鳥巣清典の時事コラム13 「榊原氏“2010年以降、財政沈没が顕在化”」 | 絶対に受けたい授業「国家財政破綻」

鳥巣清典の時事コラム13 「榊原氏“2010年以降、財政沈没が顕在化”」

前回、“民主党の最高経済ブレーン”とも言われる榊原英資氏の

「日本が目指すのは、フランス型福祉国家」

について紹介しました。

気になるのは、ここ数年の榊原氏の変遷ぶりです。

「変遷」から、その真意をつかんでおかなければなりません。

たとえば、『日本の論点2007』(文藝春秋編)では、

「財政はすでに破綻している――誰も知らない潜在的債務の実態」

衝撃的なタイトル記事を書かれています。

「財政はすでに破綻している」

とは、どういうことでしょう?

榊原氏の論点を以下に整理してみます。

①2010年以降、財政沈没危機が顕在化する

「一部に“政府の債務は資産売却によってかなりの債務が削減できる。

ネットの債務はそれほど高くない”という論議がされるが、これは全くの論外。

とくに金融資産の大部分は、年金など、将来の債務や他の特別会計への債務を抱えている。

国債・地方債を中心とする800兆円に達する国・地方の債務を帳消しにできるようなものではない。

こうしたたわいのない論議をしていられるのは、実は、財政再建問題には若干の時間の余裕があるためだ。

個人金融資産残高は1400兆円ほどあり、今のところ債務をカバーできている。

ここ4~5年は危機が顕在化することはないだろう。

しかし2010年以降、危機が一気に加速していく可能性がある。

逆に言えば、この4~5年の間に日本の財政は、いくつかの構造的問題を解決しておかなければ沈没してしまう可能性が高い」

榊原氏は、「いくつかの構造的問題」の一番手に「地方」を取り上げます。

②地方交付税特別会計は、事実上破綻

「地方歳入のかなりの部分が、郵便貯金や年金積立金でまかなわれ、現在もその状況がつづいている。

毎年借金を重ねている地方交付税特別会計は、事実上破綻している。

借入金は、主として財政投融資資金特別会計からなされ、財投債などを通じて事実上、郵便貯金や年金の資金を原資としている。

国の国債費を除く歳出の40%が地方に回されているだけでなく、国の金融資産を食いつぶして、地方の歳出が行なわれている。

財政投融資資金特別会計が持っている金融資産、貸出は、地方が地方税増税などで新たな財源をつくるか、歳出を大幅にカットして大きな黒字を出さない限り、返却されない不良債権なのだ。

ただ地方自治体を一方的に責めるわけにはいかない。

10兆円以上の国庫支出金は、じつはヒモつきの補助金になっている。

地方自治体が歳出削減し、財政再建に取り組んでも、その分だけ地方交付税・交付金などを削減され、努力をしても意味がないというケースが少なくない。

日本全体の歳出の大半を占める地方に権限と責任を与えない限り、財政の無責任体制は続き、早晩構造的破綻がしのびよってこざるをえない」

(次回へつづきます)

●用語解説≪榊原英資(さかきばら・えいすけ)≫
1941年東京都生まれ。
東京大学経済学部卒。
大蔵省(現財務省)国際金融局次長、理財局総務課長を歴任。
97年~99年財務官を務め、「ミスター円」の異名をとる。
現在、青山学院大学教授、財団法人インド経済研究所理事長。

●用語解説≪社会資本整備総合交付金≫
平成22年度より国土交通省管轄の地方公共団体向け“個別補助金”を一つの交付金に原則一括。
地方公共団体にとって公共事業の自由度が高まった。
一般予算で、2・2兆円。

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