鳥巣清典の時事コラム24『和僑(わきょう)の時代④』「中国への企業進出拡大と領土問題のジレンマ」
10月24日(日曜)にオン・エアされたNHK『日曜討論』の一部を記録します。
冒頭の課題に、<景気“足踏み” どうする日本企業>と題して、以下の経済界の専門家が語り合っています。
□日本商工会議所会頭・東芝相談役/岡村 正
□経済同友会副代表幹事・ローソン代表取締役社長/新浪 剛史
□米日経済協議会副会長・アフラック日本社会長/チャールズ・レイク
□東京大学教授/伊藤 元重
□三菱総合研究所シニアエコノミスト/武田 洋子
○司会
NHK解説委員■島田 敏男
司会 中国は、日本をはじめ先進国の経済回復のために期待できる相手?
伊藤 もちろん、そうだと思う。
グローバル経済の中での成長と理解している。
その意味で、さらに相互依存を深めていく。
一時期、それぞれが独立して成り立っていくという議論もあった。
リカバーリングと呼ばれていた。
今回の金融危機は、明快にそうではない。
世界経済は連結していることがはっきりした。
成長が高いレベルの国々と、残念ながら成長がそう高くはない国々とがある。
それぞれの付加価値と、それぞれの戦略的貢献があって、グローバルな経済が成り立つ。それを構築していくために何が必要なのかということが議論されるべき。
武田 中国はこれから5年間は、5か年計画ということで、今までの輸出依存から内需依存にシフトしていくことを表明している。
日本にとってプラスということは間違いない。
ただ、いっぽうでリスクもある。
3つあると考えている。
1つは、中国は格差社会で社会の歪みになっている。
いっぽうで最近、平均的に見れば労働コストが上がってきている。
2つめは、各地でのデモの広がりのような、ポリティカル・リスクがその都度出てくる可能性は否定できない。
3つめは、これはより中・長期的な課題だが、中国も2015年くらいになると高齢化が進行。
生産年齢人口、つまり労働者人口が、ピークアウトしてくる。
マーケットとして中国の完全に依存するだけでなく、その先、2段階戦略が必要になる。
司会 スイスの調査機関がまとめた“国際競争力”比較の数値で見ると、2010年はシンガポールが1位で、3位にアメリカ、そして日本が27位。中国が18位、インドが31位。
伊藤 スイスの調査機関は、グローバル・ビジョンを持っている。
グローバルで見ると、日本はこういうふうに見えるのだと思う。
これが日本の全部ではない。
国内でも、医療、介護とか、非常に重要な分野をどうやっていくかがある。
ただ明らかになってきているのは、新興国が台頭してきて、グローバル化している中で、日本の企業は大企業も含めて対応が遅れているように見られている。
それは事実だと思う。
日本の企業が今、いちばん強く感じている。
グローバルに展開するところについては、相当に重要な問題だと我々は受け止めざるを得ない。
司会 日本の大企業が、しっかりと明日に向かって旗を掲げろと。経済同友会、あるいは経団連には耳が痛いところ。
新浪 全般的に内向き志向になっている。
どうやって外向き志向にしていくか。
大変、大きな課題。
人材をいかに育成していくか。
大企業が就職の学生を雇う時に、最低2年以上、どこでもいいから海外経験をしている者を条件にしたらどうか。
奨学金制度も企業や政府がバックアップをする。
学生は機を見て敏だ。
若い人たちに外に行かせる。
たとえば東芝さんだと、どんどん20代は外に出して、外での経験をつけさせ、自信をつけさせる。
そういうことが大事。
内向きイコール自信のなさ。
外に行って、日本は素晴らしい国だということを見直す。
日本には、いろんなものがある。
外からこんなに評価されている。
そういうことを大企業主導型でやることによって、いわゆる「内なる者」から「外へ行く者」を育てていく。
「外」からも受け入れていかなければならない。
“国の開放”というのは、「外」に出てゆき、また「外」の優秀なあらゆるものを受け入れていくこと。
PS
ロシアのメドベージェフ大統領が、11月1日に北方領土を訪問するとのニュースが流れています。
実現すれば、ロシア大統領としては初めて。
日本にとっては、大打撃です。
北方領土訪問は、そもそもが胡錦濤・主席との中ロ首脳会談で出てきた構想。
「尖閣諸島、北方領土は、中ロのもの」
世界のバランス・オブ・パワーに敏感な英国のタイムズ紙は、「『ロシア熊』と『中国龍』が手を組み、これから太平洋の『日本エビ』を追い回す」と報道しました。
日本にとっては悪夢のシナリオ。
こうなると、頼りになるのは“世界一の軍事大国“アメリカ。
ところが、日米同盟深化のための「日米安保共同宣言」の策定が見送られることが決定。
オバマ大統領が、横浜でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)で訪日した際に計画されていたのです
が、「共同宣言は出せない」と米政府高官が認めたのです。
沖縄県宜野湾(ぎのわん)市の米軍普天間飛行場移設問題で、日本側が迷走を続けて先送りを繰り返し、同盟深化の協議ができない状態が続いためです。
日本のあやふやな態度が、孤立化を加速。
果たして、「経済だけは別」というふうにいくのか、非常に危惧されます。
絶対に受けたい授業「国家財政破綻」/鳥巣 清典
¥1,575
Amazon.co.jp
冒頭の課題に、<景気“足踏み” どうする日本企業>と題して、以下の経済界の専門家が語り合っています。
□日本商工会議所会頭・東芝相談役/岡村 正
□経済同友会副代表幹事・ローソン代表取締役社長/新浪 剛史
□米日経済協議会副会長・アフラック日本社会長/チャールズ・レイク
□東京大学教授/伊藤 元重
□三菱総合研究所シニアエコノミスト/武田 洋子
○司会
NHK解説委員■島田 敏男
***********************************
⑯「世界経済は連結している」
司会 中国は、日本をはじめ先進国の経済回復のために期待できる相手?
