野生化したインコの大量発生

先日、国内で飼育されていたインコが逃げ出し、野生化して大量発生している問題が取り沙汰されていたので記事にしました。

セキセイインコ黄記事のあらまし

ペットとして飼われていた外国産のインコが逃げ出し国内で野生化している。

在来種に悪影響を与えている。

漏電事故、農作物への被害、病気の媒介などの被害が出ている。

国内で飼育されていた外国産の動物が逃げ出す等して野生化する事例は珍しくない。

通常、飼育環境を外れた外国産の生物は本来の生息環境とは異なる日本の環境には適応出来ずに死んでしまうか、生存出来た場合でも単体では子孫を残す事が出来ぬ故に絶えてしまう。

しかし、その生物が環境適応能力の高い種であり且つ偶然にも同種あるいは近縁種との交配が成された場合には国内にて世代を跨いで定着し、帰化生物となる。

今回その例として取り上げるのはオウム目インコ科のワカケホンセイインコ。原産国はインド、スリランカであるが日本の環境に順応した個体が千単位にまで増殖している。

体長は40cm程度で中型インコに分類され、鮮やかなグリーン調の羽毛に紅色の嘴が目立つ。


1969年に東京都内で野生化した個体が発見されたのが最初であり、その歴史は半世紀程に及ぶ。それ以来本種は生息地を拡大し、現在では北は新潟県、南は宮崎県までと広範囲に渡る。

ペットとしても飼育されている本種の帰化がどの様な弊害に繋がり、如何なる問題を引き起こしているのかを順に見てみよう。


在来種への影響

帰化生物の弊害に共通する問題が、在来種への影響だ。この影響は四分類する事が出来る。

捕食…在来種を捕食する。
競合…在来種と共通する餌資源、生息環境、営巣場所を競合し奪取する。
交雑…在来種との交配による遺伝子汚染。
媒介…病原菌や寄生生物を持ち込む。

帰化に成功する多くの外来生物の生命力は、在来生物のそれを超越する事が多々ある。よってたった一種の外来種の存在が、数種の在来種を絶滅に追いやる事も稀ではない。

これは即ち、ある区分された範囲の生態系バランスを崩壊させる事に繋がる。長期的に見れば、一種の外来種が森ひとつを破壊する力を秘めていると言っても過言ではない訳だ。


漏電事故、農作物への被害、病気の媒介

本種が電柱に営巣する事によって漏電を引き起こす事や、種子、果実を食べる事が農作物への被害を齎している事、オウム病などの病気を持ち込む事も問題視されている。


まとめ

人間が在来種の保存に努める背景には何があるだろうか?文化や伝統の様に国の宝を後世へ繋ぎ遺そうとする想い、永い歴史の中で築き上げられた生物多様性を保全し豊かな生態系を守る事で高水準な環境の中に生きようとする気持ち、或いはもっと直感的な愛かも知れない。

ペットの輸入大国として外国産生物の飼育が認められている時点で、逃がす逃げ出すというリスクを国は容認しているという事だろう。しかしいざ帰化生物が生まれ外来種問題が挙がればそれを騒ぎ立てる。

外来種問題を抜本的に解消し在来種を保全するのであれば、外国産生物の飼育を禁じ輸入をストップする他ないのではないだろうか?

鳥類を例に取れば、現在国産の鳥類は鳥獣保護法に則って狩猟や捕獲の制限といった形で保護されている訳だが、狩猟の制限は設けたまま飼育に関しては可能という形に法改正して国産鳥類のみが飼育可能な環境を作るのはどうだろうか?
この場合、密猟が懸念される訳だが狩猟の制限がある以上、だだ漏れに外国産生物を大量輸入している現状よりは遥かに鳥獣保護に繋がるのではないかと思う。

いずれにせよ今の私達に出来る事は徹底した飼育管理に他ならない。