神は乗り越えられる試練しか与えない。



そうです。
乗り越えたんです。
無事に鶴の湯温泉についたんです。


あれはとてもじゃないですが
歩ける距離じゃなかったですな。


あれは完全に熊の一匹や二匹乗り越えないと
辿り着けない距離でしたよ。


ですが奇跡のヒッチハイク成功により
辿り着けたわけです。



本気でいい御夫婦でした。
帰りの事まで心配してくださって。


なのに御礼をするものが何も無くて、
お土産用に買った東北限定どん兵衛芋煮味を差し出したものの…
本気で断られてしまった私。。


お名前も連絡先も伺えなかった…。


探偵ナイトスクープなら見つけてくれるだろうか…。

気分だけはサツキだったが

やはりそこまでの勇気はなかった・・・。


手は広げた。


しかし腰が引けていた。


道を完全に塞ぐことはできず

車は通過していった。。。



あの時の景色は忘れもしない。

そう、全てがスローモーションだった。


優しげなご夫婦の戸惑いの表情も明確に見て取れた。





あぁ、私が中途半端な手を上げたせいで

あのご夫婦の楽しい旅に水を注してしまったのだ。



おう 神よ、私を乗せなかったことで彼らを責めないでください。


こんな森の中をゴロゴロ引いて彷徨っている

不審人物の私が悪いのです。










おや~っ??!




車が止まった。



5m程目の前を通過したが止まってくれたのだ!!!



私はチャンスの神様の前髪を何とか掴んでいたようだ。

そう、あれはスローモーションなんかではなく


ただの減速!!!





おうっ!神よ!!仏よ!!亡くなったじいちゃん、ばぁちゃんよ!!


センキュー!!!




「どうしたんだい??」

優しく紳士は尋ねてくださいました。



私は手短に


①鶴の湯に行きたいこと

②バスの降り場を間違えたこと


を、

関西弁をそこはかとなくおり混ぜ

土地勘が無いことをアピールしつつも

謙虚さと誠意を決して忘れずに熱く伝えた。




やはり思いは伝わるものである。


言霊(ことだま)!!




私は無事、ヒッチハイクに成功し鶴の湯に辿り着くことができた。




私には旅における信条がある。


「旅の恥は搔き捨て」


そう、旅とは異世界。


人とも物とも場所とも、出会いは一期一会。

その出会いのためなら恥など捨て去ればいいのだ!!



進むしかないと心に決め

山中をゴロゴロ(キャスター付きミニスーツケースの事)を引きつつ歩くという

場違いな私。


その時!!!





観光客の車が背後に近づいてきたのである!!


この道に来たと言うことは

目指す道は同じなはず!!


同志!!!




私は振り向いた刹那に目敏く確認を怠らなかった


運転手はダンディーなおじ様

助手席には優しそうなおば様


結婚前の乙女がヒッチハイクをするには最も安全な車!!!



旅の恥は搔き捨てである!!



「すみません!!!」



となりのトトロのサツキがメイを探す時にトラクターを止めたが如く

私はハイエースの前に手を広げた。