月や星も厚い雲に覆われた漆黒の闇の中。
私は駐車場に停めた愛車に乗り込みエンジンをスタートさせた。
ヘッドライトの光に照らされて浮かび上がったのは一本のバナナ。
なぜこんな所に。
その時、私の頭の中に一節の詩が浮かんだ。
バナナが いっぽん ありました
くらい どこかの ちゅうしゃじょう♪
きっと、どこかの青い南の空の下で、二人の子どもが取りやっこしたバナナが飛んできたのだろう。
翌朝、気になった私はもう一度駐車場を確認した。
するとバナナの姿はどこにもなかった。
きっと、おヒゲを生やした船長さんが食べてしまったのだろう。
それがある夏の夜、私が遭遇した奇妙な話の顛末である。