お久しぶりです。とりにとろです。





先の記事でインフルにかかった事を報告してから三週間。


当然一週間もかからずに完治していたので、もっと前に生存報告する事は出来たのですが…





悲しいかな、技術的な紹介ブログの体を取っているが故に生存報告だけの記事をアップするのは気が引けてしまい、何かしらネタが出来たらついでに報告しようと思っていたらダラダラと遅くなり…




気づけば3月も半ばでした
Σ(・ω・;|||



コメント、いいね等でお見舞いに来て下さった方々、遅くなってしまいすみません


熱で朦朧としながらも記事に反応して頂けるのはとても嬉しかったです!









さて、生存報告はここでとりあえずおしまいにして、最近手を付けていた修理を一つ紹介。





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WAさんのショーティ40です!




今回はブログを見たという方からインターネット越しに直接依頼を頂き、修理させて頂いたものです。





WA製だけあって非常にスライド表面などの見た目や手触りが良く、作動性もバッチリです。


HWのスライドとマグナブローバックの組み合わせで反動も元気良くガンガンあります。






で、そんなめちゃくちゃよく動く銃の何を治すのかというと、

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暗くてわかりにくいですが…


スライドストップノッチがほぼ完全に欠けてしまっているのがお分かりでしょうか?



この銃の持病として、樹脂製スライドが直接スライドストップにかかる構造であるが故にスライドストップを使っていると、ガンガンノッチが削れてしまうのです。





今回の依頼はこのノッチをなんとかする事。



以前の記事でハイキャパのノッチ欠けを修理したことがありましたが、アレよりはもう少しちゃんと表面が目立たない様にすることも目標です。





さて、では工作スタート





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まずは分解。


右セフティレバーは真ん中の穴に棒を差し込んで押し込みながら、レバーを前に引き抜くと外れます。


左はそのまま引っこ抜くだけ。


小さな鉄球がスプリングで飛び出すのかも知れないので、慎重に。






さて、ノッチを内側からのぞいて見ると…

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うーん、薄い!


スライドの肉厚が薄すぎて、スライド内部に金属インサートを完全に埋め込むのは難しい、というか強度が足りなそうです。



インサートの側面をレール側に露出させる事で対処しましょう。





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というわけでインサートどーん!




金色の真鍮製インサートが下にも飛び出ていますが、これは後からヤスリで削って調整します。





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はい。これでとりあえずスライドストップはかかるようになります。




ここからがとりにとろにとっては難題。


いかにして目立たないようにノッチ部を埋めるか。





強度も必要な場所なので、ここは皆様ご存知プラリペアに頼りましょう。



硬いアクリル樹脂を形成してくれるので、衝撃で砕け散ったり削れる可能性は低いはずです。





ただ、HW樹脂との接合が弱いため、衝撃で剥がれ落ちる危険性はありますが…


そこはインサートの隙間に接着剤を流し込んで、極力がっちり固定する事でアクリル樹脂に衝撃がなるべく伝わらないようにします。



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プラリペアを盛って


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整形。




紙やすりやダイヤモンド棒ヤスリで慎重に削ります。




納得がいく形になったら、黒インクを塗って、クリアの保護膜も塗り、なるべく周りに合わせた色にします。




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うーん…写真でも分かるくらい表面が荒れた感じになってしまっていますが…



とりあえず今のとりにとろの技術ではこれが限界です。

(//・_・//)


引き続き精進目指して頑張ることにして、今回はこれで良しとします。







完成後、空撃ちでスライドストップをかけたり外したりして、樹脂がめくれたりインサートが外れたりしないか試験します。



いくつか不安な点に気付きはしましたが、とりあえず大丈夫そうだったのでここで修理は完了です。









さて、冒頭に述べた通り、このショーティ40は非常に使いやすく、見た目も良い優れた銃なのですが、スライドストップノッチが削れる理由は複数考えられます。




まず、既に述べた通り、金属レールがスライドストップにかかる構造では無く、プラスチック製のスライドが直接ストップにかかる構造である為、どんどん削れてしまうという問題。


