鳥巣清典の時事コラム187「日刊ゲンダイ=一体いくらカネが要るのか」
「国家破綻」
黄色の文字が目に飛び込んできた。
日刊ゲンダイ(9月30日発売・10月1日号)の一面のタイトル。
ようく見ると、
「総額50兆円超 復興・除染 国家破綻」
7ページにその記事はあった。
①野田内閣が本格復興策を盛り込む3次補正の予算規模を総額12兆円と決定した。庶民に11・2兆円を押し付ける「復興増税」とワンセットで、10月下旬からの次期臨時国会に提出する予定だが、これっぽっちの3次補正で「本格復興」なんて到底ムリだ。
②総額12兆円といっても、実際に被災地のインフラ復旧や雇用創出に回るのは6・1兆円程度だし、残りは1次補正の財源に流用した年金財源の穴埋め分やB型肝炎訴訟の和解金などに消えてしまう。6・1兆円は1、2次補正で手当てした復興費の総額と同規模で、予算不足で被災者の生活再建や復興計画が遅々として進まない現状を考えれば、こんなはした金では足りないのだ。
③「3次補正のベースとなった政府の『復興基本方針』には今後10年の復興費を『少なくとも23兆円程度』、当初5年間に『少なくとも19兆円程度を投じる』と出てきます。この『少なくとも』が官僚の悪知恵で”入口は小さく見積もり、出口は大きく”が霞が関の常套手段なのです。将来的にどこまで膨らむかは知れたものではないし、その余地を残した巧妙な書き方です。実際、総額23兆円には東電が一時的に支払う原発事故関連費用は含まれていません。この先の国民負担を考えると、絶望的な気持になりますよ」(経済評論家・広瀬嘉夫)
④現時点で見積もり可能な賠償額は12年度まででも約4兆5800億円、福島原発の廃炉費用は1兆1500億円・・・来週公表される政府の「東京電力に関する経営・財務調査委員会」の最終報告書には、ケタ外れの原発事故関連費用が次々と出てくる。
⑤中でもベラボーな金額を必要とするのが、放射能の除染費用だ。環境省はきのう(29日)、除染や汚染がれきの処理にかかる国の負担が今後3年度で「少なくとも」1兆円規模に上るとの推計をまとめたが、こんなモンで済むわけがない。効果的な除染手法が定まらない高濃度汚染地域の対策費は含んでいないし、汚染土などを保管する中間貯蔵施設の建設、整備費用も未知数だ。
⑥環境省の「年間5ミリシーベルト以上の地域を対象」という大甘方針で除染しても、福島県内で生じる汚染土は東京ドーム23杯分の約2900万立方メートルに達する。
ちなみに、青森・六ヶ所村の「低レベル放射性廃棄物埋設センター」の建設費は20万立方メートル分で約1600億円。仮に同じ構造の中間貯蔵施設を造れば、建設費だけで六ヶ所村の145倍の約23・2兆円に達する。国の年間税収の3分の2が吹き飛ぶ金額で、少なく見積もっても50兆円以上のカネが復興・原発処理に消える。
⑦この先、日本はいくら増税しても、とうてい賄いきれないカネが復興・原発処理というブラックホールに吸い込まれるのだ。
「加えて『社会保障と税の一体改革』で2010年代半ばまでに消費税は10%まで引き上がる。日本はすさまじい重課税国家となり、消費は完全に冷え込み、企業は国際競争力を失ってしまう。野田内閣には復興財源を巡って、つじつま合わせの場当たり策を議論しているが、いい加減にしてほしい。このまま、復興ビジョンや経済成長戦略を何一つ打ち出さなければ、国民は生まれながらにして重税に苦しみ、一生貧乏の人生を余儀なくされるのです」(広瀬嘉夫氏)
庶民は、破滅必至の国に生まれた不幸を嘆くしかないのか。
【鳥巣注】
政府の増税策を前に、日刊ゲンダイのみならず週刊誌は一斉に批判特集記事を書いています。
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