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★4位
【Here, There And Everywhere】
<REVOLVER>1966.8/5=2:23=
ポールの書いたバラードの最高傑作であり、史上最高のラブソングである。
何たる美しい、美しい、美しいメロディなのだろう。
今でも良くこの曲を聴くけれど、先にも、後にも、こんなにも美しい曲は聴いたことがない。今の今でもだ。
しかも、ただ美しいだけではない、素晴らしいものがここには多く隠されている。
まず、特筆なのは、こんな美しいメロディのバラードであるにも拘らず、辛口のアレンジをしていることが何より凄い。
BEATLESのそれまでに作ってきた音楽のキャリアの考えるなら、普通ならアコースティックギターにストリングスなどを入れるような楽曲だが、そのどちらも使用していない。しかも、検討すらしている形跡がない。
驚くなかれ、聴いての通り、アコースティックギターではなくエレクトリックギターを弾いているのだ。しかも、アルペジオではなくコードストロークだけである。驚くべきアレンジの判断である。
更には、弦楽奏等を入れる訳でもなく、コーラスハーモニーだけである。
もしアコギで録音すれば、瑞々しい音で、普通に美しいものに仕上がっただろう。しかし、そうしなかった。余りにメロディが美し過ぎるために、アレンジを甘美なものにしてしまうとイージーリスニングのようになってしまいかねない。それでは一時は評価されてもいづれ飽きられてしまう。10年後20年後に聴いても聴くに足るバラードに仕上げたかった。仮にそれを理論的に判断していなくても、感覚的に分かっていたのだ。ここは辛口のアレンジが絶対に必要だと。
同じ理由で、弦楽奏も入れなかったのだ。
しかも、彼等はロックバンドである。弦楽奏が入る“Yesterday”も“Eleanor Rigby”のポールのVoは低域を強めに、敢えて淡々と歌っている。そう辛口なのだ。だから、この曲でもそれは世襲している。いや、それ以上に徹底している。だから、後世に残るような名バラードとなっているのだと思う。
ポール曰く、“ジョンの家のプルーサイドで書いた曲だ。ジョンが起きてくるのを待つ間に殆ど1人で書いてしまった”とある。
無理のない自然な名曲とは、こういう具合に一気に出来てしまうものだろうというエピソードでしょう。
さて、楽曲の方だが、ポールの主旋律以外では、何といってもコーラスワークである。
3声の美しいコーラスだが、かの“Because”や“This Boy”にも引けを取らない程のクオリティである。
Changing my life with the wave of her hand~のところで「F#m」になるところで「E」の7thのテンションの音がグッとくる。
旋律への和声付けの際の転換の妙や独自性は、この曲に非常に感じるのである。
上記でも書いたが、甘さ控えめで歌っているポールのVoは素晴らしい。
この、やや囁くようなVoは、マリアンヌ・フェイスフルから影響を受けたとポールは語っている。
(曲の影響は、ザ・ビーチ・ボーイズによる “God Only Knows”とポールは言っているが類似性はほとんどない)
ポールのダブルトラックでユニゾンで歌っている。
演奏の方は、ギターは3本。ジョンのコードカッティング。ジョージのオブリガード的に入るフレーズ。あとは、エンディングの下降するフレーズ。
リンゴのタムとバスドラの抑えたプレイがとても良い。
そして、最後に出てくる全員で鳴らすフィンガースナップが曲のラストの雰囲気を作っていて大好きなのである。2拍4拍で入るのだが、何故か最初だけ4拍目に音がないのが昔から不思議です(^^;。
そして、何といってもコード進行です。
この曲の旋律とハーモニーの豊かさは、とても技術的で、とてもデリケートな表情を持った調性の変化によるところが大きいと思うのです。
この曲における転調は、ヴァ―ス途中の一時転調とサビの本格転調に共通した「短3度」がポイントになっています。すなわち、「短3度下のEキー」と「短3度上のB♭キー」で、後々、ポップスの世界で多用されていく「短3度転調」です。
そもそも、この曲の主旋律のメロディ構成は、ヴァースとサビと一応は書いたけれど、実はがどちらか分からない不思議さがあり(サビがないという判断も出来る)、冒頭のオープニング部を別としたら、不思議な曲でもあります。
詳しく書くと膨大な文章になるので省略しますが、取りあえずのヴァース部は「一時転調」があります。そして、サビ部は普通に「G」から「Bb」への短3度上の転調になります。
その中にも巧みなコード構成がいくつもあり、「技の宝石箱」とでもいうようなもので、ポール・マッカートニーという人の「凄さ」をまざまざと見せつけられます。
そのパイオニア的存在であるポールのこの転調の使い方は、実に巧みにそのキー内の構成コードを自在に扱うテクニカルなものと言えるのです。
ポールの音楽作品の分析をするということは、良質な推理小説やパズルを解いていくような、一生付き詰めたい奥深さがあって凄いのです。
歌詞の内容は、タイトルどおり「愛する人を “ここでも、そこでも、どこでも" 必要とする」というもので、ポールが生んだ究極のラヴバラードの1つと言えます。
観念的で奥深い歌詞は、この頃から現れ始める東洋思想の影響も感じさせます。
ちなみに、この曲は発表されてから半世紀以上経った今でも、アメリカの結婚式で流されることが多いようです。それほど普遍的で永遠の愛を歌っているからでしょう。
ジョンも、この曲はお気に入りで、亡くなる前の1980年のインタビューでも“これは彼の傑作だね。BEATLESの中でも特に気に入っている曲の1つだよ”とまで言っている。
それもそのはず、ジョンは晩年の1980年に発表した名曲“Woman”は、この曲が下敷きになっているのだ。コード進行も似ているのです。
永遠に歌い継がれて欲しい曲…。
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