エコノミストの嶌峰義清氏インタビュー08 「トヨタの危機感」
(株)第一生命経済研究所の嶌峰義清・経済調査部主席エコノミストのインタビューの8回目です。
鳥巣 ポスト石油の産業革命を日本がリードする構想。
もう少し詳しく教えてください。
嶌峰 電気自動車の技術がスタンダードになったとすると、石油、ガソリンは、10年か15年で需要を満たさなくなってしまう。
価格は、青天井に上がっていく。
そうすると世界中の車がぜんぶ電池を使う。
これは日本がこれまでに何10年と稼いできた規模より大きい。
「そんなことが可能ですか?」という話なんですが。
鳥巣 政府の認識はどうなんですか?
民主党代表戦でも、菅首相の「雇用、雇用」とか、小沢(一郎・前幹事長)氏の「国債増発」発言とかは耳に残っても、国民を鼓舞するような目標は出てこない。
嶌峰 政府の中にそれだけ具体的に絵を描く人がいないんです。
世界的にどう動いているかを把握している人が少ない。
仮に理解したとして、それで選挙を戦えるかいうこと。
鳥巣 あ、やっぱり選挙が問題になるんですか。
嶌峰 税金がこども手当に回ってくるのであれば、国民にある程度は戻ってくる。
でも、直接国民には返さない。
とりあえず取った税金を、僕が言ったイメージの世界に賭けるからつきあってくれ。
それを説得できるかどうかは、非常に難しい。
それだけの大風呂敷を広げて説得する意欲がないとそれは動かない。
直接に関係のない分野からは、「不公平だ」という話になる。
同じ企業であっても、そこを突破するのはなかなか難しい。
鳥巣 トヨタが、アメリカの電気自動車メーカーのテスラ・モーターズと提携しました。
嶌峰 あれには、僕もびっくりしました。
アメリカ政府の援助を受けているとはいえ、ベンチャー企業と提携するとは・・。
トヨタが、それほど危機感を持っている現れだと思いますね。
鳥巣 テスラは、リッター380キロ走行に成功したとか。
やはり最大のライバルは、アメリカですか。
嶌峰 だと思います。
大きな成長分野がはっきりと見えた時点で、それこそ総力をあげて開発に取り組んできています。
(次回へつづきます)
- ¥1,575
- 楽天