が召集されるや否や、三次補正予算案とともに増税法案が検討され、民主党の承認した政府案を自民党が修正する形で、増税法案がまとまる。法人増税にはさまざまな議論があるので、恐らく3年ないし4年と時間を区切り、所得税の増税という線で修正案がまとまる。そして、年末の税制大綱に増税が明記され、その税制大綱に基づき、2012年の通常国会に法案提出の運びとなる。
⑨すでに社会保障と税の一体改革で、2010年代半ばまでに消費税率を10パーセントにするという方針が決まっている。復興増税から消費増税へとなだれ込むというのが財務省の戦略だが、復興増税の導入時期がずれ込めば、所得税増税と消費税増税がダブルパンチで国民の生活を苦しめることもありうるだろう。

【鳥巣注】
財務省も「復興増税と消費増税が重なるかもしれません」
と述べる。
髙橋流”財務省の増税シナリオ”は、参考になると思います。
この裏読みができなければ、「政治」は解読できない。
一方、髙橋教授の新著のタイトルは、『財務省が隠す650兆円の国民資産』(講談社)。
強烈です。
私には、この髙橋教授のシナリオのほうも大いに気になります。

現在、財務省に対しても「反論資料」の提供を要請しているところです。

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PS①

今年の文化勲章受章者のインタビュー記事を読んでいました。
赤崎勇さん、82歳。
照明器具や信号機、携帯電話のバックライトなどで現代生活と切り離せない発光ダイオード(LED)。「光の三原色」で最後に残った青色LEDの開発に1980年、世界で初めて成功した。
日経新聞の記事は、こう書く。
<粘り強い研究姿勢から周囲の評は、「不屈の人」。「愚直にやってきただけ。同僚や大学の支えがあったから」と謙遜するが、「『できない』といわれた物を作り上げた」との自負も口にする」>


PS②

先日、NHK≪プロフェッショナル・仕事の流儀≫で、料理研究家の栗原はるみ氏のドキュメントを見た。
やはり、自分が納得するまでの探究心が特徴だった。
出来栄えに納得できない時には、40回も試作を重ねていた。
「不屈の人」
物事を成す人には共通項はある。
予定調和ではなく、自分の功績も”過去のもの”と割り切る。
最終校正ゲラまで、確認作業を怠らない。
「100人が作って、100人がうまく作れる方法を見つけるまでは終わらない」
「文は、人なり」という言葉がある。
「人が、文なり」かもしれない。
料理に力を入れたのは、結婚した夫が選挙に出て落選、1年間無収入となった頃から。
せめて雰囲気を明るくできるのは、毎日の料理。
その時の”思い”が、いまだに残っている。
多くの主婦に、その思いを込めて伝えていく。
このひと品で、人に笑顔を。
自分にも言い聞かせている。
「常に笑顔を忘れない」
女性としても、素敵な人だ。
「東日本大震災で、みんな”ふつうの生活がいかに大事か”を思ったと言いますね」

PS③

こういう、りっぱな人の事を書いた時に注意することは、けっして自分と比較しない事。
若い時は、目標や励みになっても、
齢(とし)を取ると、ほどほどを知ります。
なでしこジャパンの話を聞いて、サッカーを始めたりすると、ケガするのがオチです。
内村航平氏の演技を観て、体操を始めたりすると、100%骨折する。
50歳代になって、野球をやり、格好よく滑り込んだつもりが、左足首の骨折。
それも、高校生だった息子の目の前ででした。
3か月も整形外科に入院。
ベットの上でワープロをたたき、原稿を書いた記憶がよみがえります。
でも、栗原さんは63歳でアレかあ・・なんて、考えない事です。
自分流でいきます。

もうひとつ、最近思うのは、「無理に頑張ろうとしなくても、自分が必要と思うものは、自然に頑張っている。必要じゃないものは、自然と止めていく」ということだろう。
仕事も、恋愛も、夫婦も、同じかもしれない。
自然流。
故郷や国家との関係は・・まだ、分からない。
実は、どれも本当は分からない、というのが正直な答え。
うつろいやすいのも人間だ。

若い時のように、唯一の「答」を必死に求めるようなことはしなくなってきた。
むしろ、答えは無数にある。
のかもしれない。


PS④

髙橋氏は、ある「解」に導くために必死に見える。
だから、気になる。

この世の中に、断言できるほどの「解」があるのだろうか。
むしろ、それが気になる。