第43話「四国ランダムチャリ遍路に挑戦」(愛媛県) | 地鶏

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自転車日本一周旅〜人生で大切なことはすべて旅で学んだ〜

 

自転車旅も終盤を迎え、ようやくゴールが近づいてきた。

旅の締めくくりは四国八十八箇所札巡り、お遍路さんだ。

日本海の鳥取県境港から中国山脈を越え、瀬戸内海へ。

自転車専用道路が完備されているしまなみ海道を走り、四国の愛媛県今治市にやってきた。

去年しまなみ海道を走ったのは確か、5月だったから、自転車旅を始めて1年以上が経つのだ。

今は梅雨間近の6月4日だ。

今治市の市民の森公園でテントを張った。

 

 

簡単にお遍路のことを説明する。

四国に点在する弘法大師(空海)ゆかりの札所の総称を四国八十八箇所という。この四国八十八箇所を巡ることを特に遍路と言い、地元の人々は巡礼者を「お遍路さん」と呼んでいる。

一般的には「四国遍路」「四国霊場」とも言われる。

1番札所徳島県「霊山寺」から88番札所香川県「大窪寺」までは四国をぐるりと一周網羅され、全長1400キロの距離となる。歩き遍路は普通40日前後の日数が必要となる過酷な巡礼旅だ。自転車の場合だと20日ほどで巡ることが出来るだろう。ということは、自転車日本一周旅も3週間でフィナーレを迎える。

88の霊場を一気に巡るのが「通し打ち」と呼ばれ、何回かに分けて巡るのが「区切り打ち」とそれぞれ呼び名がある。

通常、徳島県→高知県→愛媛県→香川県という順番で時計回りに参拝するのが「順打ち」で、その逆が「逆打ち」だ。また、徳島なら徳島だけ一県を回るのは「一国参り」と言われる。

 

 

なぜ、こんなマニアックな情報を知っているかというと、これまでペダルを漕ぐ時間とほぼ同等の時間にあてたのが読書だからである。雨の日は多くの時間を市町村の図書館で過ごした。また地方の古本屋に立ち寄り、安い古本を購入しよく読んだ。

テントの夜や休憩など時間があくと文庫本のページを開いた。ジャンルは様々だ。ある作家をとことん追求したり、旅本を中心に自転車旅を追体験したり、時には現実味のある仕事関係など、道中読破した本は200冊にのぼる。

自力旅を追体験した本に、「西国33か所ガイジン巡礼珍道中」「ニッポン百名山よじ登り」「ニッポン縦断歩き旅」「四国88か所ガイジン夏遍路」という日本アウトドアライフ良いとこ取りをした文庫本がある。

日本をこよなく愛するニュージーランド人が執筆している1冊に「四国88か所ガイジン夏遍路」という本がある。

日本を心から愛する著者が、「本当の日本」を探して、四国八十八箇所霊場巡礼の旅に出発。お遍路のなかで、一番厳しく、エライとされる「歩き遍路」を選んだ著者が、四国の人々やお遍路仲間とさまざまな出会いを経験した、暑い30日間の爆笑紀行本である。

 

文中に、四国遍路の魅力が端的にまとめられていたので紹介する。

 

「お遍路の極意は寺そのものにはない。

 巡礼の旅を終えるために肉体面や精神面での

 過酷な試練を克服することが必要になります。

 厳しい巡礼を続けるには疲労や足の痛み、

 悪天候と闘わねばならず難行苦行の連続といってもいい。

 そこに益があると弘法大師は考えた。

 難行苦行は寺そのものにあるのではなく、

 寺と寺との間で体験するわけだ。

 だからエアコンの効いたバスで周るお遍路たちは、

 はなから巡礼の目的を逸脱したことになろう。」

 

結果よりそのプロセスにこそ大切な要素があると唱える四国八十八箇所お遍路さんの存在が旅の中ごろより気になり始めていた。

自力旅の締めくくりは「自転車お遍路だ。」とその頃より決めていた。

 

