河村有希絵さんの『思考の質を高める 構造を読み解く力』を読んでみました。
著者は東京大学法学部を出てボストン・コンサルティング・グループで働き、その後MBAを取得した方で、小学校時代に受けた特別な国語の授業が自身の思考の土台になったと振り返っています。
その授業は構造学習という考え方に基づくもので、文章をただ読み流すのではなく、段落ごとの意味のまとまりを捉え、筆者が何を一番伝えたいのかを図に表したり、重要度をてんびんのように比較したりしながら理解していくものだったそうです。
著者はその経験が受験でもコンサルの仕事でも役立ち、大人のビジネスパーソンにも応用できる形で整理してこの本にまとめたというわけです。
読み進めていくと、構造を読み解く力が三つの柱から成り立っていることがわかります。
まず論説文を読んで論理の骨格を見抜くこと。文章全体の主張とそれを支える根拠や説明がどう結びついているかを意識し、チャートや図で整理する習慣を身につけると、複雑な文書やメールの要点が素早くつかめるようになると説かれます。
次に物語や情緒的な文章を通じて人物の心情を読み解くこと。主人公だけでなく脇役の立場にもなって気持ちを想像してみる訓練が、仕事での相手の意図や感情を察する力につながるという指摘は新鮮でした。
そして最後に、読み取ったものを基に自分の思考を組み立て、解釈したりアウトプットしたりすること。
インプットの質が高まれば、報告やプレゼン、会議での発言も自然と筋の通ったものになるという流れです。
この本を通じて特に印象に残ったのは、論理が言語を超えた共通言語だという考え方です。
英語が得意でなくても、構造を押さえれば外資系の環境で仕事ができたという著者の経験談が説得力を持って伝わってきます。
VUCAと呼ばれる不確実な時代だからこそ、相手の話の根拠と主張を正確に捉え、自分の考えもわかりやすく伝える力がますます大事になるというメッセージも、日常の仕事を振り返らせてくれました。
フレームワークを学んでも使いこなせないと感じている人や、説明がうまくいかないと感じている人にとって、日々の読書や文書作成をそのまま思考の訓練に変えていく具体的なヒントが散りばめられているのが嬉しいところです。
全体として、難解な理論に偏らず、小学校の国語の延長線上で大人の思考力を高められるという点が親しみやすく、実践のハードルを下げてくれます。
読み終わったあと、新聞の社説を手に取ったときや会議の議事録をまとめるときに、自然と構造を意識する自分に気づくようになりました。
思考の質を根本から見直したいと思っている人に、静かに背中を押してくれる一冊だと思います。
https://note.com/torimotoakira/n/n43e97d61298d










