エコノミストの嶌峰義清氏インタビュー05 「国の借金は、誰に借りているの?」
(株)第一生命経済研究所の嶌峰義清・経済調査部主席エコノミストのインタビューの5回目です。
鳥巣 国の財政危機を論じていく時に、具体的には消費税増税について判断していく場合に、国民はいくつかハードルがあると考えていると思っているんですね。
ただでさえ不況で生活に困窮している上に、これ以上の重税はたまらない、という反発はもちろんあります。
それ以外にも、無駄な政府支出が行われていないのか。
公務員の人件費の削減はどうなっているんだ。
そして、埋蔵金の存在の有無。
いったい、どれくらいあるのかが判然としない。
嶌峰 鳥巣さんの本の中でも、(元財務省。現在、嘉悦大学教授の)髙橋洋一先生が「埋蔵金がいっぱいあるじゃないか」と、「天下り先を減らせばいいじゃないか」とおしゃっている。
鳥巣 髙橋先生は、「公務員が老後のために、天下り先の特殊法人などに300兆円くらいを貯め込んでいる」と。
そこまで言われると、政府に協力しようとしても、国民の総意として前向きに議論ができにくいところがあります。
ここをクリアにしなくてはいけないでしょうね。
嶌峰 家庭の収入が400万円ある、と想定してみます。
収入以上に600万円を使っている。
そのうち100万円は、奥さんがヘソクリでどこかに貯め込んでいる。
だから、そのヘソクリを出しゃいいんだよ、という話なんですが。
ヘソクリは100万円しか使っていないとするならば、400万円の収入に対して、そのヘソクリの分も含めて500万円の支出がある。
しかし、その支出は、子どもが大きくなるにつれて、だんだん大きくなる。
とすれば、方向性としては、やっぱり・・。
そのヘソクリの一部を使えばだいぶ違うんですよ、という話はもちろんあるんですが、財政の構造自体は変わらない。
ということと、その分、資産をぐっと減らすわけですから。
結局、資産を担保にしてお金を借りているんですよ。
という構造からすれば、資産も債務も圧縮されれば、担保価値分としての資産が減れば、やっぱり借りられる限度は同じですよ。
鳥巣 俯瞰的に見れば、そういうことになるんでしょうね。
「どうして、へそくりを隠しているんだ」とか、感情的な問題は残りますね。
嶌峰 もっとアレなのは、国の借金は、誰に借りている?
私たちが貸している?
それを私たちが返さなくてはいけない?
日本人に日本人が、返す必要はない。
国が返せばいいでしょう、という話なんです。
国が借金を返す方法が税金なんですが。
そういう意味では、「税金を上げますよ」という時に、国は相応の説明が必要になる。
そこが、我々が借金しているみたいな話になっている。
我々は、道路とか便益を受けているわけで、そこは本当は考えなきゃいけないんですが。
上目線から言われた時に、日本人が「受け入れられません!」と言うのは、それはその通りです。
だって、我々が国にお金を貸しているわけですから。
その肌感覚はあると思う。
おばさんが財政が全然分かっていなくても、「なんで?」という。
だから、国の無駄遣いが今でもじくじく言われる。そこらへんを、つまびらかにした上で言わないと。
それで一番マズイのは、しかも国債が何のために使われているかを国民が分かっていないということなんです。
これが本当に一番マズイ。
鳥巣 それでいて、その国債が暴落するかもしれない、と。
急にそういうことを言われても、一体どういうことなんだろう? と思いますよね。
(次回へつづきます)
PS
財政問題は、分からないことが多いと思います。疑問点があれば、どしどし書き込んでください。取材の参考にさせて頂きます(鳥巣 拝)
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