第18話「茅ヶ崎の怪しい夜」(神奈川県) | 地鶏

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「茅ヶ崎の怪しい夜」

 

自転車旅は国道6号線を爆進し、すべての一般国道の起点となる東京日本橋へ。

さすが花の都大東京だ。

すごい交通量だ。

すべての道は日本橋に通じる起点から国道1号線に乗り換え、大都会を横浜方面に進む。

 

 

東京タワー、国会議事堂、東京駅などテレビでしか観たことのない風景が過ぎていく。

国道1号線を進んでいくと正月の箱根駅伝のテレビ放送で観た風景が続く。

一桁代の国道は、歩道が完備されており、比較的自転車で走りやすい。

横浜駅を過ぎ、茅ヶ崎にやってきた。

今晩は友人宅に泊まらせて頂く。

北海道の最果ての島「礼文島」で民宿アルバイトを1ヶ月間した。そのアルバイト仲間の川さんが神奈川県茅ヶ崎市に住んでいるのだ。

国道1号線沿いの茅ヶ崎駅のすぐ近くにアパートがある。

礼文島を離れる時、川さんは「必ず茅ヶ崎に来いよ、俺に会いにこいよ。」と笑顔で見送ってくれた。

先にアルバイトを終えた俺は、その後の顛末も気になっていた。

約3ヶ月ぶりの再会だ。

 

「川さん、久しぶりやな。恋というから愛に来たぞ!」

 

「やぁ、田野ちゃんも元気だったかい?」

 

約1ヶ月間、かなりきつい民宿アルバイトだった。キツいバイトだけあって、二人の絆は強く結ばれた。

早速近くの居酒屋に飲みに行く。

川さんの他にナオさんという30歳の女性の3人で飲んだ。仕事の同僚のようだ。

タイトなスーツに身を包み、仕事ができそうなキャリアウーマン風だ。

 

 

やはり酒のツマミは礼文島での過酷なアルバイトの話だ。

 

「しかし、田野ちゃん、ありゃぁ、人間的な扱いじゃなかったぜ。」

 

「ホンマその通りや。思い出しただけでゾッとするわ。」

 

苦しい練習を耐え抜いた部活の仲間のような懐かしさを感じさせる。

 

「俺が礼文島を離れた後は、どんな感じやった?」

 

「相変わらずやった。田野ちゃんがいなくなった後、1人バイトがきたけれど、過酷すぎて1週間でいなくなったよ。」

 

(※詳細は第10話、11話の「哀愁の元◯荘物語」に譲る)

 

アルバイトの思い出話に花が咲く。

アルコールもどんどん二人に注入される。

そばのナオさんはクスクス笑っている。

川さんの標準語と俺の関西弁のハーモニーが絶妙におかしいいのだ。

久々の再会の嬉しさと苦難を共に過ごした二人だけの武勇伝だ。

まるで大学の体育会系のような飲み会になった。

思えば川さんとは、たまたま3ヶ月前に礼文島の民宿で偶然出会った縁だ。

居酒屋を出た後も、二人で肩を組んで歩く。

典型的な酔っ払いだ。

 

「よ〜し、田野ちゃん御開きだ。今晩はナオの家に泊まればいい。俺ン家は彼女がいるからダメなんだ。」

 

「えっ、川さんの家じゃないの?大丈夫なのかな?」

 

さっきまでの関西弁と酔いがどこかに一瞬で吹き飛んでしまった。

 

「ここからナオの家はすごそこや。歩いて行ったらええわ。」

 

「でも川さん、いいのかな?女性の家だからさ。」

 

太っ腹な大将になったような川さんは変なアクセントの関西弁を使い、俺は部下のような標準語を使う。

 

「自転車と荷物は、明日俺ん家に取りに来たらええわ。じゃあな。」

 

と言って、川さんは一人で歩いて帰っていった。

 

残された俺とナオさんは、少し気まずい雰囲気になりながらもトボトボとナオさんのアパートに向かった。

酔いはすっかり覚めてしまった。

ナオさんのアパートは2階だった。

階段を先に上るナオさんのタイトなスカートが太ももに食い込む。

生唾を飲むような緊張感が走る。

アパートに入り、窓を開放。

湘南の心地いい海風が室内を駆け巡る。

俺の心臓も口から飛び出しそうだ。ドキドキ感が続く。

 

 

ナオさんは布団を二組並べて敷いた。

一体これはどういう展開?

静かに怪しい茅ヶ崎の夜はふけていったのだ。