Rは腕組みをしながらどこを見るでもなく
遠くの方を望む様にしながら続けた。
「その朱美さんがどういう気持ちで
亡くならはったんか?また
なんで何も言わんとあの世へ行かはったんか?
ワシにはよう分かりまへん。
せやけど、うちの妹と寺田はん、
他の劇団員さん達の気持ちは
よう分かります。
あの二人はあんさんと同じように
辛い気持ちをずーっと抱えてるハズやし、
他のメンバーはそれを分かって
あえて腫もんを触るようにあんさんと接するしかない。」
そして数分間、二人の間に沈黙が生まれた。
「
分かっていてもココがよ~コッココがよぉ」
哲男は右の拳で自分の胸を叩きながら俯いた。
「せや、お節介な仕事や。
って言うてもワシは特別や。
ワシは腹ん中や頭ん中でゴチャゴチャ
考えたり思ったりしてるクセに
涼しい顔してシラ~っとしてるヤツが
いっちゃん好かんねん。
そういうヤツには本音吐き出させて
少しでも腹ん中、頭ん中軽くなるように
したんねん。
ホンマは鍼する前にそうしたかったんやが・・・。
痛い痛いうるさいから順番逆にしたったわ。」
「ふっ。ホンマ、鬱陶しいオッサンヤデ。」
哲男は無表情な顔のまま下手クソな大阪弁で言った。
「気色悪い大阪弁使わんとってくれるかぁ~。」
Rは少し嬉しそうに毒づいた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「みんな!ここに集まってくれるか?」
哲男の呼びかけに応じて
劇団員たちが哲男を囲む様に集まった。
「え~っと、今日は新生かぎろひ座の
初舞台です。
今まで迷惑をかけた分
最終日まで
目一杯ぶっ飛ばして行きますんで
しっかり付いて来て下さい。
よろしくお願いします!」
澄み渡った空のような
表情の哲男の言葉に
「はい!!」
という天にも届きそうな声で
一同は答えた。
(完)
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