資源エネルギー庁・野田豊和課長補佐インタビュー07 「バッテリー交換式EVと安全性」
経済産業省資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部新エネルギー対策課の野田豊和・課長補佐のインタビュー7回目です。(以下、「エネ」)
昨日は、
「レアアース(希土類)を使わない新構造のハイブリッド車(HV)向け磁石モーターの開発に成功。
電気自動車(EV)にも応用可能」
というニュースに感動したことをお伝えしました。
「レアアースが禁輸になったどうする?」
「じゃ、こういう方法がありますよ」
と、玉手箱のように代替案を出してくれた科学の力。
そんな科学技術に敬意を払う意味でも、革新型蓄電池とスマートグリッドの開発や課題について取材を進めてみます。
「日本が進むべき道」
や
「世界の中の日本」
が、見えてくるかもしれません。
鳥巣 EVについて、経済産業省が注目して行っていることは?
エネ 優秀な蓄電池を使ってそれを走らせて、実証データ-を積み重ねていっているところです。
EVを造っている他の国で、いくら「規格」といっても、エビデンス(検証結果)による根拠がないですから。
実証データ-を持っている日本は、有利になってくる。
しかし日本も、EVが走り出したのは去年。
量産車を出したのが今年。
現在は自動車メーカーさんの状況とか、劣化状況とかを調べているところです。
そこから得られた状況から規格案を提出していく。
そういう事をすることによって量産化というのが簡単になってきて。
価格の安い蓄電池ができて、車全体の価格を安くしていける。
鳥巣 EV用のインフラ整備の状況は?
エネ それも今は、日本は勝っています。
急速充電器を普及すればいいのか、普通充電でいいのか。
いまデータ-を収集しています。
急速充電器が普及してきた時に、どういう問題が起こるのか。
もしくは車が途中で止まってバックアップ(支援)を必要とした時にJAFみたいなのがあれば、急速充電器を持たずとも、そこに横付けをして充電すればいいのか。
必ずしも高いお金をかけて急速充電スタンドを造るべきかどうか。
など、いま方向を探っているところです。
鳥巣 夜中に家のコンセントから充電しておけば事足りるということになりませんか?
エネ 使っている方の心の持ちようなんですね。
自宅に帰って来た時にすぐコンセントにつなぐ、というその行為が普通にできれば充電スタンドは要らない。
一日で使うのは、数10キロでしょうから。
一晩で充電できてしまう。
休日の時は遠出をしたりするかもしれませんけども。
鳥巣 ただ家庭用のコンセントにつないで充電すると蓄電池の劣化を早めませんか?
エネ 昔ほどではないですね。
鳥巣 そうなると将来、ガソリンスタンドは?
エネ そこはですね・・。
ガソリンスタンドを閉鎖した場合はどうなるか、を考えたりするのは、うちの石油部が担当なんですが。
そこの部分は、こうだとは言えない。
EVと普通のガソリン車の間にプラグイン・ハイブリッドがある。
そうですねえ・・。
エネルギー供給マネジメントとして、ガソリンスタンドがどうなっていくかというのは、ちょっと・・。
鳥巣 充電ではなくて、バッテリー自体を交換するという方法もありますよね。
エネ ええ、イスラエル資本の企業が入ってきています。
環境省が実証でやっています。
鳥巣 「世界初のバッテリー交換式EVタクシー」
と言うので視察予約をしていたら、前日の夜になって担当者から電話が。
「トラブルが起こった」
と。
エネ ほうほう。
鳥巣 「何のトラブルですか?」
と聞いたら、
「100%充電ができているかの確認を通信を飛ばしてやっている。
それが80%くらいしか充電ができていない可能性が出てきている。
大丈夫だとは思うが、国の実証でもあるので安全性には万全を期したい。
米国製なので、アメリカからエンジニアを呼ばなくてはいけない。
しばらく時間がかかるかもしれない」
と。
エネ バッテリー取り換え方法も、本当にいいのかどうかは微妙なところでして。
あれだけ大きな電池だと、不慮の事故が起こると感電死してしまう可能性もあるものですから。
端子が剥き出しになっているとは言いませんけれども。
大きい事故がボンと起きた時に、何がしかの問題で接触面に何かが起きると火花が散ったり。
いろいろあるんじゃないか、と憂慮はしていて。
まだ実証中なので、何とも言えないですねえ。
鳥巣 取り換えというのは、手っ取り早いことは確かですけどね。
エネ EVでは、メーカーは違う車だけれど、電池は同じ形式で取り換えっこをするようになります。
今はガソリンスタンドで給油が2,3分ですむ、というのと比べると、充電時間がよけいに長く感じてしまう。
そうだとすると取り換え式のほうを使うのかもしれません。
ただ安全性の観点からすると、どうかな?
というのはありますね。
日本で運用する場合、ぴったりはまるとは思われない。
ある程度余裕をもってはめられるという事は、隙間があるということですから。
何かトラブル的な事が起きないのかなあとは思っています。
取り換えの部分では、標準化というのが非常に重要になってきます。
鳥巣 実証には時間がかかりそうですね。
(次回へつづきます)
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