「父」です。

妻の実家に行った際、義父がこんなことをぼやいていました。
「まったくここ(実家のある行政)は儲け方がなっとらん」と。
確かに行政は儲け方が下手です。
というか、儲けようという考え方すらないのかもしれません。

税金が主な収入源である行政は、それ以上に住民からお金をもらうことに抵抗があるんでしょうか。
「税金を納める」というよりも「税金を取られる」と表現する人の方が多い気がします。
だからこそ、いかに料金が必要以上に発生しないように気を使っているのかもしれません。

しかしそれは過去の考え方だと思います。
行政自らが稼ぎ、それを住民に還元すればいいのです。

義父の住む行政は、住民が率先して花を植えるなどして観光場所を増やしています。
それらが話題になり、その場所は県内外から観光客が訪れるようになりました。
しかし、訪れるだけです。
その先が考えられていないんです。

決して交通の便がいいとは言えない場所にあるので、大概の人たちは自家用車か観光バスでやってきます。
ですが、それらを駐車できるスペースが全くないんです。
花を植え始めた住民たちは、ここまで人を惹きつける場所になるとは想像していなかったはずです。
だから、人が集まった後のことを考えてはいません。
それはしょうがないことです。

しかし行政はその場所をPRしています。
観光サイトやパンフレットでも紹介しています。
だったら、行政も手を出す必要があるのではないでしょうか。
辺鄙な場所にあるのでシャトルバスを運行し、その発着場ではお土産の販売や食事のできる場所を用意し、お金を落としてもらうようにしなければいけません。
それが、住民の努力に乗っかった行政がやるべきことです。

その観光地化した場所を作ったのは、高齢者有志によるボランティアグループでした。
グループに問題がなかったとはいえません。
その場所で商売ができる権利を、グループのある地区住民だけに許可したんです。
もともと過疎化が進んでいるような地域です。
結果、魅力も何もない売店が並びました。
花を見に来た人が求めるものを理解していないんです。
普段、商売をしていない住民にノウハウがないのも事実です。
そこは行政が手を貸すべきだと思います。
いくら商売が下手だったとしてもです。

ノウハウのある人を確保すればいいんです。

 

……そこまで考えたところで視線を義父に戻すと、義父の話題は中華料理に移っていました。

どうやら私は知らぬ間に相槌を打っていたようです。

私が新たなスキルを手に入れた瞬間でした。