エコノミストの嶌峰義清氏インタビュー06 「破綻論と成長論」
(株)第一生命経済研究所の嶌峰義清・経済調査部主席エコノミストのインタビューの6回目です。
鳥巣 国家財政破綻危機の議論は今後、どういうふうに進めていくべきだと思われますか?
嶌峰 財政の話になると、「無駄に使ったからじゃないか」とか、どうしても突っ込まれるじゃないですか。
それよりは、破綻は近づいているけど、こういう方法で回避できる。
そうすると、皆さんのところにも仕事が行きますよ、と。
前向きなトークを政府も官僚もマスコミもしないと、今の日本人は、なかなか聴く耳を持ってくれない気がします。
鳥巣 私の周りでも、まだ、そういう人は多い。
嶌峰 なぜかって言うと、
財政の穴を埋めることが目的のように聞かれると、オレの生活は20年でここまで落ちたのに、まだ穴を埋めることをしなくてはいけないのか、と考えます。
となるとモチベーションが湧かない。
鳥巣 財政問題は、経済が再生できないことが、本質的な問題だと言われますね。
嶌峰 日本再生論を広めていくという事が大事です。
国民が聞くだけじゃどうにもならない。
考えるためには、前向きに見てもらわなくてはいけない。
それをうながす作業が必要な気がします。
そこで初めて国民は、「何を考えているんだ?」と聞いてくるし、聞かれれば政治家は答えなくてはいけませんから。
国家論、成長論というものを、真剣に考えて語り始める。
そこから、じゃ、どの分野からお金を使おうか、というコンセンサスが絞られてくる。
破綻論だけを描いても、おそらく今の日本人は、たぶん奮起もしないし、パニックにもならない。
粛々(しゅくしゅく)と自分の守りを固める。
城の周りに壁を塗っているだけ。
稼いでも、お金を使わない。
鳥巣 ええ。
嶌峰 もうひとつ、そういうパニックを防ぐためには、何が必要で、どんな世界が待っているかを知った上で、どっちを選びますか?
という事を言わないと、なかなか向いてくれない。
鳥巣 菅首相が財政破綻危機を訴え、消費税を持ち出したけど参議院選挙で惨敗した。
嶌峰 菅さんが、「あと2、3年でギリシャみたいになりますよ」と言ったって、日本人は生活ができていますから。
じゃオレだけ守ろう、という話になるだけ。
成長のためには、日本人が努力しなくちゃいけないわけですが。
努力してくんないですよね。
国に対しても。それだと国家財政の破綻を回避することができない。
国民が、自分のやりたい仕事がないから失業者でいることから、自分が働くことによってその次の生活が待っている、と。
価値判断を変えるようにしていかないといけない。
破綻した時は、こういう生活になりますよ。
でも成長すればこういう世の中になりますよ。
ということも、合せてちゃんと出してあげないと。
(次回へつづきます)
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