本日より愛媛県の札所からお遍路を始めることにする。愛媛、高知、徳島、香川をめぐる名付けて「反時計回りランダム八十八箇所巡礼自転車遍路」だ。

略して「ランダムチャリ遍路」だ。

気合の朝は早い。感情が高ぶって早く目覚める。小学生の時の遠足の朝のようだ。

公園のど真ん中に張ったテントに刺さる朝日が眩しい。

しばらくすると野営地周辺に、続々と人が群がってきた。

近所のご老人たちだ。

まだ朝の6時だ。

次から次に人が集まってくる。

市民の森公園で大きなイベントがあるのだろうか。

50名近くのご老人たちが、公園のど真ん中に張ったテントを囲むような格好になってしまった。

まいったなぁ、と思った矢先、大音量のラジオ体操が鳴り出した。

毎朝、6時30分より、地域の住民を対象に健康増進のためのラジオ体操なのだ。

テントの中で過ごすのが気まずくなり、ご老人たちと一緒に「オイッチニィ、」とラジオ体操をする。

ラジオ体操をするのは、小学生の時の夏休み以来だなぁ。

記録用紙にハンコが押されるのが嬉しかった。ラジオ体操の後に皆でかくれんぼや鬼ごっこをしたことを思い出した。

ご老人たちはラジオ体操が終われば即解散し、蜘蛛の子を散らすように公園からいなくなった。

テントや僕の存在は空気のようだった。誰も無断野営宿泊を指摘することなかった。

何者も自然と受け入れる風土が四国にはあるのだろうか。

四国の人々、四国の海、四国の清流、四国の山河、四国の風を慕う懐かしい気持ちが強くなる。

遍路道でどんなドラマや宝物に出会えるのか。

自転車遍路が何をもたらしてくれるのか。

どんな御利益があるのか。

 

この自転車日本一周旅は、テーマ「快適さを求めて」を掲げているものの裏テーマは自分を鍛えるという修行の側面もある。

厳しい修行の世界には「99日目を以て道半ばとせよ」という教えがある。

厳しい100日の修業において、最も大きな壁が訪れるのが99日目と言われる。迷い、挫折、異変、トラブル、アクシデントなどがゴールを目前にした時にやってくる。

フルマラソン でコツコツ4時間かけて走り通してきたのに、ゴールが見えた瞬間、ほっとして気を緩め思わず走っていた脚を止めてしまう。歩いてしまうという事態を招いてしまうことがある。最大の壁が99日目に訪れるのだ。

心願成就する直前にこそ、気を引き締めワキを締めろという事だ。

 

1年以上経つ自転車日本一周旅もゴールまでもう一歩。

長い旅の結願まで、もう一歩のところまで来た。

日本古来より「九」と言う数字には、様々な教えや精神性があるようだ。

苦(九)を乗り越えて、充(十)となるのだ。

苦しい上り坂を乗り越えた先に楽しい下り坂があるように、「苦」を乗り越えると「充実」があるのだ。

九は不思議な数字。

九はどんな数字を掛け合わせても最終的に九になる。

 

おお、なんだ不思議な「九」という数字は。

どんな数字でも、次のような操作をすると、必ず九に戻ってきてしまうのだ。

1. 適当な数字に9を掛ける。

2. 出た数字の各桁を足す。

3. さらに一桁になるまで繰り返す。

 

今日は6月4日だ。

ここでは、64という数字で試してみる。

この数字に、9を掛ける。

64×9=576

次に、この数字の各桁の数字を足してみる。

5+7+6=18

さらにもう一度、各桁の数字を足す。

1+8=9

 

おお、9になった。

適当な数字に9を掛け合わせても結局9になる。これは偶然なのだろうか。

もう一度やってみよう。

 

今度は、411だ。

旅を始めて今日で411日目となる。

携帯電話の計算機機能を使って、早速やってみよう。

411という数字に9を掛ける。

411×9=3699

この数字の各桁の数字を足していく。

3+6+9+9=27

各桁数の2と7を足すと9になる。

 

つまり、9という数字は「苦」を意味し、苦を乗り越えなければならないのだ。

苦しみから逃れても、また苦しみはやってくる。

苦しみを乗り越えた先に、充実の10が待っているのだ。

 

「兆し」という言葉ある。

物事が起こりそうな気配を指す言葉、千、万、億の次の位が、「兆」。

出来事が起こる兆しや気配、タイミングはそこらじゅうにあるという意味だ。

その時々にどのような心で物事を悟り、受け止めるかが大事になる。

苦しい時は、「逃」げている状態。

嫌なことや不得意なこと、面倒くさいことを遠ざけ、物事から逃げている状況では心は苦しくなる。

苦しみの特徴は次の3つ。

「苦しみと闘おうとすればするほど、その苦しみは大きくなっていく」

「苦しみから逃げても、どこまでも追ってくる」

「苦しみは必ず喜びに変わる」

 

ではどうすれば苦しみが、楽しみや喜びに変わるのだろうか。

 

チャレンジ精神をもって物事に取り組む時だ。

「挑」む姿勢だ。

積極的に挑戦心を持つこと。

新しい挑戦をすると次から次へと大変な事が起こるけど、オレはそれを修行と呼んでいる。

過酷な自転車日本一周旅やお遍路さんに挑戦したら人生が変わるわけではなく、挑戦を通じて自分と向き合うから変わるのだ。

過酷な旅が人生を変えてはくれるのではない。

ちょっと哲学的になったけれど、自転車日本一周旅の締めくくりの四国88ヶ所札巡り、お遍路さんの苦しみと楽しみと味わい、自分を内観しようと思うのだ。

挫折や失敗をしたっていいじゃないか。

苦難に立ち向かっている人やチェレンジしている人と出会えって、自分と出逢おう。

 

「失敗」したってことは、「挑戦」したってことだぜ。

あいつは果敢に挑戦している奴だと褒めてるあんたが一番のチャレンジャーだ。