鳥巣清典の時事コラム01 「政治空白と国益損失」 | 絶対に受けたい授業「国家財政破綻」

鳥巣清典の時事コラム01 「政治空白と国益損失」

菅首相の続投が決まりましたが、9月15日の産経新聞の一面コラムに衝撃的な記事が載っていました。


「『小沢一郎』はなぜ負けたか」


という見出しで、執筆者は乾正人・政治部長。


「3カ月以上の権力闘争によって、国益が損なわれてしまった事実を忘れてはならない」


その一つの例として、下記のような事実が明らかにされていたのです。


「あまり知られていないが、資源獲得競争でも後れをとった。


南米ボリビアには、エコカーなどに使われるリチウム電池に欠かせないリチウムが大量に埋蔵されている塩湖がある。


この権益確保をめぐって日本、中国、韓国などがしのぎを削っているが、6月に予定されたボリビア大統領の訪日が延期された。


鳩山氏が突然、首相を投げ出したためだが、大統領は先月、韓国を訪問し、経済協力の約束をとりつけた。


日本は先手をとられてしまった。


安倍晋三政権以降、毎年首相が交代することに象徴される不安定な政治状況が、日本の国力を確実に蝕(むしば)んでいる」 


私は、(なんという失態)と、歯軋りをしていました。


(株)第一生命経済研究所の嶌峰義清・経済調査部主席エコノミストのロング・インタビューを連載しています。


いろんな専門家にインタビューを重ねてきましたが、成長戦略を具体的に語る人はほとんどいませんでした。


その点、嶌峰氏は明確です。


「日本が集中的に投資するべきは、電気自動車に使う電池の開発。


電気の供給を効率化するスマート・グリッドという次世代の電力網」


と、目標を掲げてくれました。


私はこの構想を日本の成長戦略の中核に据えるべきだと確信しました。


新エネルギーの研究・開発には、日本人を鼓舞するだけの夢があります。


にもかかわらず!政治の空白が、みすみすリチウム資源の権益を逃してしまいかねないことになっていたのです。


ボリビア大統領の訪日のお膳立てをした関係者は、天を仰ぎ、怒りで歯軋りをしたに違いありません。


日本の命運を賭けて動く場合、こういう失点は取り返しがつかないものになってしまいます。


嶌峰氏は、こう述べています。


「(このプロジェクトは)日本の財政も含めた帰趨を決める。


この5年くらいが勝負で、国盗り物語で遊んでいるヒマはないはずなんです」


こういう失態を看過できるような政治家は、


「政治主導」


など口が裂けても言って欲しくはありません。


●用語解説≪リチウムイオン電池≫
充電可能な二次電池の一つ。
正極にコバルト酸リチウム、負極に炭素材を使用し、両極間をリチウムイオンが往来する電池。
短時間の充電で長時間使用できる。
カドミウムのような有害物質を含まず、エネルギー密度もニッカド電池に比べて大幅に高い。
[参考文献=大辞泉]



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