1975年発売のZumaに収録されたNeil Youngの曲で「Cortez the Killer」をGrace Potterがカバ-したライプがyoutubeにあり、イントロで完全参り、歌詞を読んでこの哀愁がどこにあるかを知って胸を打たれました。とにかくイントロのトランペットが反則的に素晴らしくてJoe Satrianiのギタ-・サウンドの良さに加えてGrace Potterの歌声の素晴らしに、これ以上にないライブを感じました。

 Neil Youngは知らぬ世代ではないもののフォーク・ロック、カントリ-・ロックと称された曲を聴くにはまだ若く、後年、数曲に触れるだけでした。この曲はEm7、D、Am7のスリーコ-ドの単純な繰り返しにも拘わらず、深く深く落ち込む哀愁に引きずり込まれます。

 

 この曲はいわくつきでスペインでは放送禁止となった曲でCortez the Killerはスペインの英雄であるコルテスがスペインからアメリカ大陸で行った征服による非道を「殺戮者」との名の元に歌い上げています。

コルテスの功罪は外国人である自身から見ればアステカ帝国を完膚なきまでに亡ぼした虐殺者でしかありません。哀れなのは亡ぼされたアステカ人が彼の風貌が信仰していた神そのものであると勘違いした事で敢えて言うなら神と悪魔を取り違えた悲運が巻き起こした惨劇と言えます。

 現代人の価値観からすれば一国を亡ぼし文化も破壊尽くした彼を歴史的な英雄と称えるスペイン人の心情は理解し難いものがあります。彼のしたことは現代の価値観とは異なるとはいえナチの犯した虐殺をも上回るものがあり、信じがたいほどの凄惨なもので二度と取り返しの付かぬ事をしています。

 但し、その責任が現代のスペイン人にあるかと問われれば過ぎ去しり歴史の汚点以上のものはありません。責めに帰するは時代であろうと思います。単純に善悪を論ずるには重すぎる歴史をNeil Youngは抽象的な歌詞と単純なスリコ-ドの曲にまとめ上げ解釈を委ねてくれたのであれば、彼らのカバ-は怒りに勝る悲しみの深さを語り掛けるようで心に突き刺さるばかりです。

 名曲や名演奏と呼ぶにはテーマが難しすぎますが、後世に残すべき楽曲で時代毎に新たなアレンジで解釈を加えるに相当する素晴らしい曲だと思います。誤解されては嫌ですがオリジナルも素晴らしい曲となっています。

 

〇Grace Potter and Joe Satriani cover Cortez the Killer

 

 蛇足なのですがGrace Potterが演奏の最後で舌を出して微笑むシーンがありますが、彼女はオリジナルの歌詞を相当、飛ばしてしまっています。歌詞を読みながら聴いていて気づきましたが演奏は何もなかったようにゆったりと哀愁を深めつつ進み、その意味でも素晴らしい演奏でした。

 このライブの音源はここにしかないのが残念で既に十余年前の演奏だけにこれから発売されることがないのが重ね重ね残念でなりません。ちなみにトランペットはWillie Waldmanという方で日本では余り知られていません。Grace Potterも米国では塔の上のラプンツェルのオリジナル曲を歌っていますが日本では非常に知名度が低いです。自身は全てのアルバムを所有する程に大好きな歌手です(^^♪