伊藤 もちろん、そうだと思う。
グローバル経済の中での成長と理解している。
その意味で、さらに相互依存を深めていく。
一時期、それぞれが独立して成り立っていくという議論もあった。
リカバーリングと呼ばれていた。
今回の金融危機は、明快にそうではない。
世界経済は連結していることがはっきりした。
成長が高いレベルの国々と、残念ながら成長がそう高くはない国々とがある。
それぞれの付加価値と、それぞれの戦略的貢献があって、グローバルな経済が成り立つ。それを構築していくために何が必要なのかということが議論されるべき。
⑰「中国進出の3つのリスク」
武田 中国はこれから5年間は、5か年計画ということで、今までの輸出依存から内需依存にシフトしていくことを表明している。
日本にとってプラスということは間違いない。
ただ、いっぽうでリスクもある。
3つあると考えている。
1つは、中国は格差社会で社会の歪みになっている。
いっぽうで最近、平均的に見れば労働コストが上がってきている。
2つめは、各地でのデモの広がりのような、ポリティカル・リスクがその都度出てくる可能性は否定できない。
3つめは、これはより中・長期的な課題だが、中国も2015年くらいになると高齢化が進行。
生産年齢人口、つまり労働者人口が、ピークアウトしてくる。
マーケットとして中国の完全に依存するだけでなく、その先、2段階戦略が必要になる。
⑱「日本の国際競争力は27位」
司会 スイスの調査機関がまとめた“国際競争力”比較の数値で見ると、2010年はシンガポールが1位で、3位にアメリカ、そして日本が27位。中国が18位、インドが31位。
伊藤 スイスの調査機関は、グローバル・ビジョンを持っている。
グローバルで見ると、日本はこういうふうに見えるのだと思う。
これが日本の全部ではない。
国内でも、医療、介護とか、非常に重要な分野をどうやっていくかがある。
ただ明らかになってきているのは、新興国が台頭してきて、グローバル化している中で、日本の企業は大企業も含めて対応が遅れているように見られている。
それは事実だと思う。
日本の企業が今、いちばん強く感じている。
グローバルに展開するところについては、相当に重要な問題だと我々は受け止めざるを得ない。
⑲「“国の開放”とは、“外に出て行き”、“受け入れる”こと」
司会 日本の大企業が、しっかりと明日に向かって旗を掲げろと。経済同友会、あるいは経団連には耳が痛いところ。
新浪 全般的に内向き志向になっている。
どうやって外向き志向にしていくか。
大変、大きな課題。
人材をいかに育成していくか。
大企業が就職の学生を雇う時に、最低2年以上、どこでもいいから海外経験をしている者を条件にしたらどうか。
奨学金制度も企業や政府がバックアップをする。
学生は機を見て敏だ。
若い人たちに外に行かせる。
たとえば東芝さんだと、どんどん20代は外に出して、外での経験をつけさせ、自信をつけさせる。
そういうことが大事。
内向きイコール自信のなさ。
外に行って、日本は素晴らしい国だということを見直す。
日本には、いろんなものがある。
外からこんなに評価されている。
そういうことを大企業主導型でやることによって、いわゆる「内なる者」から「外へ行く者」を育てていく。
「外」からも受け入れていかなければならない。
“国の開放”というのは、「外」に出てゆき、また「外」の優秀なあらゆるものを受け入れていくこと。
***********************************
PS
ロシアのメドベージェフ大統領が、11月1日に北方領土を訪問するとのニュースが流れています。
実現すれば、ロシア大統領としては初めて。
日本にとっては、大打撃です。
北方領土訪問は、そもそもが胡錦濤・主席との中ロ首脳会談で出てきた構想。
「尖閣諸島、北方領土は、中ロのもの」
世界のバランス・オブ・パワーに敏感な英国のタイムズ紙は、「『ロシア熊』と『中国龍』が手を組み、これから太平洋の『日本エビ』を追い回す」と報道しました。
日本にとっては悪夢のシナリオ。
こうなると、頼りになるのは“世界一の軍事大国“アメリカ。
ところが、日米同盟深化のための「日米安保共同宣言」の策定が見送られることが決定。
オバマ大統領が、横浜でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)で訪日した際に計画されていたのです
が、「共同宣言は出せない」と米政府高官が認めたのです。
沖縄県宜野湾(ぎのわん)市の米軍普天間飛行場移設問題で、日本側が迷走を続けて先送りを繰り返し、同盟深化の協議ができない状態が続いためです。
日本のあやふやな態度が、孤立化を加速。
果たして、「経済だけは別」というふうにいくのか、非常に危惧されます。
絶対に受けたい授業「国家財政破綻」/鳥巣 清典
¥1,575
Amazon.co.jp