「父」です。
義母の読む、志賀直哉の『城崎にて』を拝聴しました。
朗読の会に所属している義母は7月に発表会があるようで、毎日練習をしているようです。
普段は義父が練習相手を務めているようですが、義母曰く「うん、いいんじゃない」としか言わないそうです。
そこで私に白羽の矢が立ったのです。
朗読が始まりました。
何度も読んでいることがうかがえる流ちょうな読みだったので、目をつぶり聞いていました。
すると瞼の裏に情景が浮かんでくるようです。
雨に流される蜂の死骸……
いもりだかやもり……
生きたまま串を刺された鼠を川に投げ入れ、それに石を投げつけ喜ぶ人々……
人間の残酷さやおぞましささえ感じます。
義母は最後の一行を読み終え、そっと本を閉じました。
感想を求められたので一言。
「うん、いいんじゃないですか」
いや、本当によかったんです。
作品の良さは分かりませんでしたけど。
前も書きましたが、私と次女は文字を映像化してから頭に入れるタイプの人間です。
今回の朗読を聞いて思ったんですが、他人の読みでも映像化していることが分かりました。
「城崎にて」は映像化タイプの人間が読むには向いていない作品だと感じました。