どうしようもないことが起きて。



神様なんていないんだっていう絶望。



それでも自分以外の人の毎日が、

いつもと同じように過ぎていってる。




私だけが時間の流れに乗れない感覚。




時間は私の心と一緒に止まってくれない。




いつもと同じように朝日がのぼる。




私のお腹は、

どんな悲しいことがあっても空く。




身体は今日も私を生かそうとしてるんだなぁ、

なんて思ったり。




悲しいことがあったのに、

泣いても泣いても涙は枯れない。




心は止まったままなのに、

時間はどんどん流れていく。




アルニカの説明文を読んで、

初めは意味がよく分からなかったけど、

今ならこういうことなのかな?

と思えるようになった。



私は、アルニカの花を見て、

アルニカと一緒に風に吹かれてみたい、と思った。




大きなその傷を、

受け入れる、とか、そういうのとはちょっと違って。



ただただ、その傷と共に、

今吹いている風を感じてみたい。



流れている時間を眺めてみたい。



アルニカを見てそんな風に思った。




日常を送るのに精一杯で、

ゆっくり、その傷と一緒にはいられなかった。



ううん。

傷と一緒にいない時間が、

あの時は必要だったのだと思う。



痛むなら、無理に触らなくて良い。



今は見たくないのなら、一緒に居たくないのなら、

それも無理しなくて良い。



今すぐではなくて、何年も経った頃かもしれない。


(私は、その傷からもう十何年が経とうとしている。)



アルニカが、

今日も風に吹かれて咲いている。





〝一緒に風に吹かれてみない?〟


そんな風に誘われる日が来たら、

その時は。



しばらく傷と共に過ごせたなら。



よし、そろそろ行こっか、って。


あの時の傷と一緒に歩き出せる気がするんだ。



大丈夫。



歩き出せるよ。