天使がくれた感動(3) | とり村便り

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埼玉県新座市にある「とり村」の、コンパニオンバードと長く、楽しく暮らすためのお手伝い情報や
おススメ商品・素敵な鳥さんグッズの情報バードラン・イベント情報などの発信ブログです。

こんばんは!! 鳥爺です。

はじめに以下の文章は ペットバードレポート誌に掲載された
記事を著者の許可を得て再投稿したものです。
2000年の記事なので、内容が現状に合わない箇所もあるかも
しれませんが、何とぞご了承願います。

Touched by an Angel
(天使がくれた感動)

Sam Foster(サム・フォスター)

$とり村便り
(写真はサクラ(中央)、トラ(右):NPO法人TSUBASA)

===

家に到着し、彼女を出してみるとシラミだらけになっているのが
解りました。この不快な邪魔者を払い、彼女のくちばし、指先、
目、鼻などをチェックしたのち、検疫用の仮ケージに入れました。


彼女はとても用心深く、私たちの動きをひとつひとつ観察し、エ
サや水を与えるときにはシュッシュッと威嚇しました。その夜は
早めにケージにカバーをしました。彼女は疲れきっていて、この
段階では何よりも眠りが必要だったからです。


翌朝になっても、あまり食べてくれなかったため、かかりつけの
獣医に出来るだけ早く予約を入れることにしました。

その日は何度もケージの扉をあけて、優しく声をかけケージから
出てくるように促しました。彼女は出てきませんでしたが、威嚇
しなくなり、彼女にとっての新しい環境により興味を示すように
なってきたようでした。

午後になり悲鳴が聞こえたので見てみると、右翼の一部がケージ
の縦格子の間に捉えられていました。彼女はケージの隅から引っ
張ろうとしていましたが、翼の外側先の方にある初列風切のうち
いちばん端の2枚が針金にひっかかっていました。


夫がケージの扉をあけて、ケージの内側から優しく彼女を持ち上
げ、翼を外してあげました。彼女は止まり木に登りましたが、右
の翼が少し下がっていました。言うまでもなく私たちはとても心
配しました。

午後と夕方の間じゅう、ずっと彼女を注意して見守っていました
が、そうしているうちに翼の位置が元に戻ったので安心しました。

夕食後、彼女をケージから出して翼の状態をよく見ることにしま
した。タオルで背中部分と胴を優しく包み抱かせてくれたときは、
嬉しく思いました。彼女をカゴの横の床に降ろすと、両翼をもち
あげ、冠羽をたてて、めいっぱいの金切り声をあげて、ばたばた
と反対側に飛んで鉢植植物の陰に隠れようとしました。


夫がこの若鳥を拾い上げ、私に手渡してくれました。インカを膝
に乗せてみると、彼女の翼の下に何やら暖かいべたべたした物に
触れました。「きゃあ、出血してるわ!」夫は私がそう叫びだし
たと言っています。

私がただ覚えているのは、それから数時間というものは悪夢のよ
うだったことです。私たちは翼を持ち上げて出血箇所を確認しま
した。翼と身体の境目のところにできた穴から血が吹き出して、
骨が身体本体からとびだしていました。

夫がタオルをつかんでインカを包み胸に抱きながら、優しく患部
圧迫を始めました。私はいそいで電話に走り主治医に電話したと
ころ、夜の7時半だというのに未だオフィスにいるということで
安堵しました。トリに緊急事態が発生したと告げただけで、すぐ
連れてくるように言われました。


曲がりくねった山道の2車線道路で、普段なら車で30分かかると
ころを、私の運転で20分で到着しました。インカは暗い車内で夫
の膝に静かに乗り、夫は彼女の顔をなでながら良くなるからねと
声をかけていました。

叫び声も、もがくこともなく、まったく動くことはありませんで
した。大きくて暗い二つの瞳が、まるで「なぜ?」と問うかのよ
うに、夫の顔を見つめていました。

獣医は急いで彼女を診察し、ただちに緊急手術をすると告げまし
た。麻酔から覚めるまで待ちたかったのですが、家にさし餌が必
要なヒナ達もいましたし、医者も手術に何時間かかるか解らない
と言っていました。私たちは無言のまま車で家に戻りました。

(つづく)