これは今回の修理により、とりあえずの解決はしているはずです。






次に、ヘビーウェイト樹脂をスライドに使用している事で通常のABS樹脂スライドに比べて剛性が低下している問題。

HW樹脂というのはABS樹脂に金属粉を混ぜて作る樹脂ですので、ABS100%の樹脂に比べて脆くなります。



その為、引っ掻く様な摩耗の際には砂岩の様にボロボロと削れてしまい、通常のスライドに比べて遥かに欠け易くなっていた様です。


今回の修理では、金属インサートを覆うプラスチックには剛性の高いアクリル樹脂を使っている為、アクリル部分が削れる心配は無いのですが、アクリルとHW樹脂の繋ぎ目の部分で欠けが発生し、アクリル部分が剥がれ落ちる破損が懸念されます。






また、インサートを入れる際に気付いた事ですが、スライドが他のガバメント系の銃に比べて、薄めである様に感じました。




今回金属インサートとして0.5mm厚の真鍮板を加工して組み込んでいますが、それほど厚く無いインサートであるにもかかわらず、スライド内部に完全に埋め込む場所的余裕がなく、インサートの一部がレール部分に露出した構造となってしまいました。




ひょっとすると他の銃に比べてスライドが薄く、更にスライドストップノッチが欠け易くなる原因となっているかも知れません。






最後の問題点として、ショーティ40のリコイルスプリングの構造が挙げられます。


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分解すると分かりますが、ショーティ40はリコイルスプリングが二つ連結した様な構造になっており、柔らかめの長いスプリングが通常のスライドリターンを行い、もう一つの硬めの短いスプリングがスライドが後退し切った時の衝撃を受け止める様に出来ている様です。



他の多くの銃では一度後退し切って停止したスライドが、柔らかいリコイルスプリングによりゆっくりと加速しながら戻り、遅めの速度でスライドストップにぶつかるのですが、ショーティ40では硬めのスプリングが用意されている事により、スライドリターン時の加速度が他の銃よりも上がってしまい、結果としてスライドストップ時の衝撃も増加してしまっているようです。




この問題はスライドストップノッチの欠けにかなり影響しているのでは無いかと疑っており、似た構造を持つ他の銃で後日実験してみようと思っています。







また、依頼主様にそれらの考察をお伝えしたところ、更に一つ有力な考察を教えて頂きました。



このショーティ40、スライドストップをかけると半掛けになってしまい、ノッチの下半分だけに強い力がかかるために、ノッチを滑り削ってしまうようです。




修理後にスライドストップが半掛けになっていたのには気付いていたのですが、てっきりノッチの角度が悪いせいで半掛けになっているのだと思っていました。
しかし、実際にはスライドが持ち上がってしまって半掛けになっていたようです。



元々スライドの遊びが大きめに設定されている上に、ショーティ40はロア側のスライドレールが非常に短いため、特にスライドの上下のブレが大きい構造となってしまっているようです。





スライドのガタがノッチの削れ易さに影響するというのは目から鱗でした。






ショーティ40は既に絶版のレア品である為、持っている方はそう多くは無いとは思いますが、同様に金属インサートの入っていない古いWAの銃は、まだ市場に沢山あると思いますので、入手した方は早めに対策を打つことをお勧めします。




削れ始める前にインサートを入れてしまえば表面処理がノッチ周りだけ変わってしまったりする事は無いので、削れる前の対策をお勧めします。








さて、今回は以上です。



再度になりますが、生存報告が遅れてしまってすみません。
m(_ _ )m


もう一つ二つネタが溜まったので、次回更新はそれほどお待たせしないと思います。






また、今回依頼して下さったm様!


拙い修理技術である上、色々ととりにとろに都合の良い条件にも関わらず快く愛銃をお貸しいただき、有り難う御座いました。


なかなか見れない銃であったこともあって、非常に面白い修理でした。







それでは、今回はここいらでお暇させて頂きます。



それでは、また〜

(*^ー^)ノ









追記

cncフライスの座標設定を間違えて、
作りかけのパーツをダメにした上に、
予備のないエンドミルを折ってしまい、
悲しみの沼に沈むとりにとろ