エコノミストの嶌峰義清氏インタビュー10 「アメリカのエネルギー戦略」 | 絶対に受けたい授業「国家財政破綻」

エコノミストの嶌峰義清氏インタビュー10 「アメリカのエネルギー戦略」

(株)第一生命経済研究所の嶌峰義清・経済調査部主席エコノミストのインタビューの10回目です。


鳥巣 日本人も、世界的な視野で考える必要がありますね。


嶌峰 現在は日本だけでなく、世界的に需給ギャップ、デフレに陥っているんです。


今までは需要をアメリカにお願いしていたのに、アメリカが駄目。


次にお金持ちの日本もヨーロッパも駄目。


どうしても、みんな中国に豊かになってもらって、なんとか物を売って食いつないでいこうとしている。


インドに対しても然りでしょうね。


なにせ、その2つの国とも頭数が多いので、資源が急速になくなります。


資源がなくなるそこを埋める技術というのが、いちばん効率的かつ旨味がある。


いちばんガーンと値段が上がっているのが原油なので、ガソリン以外にも、まつわる商品はものすごく多岐にわたります。


民需をどう抑え、抑えられるのであれば切り換える。


鳥巣 石油に代わる新エネルギーの開発。


「アメリカが、最大のライバル」とおっしゃる理由は?


嶌峰 アメリカは時代の先を見越して、戦略を立てるのが早いですからね。


ブッシュが大統領になって最初の演説の中で、「原発を倍にする」と言ったことがあったんです。


ブッシュはテキサス出身で、オイルまみれ。それがどうしてオイル離れなの?と思ったんです。

●用語解説≪米国第43代大統領 ジョージ・ウォーカー・ブッシュ≫
在任期間は、2001年1月20日~2009年1月20日。
2001年9月11日に発生した同時多発テロ事件の後に「テロとの戦い」を発表してアフガンに侵攻。
2003年3月には、イラク侵攻を命じる。

嶌峰 電気を火力から原子力に移していく、と。


スリーマイルでの原発事故があってトラウマになっているはずなのに原子力を増やすと言った。


当時のアメリカ経済からいっても、すごく違和感がありました。


一方で、国家の戦略的備蓄を増やしていくと。


国がかかえる石油を倍増すると。


で何年後かに、原油に対して長期の試算をしたら、はっと気がついて。


鳥巣 何を?


嶌峰 要は、中国がドンと成長してきた。


原油の消費量がドーンと増えている。


一方で備蓄量はものすごい勢いで増えませんから。


早ければ2015年には逆転する。


なくなるわけではないが、消費する量が早いので逆転する。


すると、お金を出しても満足に石油が手に入らなくなる時代がやって来る。


そのときにアメリカという国が考えた一番重要な問題は、原油が満足に手に入らなくなると、有事の際に戦車とか戦闘機が動かなくなる。


それは避けなくてはならない。


国が買う原油をぜんぶ軍事に持っていく。


民間部門は、原油は使わない。


ということなんです。


鳥巣 アメリカは軍事的な安全保障を最優先に考える。


ということを覚えておく必要がありますね。


嶌峰 最終的に戦争が起きた時に、最後まで戦車とか動かしたほうが勝ちですから。


ま、ミサイルは別として。


戦闘機とか戦車とかを電気に換えると莫大なお金がかかる。


それは後回しにする。


いかに戦争をする時の原油を国が持っておくか、ということにもう2000年の頃から動いている。


で2004年頃に、中国がそれに気がついて、あわてて世界中の石油を買いに走った。


その頃、日本は何をやっていたかというと、帝国石油が協定でばら撒いたどうしたこうした。


感覚が鈍いんです。


鳥巣 世界の動きを理解するには、彼らの戦略性を見ていなければならない、ということですね。


(次回へつづきます)


絶対に受けたい授業「国家財政破綻」

¥1,575
楽天