鳥巣清典の時事コラム14 「榊原氏“政府の債務総額は、1300兆円超”」 | 絶対に受けたい授業「国家財政破綻」

鳥巣清典の時事コラム14 「榊原氏“政府の債務総額は、1300兆円超”」

榊原英資氏の「変遷」について見ています。

2007年の時点では、「すでに財政破綻をしている」とのタイトル記事まで書かれています。

「日本には、いくつかの財政の構造的問題がある」

1つめは「地方」の問題でした。

警告を鳴らす2つめの問題は、「年金積立金」などの財政状況についてです。

榊原氏は2004年に『年金が消える』(中央公論社)も著しています。

『日本の論点2007』(文藝春秋編)と合わせ、その論点を整理すると以下のようになります。

①年金積立金の不良債権化率は、推計40%

「現在の日本の年金制度は『修正積立方式』と呼ばれる。

いわゆる積立方式と賦課方式の中間的なもの。この中間的な制度をとり続けたことから、年金制度の腐食は著しく進んでしまった」

用語解説≪公的年金制度の修正積立方式≫
年金制度には、積立方式(つみたてほうしき)と賦課方式(ふかほうしき)とがあり、積立方式とは若い現役時代に払い込んだ金を積み立て、老後にそのお金を受け取る仕組み。
賦課方式とは、働く現在現役の人が払い込んだ金を現在の高齢者に支給する仕組み。
「修正積立方式」とは、積立方式を基本としながら、人口構成の変動に応じて年度ごとに負担率を変更していく年金方式。現在の日本の公的年金はこの方式を採用している。

「完全な積立方式であれば民間の年金のように積み立て分は個人のものであり、これを個人のためにいかに有利にするかが、年金当局の重要な役割になる。

逆に完全な賦課方式であれば、保険料はいわば税金であり、年金業務は所得の再配分という一般の財政政策の一部になる。

『修正積立方式』により積立金は厚生労働省が特別会計を通じて、財務省からの制約もあまりなく、厚生労働省の予算として使えることになってしまった。

2001年までは積立金は資金運用部に預託され、その25%が年金福祉事業団に融資され、厚労省がこれを使っていた。

こうした制度の中で、グリーンピアとか年金会館とかが建設され、回収できない積立金が増えていった。

年金積立金のうち、どの程度が不良債権化しているのかを示す正確な数字はないが、40%と推計する」

②財政投融資は、156兆円ほどが不良債権化

「財政投融資の不良債権化率も、日本医師総合開発機構の調査で、年金積立金と同程度(40%)と推計されている」

用語解説≪日本医師総合開発機構の調査≫
日本医師総合開発機構は、1999年度末の時点で、財政投融資の貸出先である27の特殊法人の財務状況を分析。
24法人が債務超過状況で、貸出先の約4割が不良債権化しており追貸しを受けないと破綻してしまう、という結果を発表した。

「2002年度末で財政投融資残高は約390兆円。

この4割、実に156兆円ほどが不良債権だという。

これに郵便貯金・簡易保険・年金などの特別会計及び基金(年金資金運用資金)などが別途抱えている不良債権及び含み損を加えると、この額はさらにふくらむことになる。

さらに(この時点で)668・7兆円の公債等発行残高も政府はかかえている。

これに年金の積立不足分530兆円を含めると、総額は1300兆円を超える。

これは対GDP比で270%に及ぶ数字になる。

つまり、日本政府は、郵便貯金・簡易保険・年金積立金を先食いし、積立金のないまま将来の年金給付金を約束することで、GDP比で100%を超える隠れた債務をつくり出してしまった」

③財政破綻が財政破綻として表面化する

「いままで、こうした巨大な債務の問題が表面化してこなかった大きな原因の一つは、個人金融資産の大半が銀行預金や郵便貯金、生命保険などに流れ、それが国債や財投債の購入にあてられていたからだ。

今のところ、この隠れた債務は表には出ていない。

しかし金融の自由化が進むにつれ、個人の資産が投資信託などのチャネルを経て、株式や外国債券などに大きく流れるようになり、いままでのメカニズムが機能しなくなる。

そうなれば財政当局は、公債の消化を個人投資家や外国人投資家に依存せざるを得なくなる。

結果として、財政状況に敏感に反応するマーケットがつくり出されることになる。

ここ4~5年の間には、財政破綻が財政破綻として表面化する可能性が高くなる」

このように榊原氏は、膨大な「隠れ債務」が深刻な問題であることを指摘していたのです。

(次回へつづきます)

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